ブックタイトルメカトロニクス10月号2020年

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概要

メカトロニクス10月号2020年

46 MECHATRONICS 2020.10 素材の塑性または流動性の性質を利用し成形加工して製品を得るための、主として金属素材を用いて作った工具を「金型」という。 「金型」は、“ 秘密のツール”と言われてきた。それは、世の中に出る大量製品の加工には、なくてはならない工具であり、新製品を企画するときには、新製品開発の設計と製造は極力秘密裏に行われる。 また、「短納期で製造できる」、「均一な精度で製造しやすい」、「製造のコストを削減できる」、「自動化では難しい加工もあり、熟練した技術が必要とされる」という4つのメリットもあるため、現代の製造技術のキーテクノロジーとなった。 例えば、自動車のボディーは、金属板をプレス金型によって成形加工することで出来る(写真1)。また、パソコンやスマホなどに使用される筐体は、プラスチック材料を金型によって射出成形することで出来上がる(写真2)。 このように金属、プラスチック、ゴム、ガラス等の素材を、それぞれ目的とする製品の成形加工用に使用されるものが「金型」で、そして「金型」の品質如何が最終製品の良否を決定付けるものとなるため、「金型」は製品の産みの親などといわれ、極めて重要なツールとなる。 「金型」は、産業界の中でも初期の頃は余り知られてなく、驚いたことに通産省の担当官は「金型」を「キンケイ」と呼び質問したという。金型産業では、昔から日本では「縁の下の力持ち」、欧米では 「Unsung Singer」(歌わざる歌手)あるいは「Actor behind the Scene」(舞台に立たない役者)として自らの仕事に誇りをもちながらも、なかば自嘲的に自らの事業を倭小化して表現していた。 その反面、業界の組織団体としては、例えば米国の工業会は、「金型」は「Backbone Industry」(背骨の産業)、ドイツでは「Koenigs Industrie」(皇帝の産業)と自ら誇り、金型産業の発展なくして国の発展なしと謳いあげている国も存在する。1) 「金型」のビジネスは、顧客の固有のニーズによって個別生産されるもので、その設計、製造には金型メーカーでの多くの工夫が実施され、一種の貴重なノウハウが存在する。さらに近年は、CAD/CAM/CAE の発展によって「金型」は“ 技能集約型”から益々、“ 知識集約型” の産業へと変身している。 1956年、「機械工業振興臨時措置法(略称 機振法)」が5年間の時限立法で成立した。そして1958年、戦後の経済政策として機械工業が重点産業として取り上げられ、工作機械、軸受、工具などの基盤産業の育成が機械工業全体の発展の“要”であるとの認識から、これらの基盤産業を特定機械として政策融資その他の助成措置を講ずることになった。 「金型」もその際、重点産業として認定を受けた。実は、自動車、電気機器など各種の機械工業の発展を阻害している要因を調査した結果、「金型」の質・量の両面の強化が必要との需要業界から強く要請されたことが「金型」を重要基盤産業として認定する理由になったという。 「金型」は受注産業であるために自動車や家電メーカーのモデルチェンジがあるかどうかによって、受注が大きく左右される業種である。つまり自動車、携帯電話、パソコン、タブレット端末などのモデルチェンジに支えられてきた。顧客先での新製品開発がいかに多いかによって直接金型業界の景気に影響することになる。 「金型」は不況に強い業種であるとも一時いわれた。実は不況によって自動車や電機メーカーがモデルチェンジをして需要喚起をするため、モデルチェンジによる新たな「金型」の需要が出て金型業界は潤う構図があったとも言われる。 「金型」から生まれる新製品には、季節性やモデルチェンジのタイミングがあり、1 年間コンスタントに仕事を得るということがもともと難しい業界でもある。1. 日本金型工業会の設立と産業規模 機械産業の発展とともに、1958 年11月25日に日本金型工業会が設立された。この当時、金型総生産高は100 億円程度の規模であった。日本の金型関連の小史をみてみると表1のようになる。 「金型」は技術的な難しさから一握りの熟練工が全ての工程担当する場合も多く、全事業所の72%が9 人以下、29 人以下では92%にもなるいわゆる、小規模企業で構成される業界である(図1)。 日本全国の金型事業所は、図2に示すように1990 年前後がピークで約13,000 事業所数が第4回 金型産業の市場動向市場の生産統計とそのヒストリーちょっと気になる連 載写真1 自動車用大型内装部品金型(東芝ケミカル) 写真2 テレビキャビネット用金型(東芝ケミカル)表1 金型関連の小史年 度内 容1871年金・銀貨幣の製造に初めて「金型」が使用される1956年4月金型懇話会を結成6月「機械工業振興臨時措置法(略称 機振法)」が5年間の時限立法で成立1957年11月日本金型工業会(JDMIA=Japan Die & Mold Industry Association)が設立される1958年戦後の経済政策として、機械工業が重点産業として取り上げられる12月金型の総生産高は100億円程度1961年「機械工業振興臨時措置法」が延長される1965年4月金型が中小企業近代化促進法の指定業種となる1966年「機械工業振興臨時措置法」が延長される1971年3月「特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法」成立1974年International Special Tooling Association(ISTA)が設立されるその後、機械加工業も加え、ISTMA=International Special Tooling & Machining Association(国際金型協会)となる1978年7月「特定機械情報産業振興臨時措置法」成立1981年3月精密金型合理化促進懇談会を結成1992年9月アジア金型工業連合会(FADMA=Federation of Asian Die & Mould Associations)設立1994年7月日本金型工業会から、社団法人 日本金型工業会へ改組1995年9月中小企業近代化促進法に基づく指定業種・特定業種の政令指定を受ける