ブックタイトルメカトロニクス11月号2020年

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概要

メカトロニクス11月号2020年

49特別企画MECHATRONICS 2020.11「メカトロニクス」のルーツを探る~「メカトロニクス」という言葉の由来~図1 “Mechatronics Brief History and Applications”について記述した文献し始めていた。 エネルギーを大量に必要とする「重厚長大」産業から「軽薄短小」産業へと舵を切り替えて対応する時代であった。 これは、二度のオイルショックで学んだことであり、これをインパクトに競争力強化を狙う民間設備投資が活発になりつつあった。 こうした市場の動きに対して安川電機の経営陣は、1982 年を初年度とする中期経営計画の中でメカトロ製品を急成長グループとして位置付け、メカトロニクス分野に経営資源を積極的に投入する方向を明示した。 その結果、1984 年度には受注1,114 億円(前年度比 14.4 % 増)、売上高1,124 億円(同18.5 %増)、経常利益43.2億円(同100.3%増)を計上、念願の受注/売上1,000 億円台乗せを達成した。また、メカトロ製品も30 %増を果たし、全売上の34 %を占めるまでになった。2) 「メカトロニクス」という言葉は認知されたが、それでは、辞書ではどのように記載しているかを調べてみた。 1976 年に刊行されたWebster's Third NewInternational Dictionaryには、“Mechatronics”の記載はない。 しかし、1995年に刊行された英和・和英辞典の“THE KODANSHA PAX ENGLISH DICTIONARY(第二版)”には、「Mechatonics:メカトロニクス(機械のコンピュータ制御技術)」と解説し、同年発行の“ 大辞泉”(小学館 約30 万語収録)には、メカトロニクスについて「メカニクス(機械工学)とエレクトロニクス(電子工学)とを結合した技術。機械の駆動・制御にマイクロコンピュターなどの電子技術を利用して自動化・高性能化を実現するもの」と少し詳細に解説している。 また、2006年に刊行された第三版の大辞林(講談社 約24 万語収録)では、「メカニクス(mechanics)とエレクトロニクス(electronics)の合成語で機械工学と電子工学を統合した学問分野。機械の制御などに電子技術を応用し、高性能化・自動化を図る」とほぼ同様に解説している。 2008年に刊行された第六版の広辞苑(岩波書店 約24 万語収録)では、メカトロニクスについて「メカニックスとエレクトロニクスとを合成した和製語。機械工学と電子工学とを統合した学問分野。機械の運転・制御などにコンピューターを導入し、高性能化・自動化・省力化をはかる」と解説している(写真3)。 メカトロニクスを冠する学術論文集も、日本の欧文誌『Journal of Robotics and Mechatronics』が1989 年に、そして海外にも普及していき、国際自動制御連盟(英語版)(IFAC)の『Journalof Mechatronics』が1991 年、アメリカの『Transaction on Mechatronics』が1996 年にそれぞれ、創刊されている。 書籍では『Mechatronics: Fundamentalsand Applications』が2015年、『Robotics andMechatronics for Agriculture』が2017年に、それぞれ刊行されている(写真4)。 日本から発信した合成語が、海外の論文集や書籍の題名に採用されるまでになった。2017年にMansoura University(エジプト)が“MechatronicsBrief History and Applications”について記述した文献には、森 徹郎の名前が記載されて、1969年に「メカトロニクス」という造語を作ったことが解説されている(図1)。 日本から発信して世界から認知された用語となった。喜ばしいことである。これには、本誌を含めた各社関連媒体も大きく貢献していることを付け加えておきたい。 そして、「メカトロニクス」の読者も本誌の題名の由来をあらためて知って頂ければ幸いである。<参考資料>1.村田 晋、  “ 安川電機歴史物語 第一章 創業の精神”  Yasukawa News No.272 p8(2005)2.村田 晋、“ 安川電機歴史物語 第六章 メカトロニクスへの道”Yasukawa News No.277 p8(2006)写真4 メカトロニクスの名称を使った論文誌・解説書の一例写真3 日本の辞典に掲載された「メカトロニクス」写真2 株式会社安川電機