ブックタイトルメカトロニクス9月2020年

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概要

メカトロニクス9月2020年

44 MECHATRONICS 2020.9第27回 <グリーン・エレクトロニクスの進展> 電子機器に使用される高分子材料は、安全対策として難燃剤で難燃化する手法を採用したことを前回、紹介した。 当時の主力話題商品がカラーテレビであったために安全規格の変更もあって、使用される材料は次第に難燃化率が高まっていった。 安全対策としては良かったものの、暫くすると難燃剤の中には種類によっては人体に対して蓄積性があり、有害物質として判定される事態になり、結果的には、これが問題となり禁止対象物質となった。 今回は、難燃剤の一部が有害物質として注目されるようになって以来、環境規制に加えられて電子機器の「グリーン・エレクトロニクス」化が進展した背景などを含めて紹介する。1. 環境規制の進展 環境規制の状況について、時代とともに変わり、現在は、Environemt 4.0で推移している(表1)。電子機器に対する環境規制はEnvionment 3.0以降から始まった。その主な点を紹介する。1~2)1-1. 化学物質排出管理システム 1984 年インドのボパールで発生したユニオンカーバイト農薬工場の爆発事故では、イソシアン酸メチルが漏れたことにより約8,000 人の死者が出て、約15 万人が後遺症に苦しむような事故であった。 翌年の1985年には、ユニオンカーバイト社のウエストバージニア工場で漏洩事故を起こし、有害物質排出目録(TRI=Transfer Release Inventory)制度の発足するきっかけとなり、化学事故を契機に化学物質の管理が重要視された。 1986年に米国でTRI制度ができ、これが世界最初のPRTR(Pollutant Release and TransferRegister)制度であった。 1987年に米国で「緊急対処計画及び地域住民の知る権利法(EPCRA=Emergency Planningand Community Right-to-Know Act)」が成立した。 表2に示すように諸外国でも同様な制度の導入が、その後、進んでおり、日本では1999 年、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(特定化学物質排出量管理促進法: PRTRまたは単に化管法)により制度化された。 PRTR 法は有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光運び出されたかというデータを把握し、集計して公表する仕組みである。 2001 年4月に施行され従業員数は21人以上で、対象物質の年間の取扱量が1トン以上に義務付けられ、行政機関に年に1回届け出ることが必要となった。 2008 年11月に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令」が公布され、PRTRの対象は354 物質から462 物質になった(図1)。 事業者が対象化学物質の譲渡等を行う際し、相手方に対して当該化学物質の性状及び取り扱いに関する情報を提供する必要があり、化管法で安全性データシート(SDS)の交付が義務付けられており、その対象物質は、2008年に改正され、435 物質から562 物質になった。 このように企業の製造段階や事業者外に運び出される有害物質を管理する時代となり、「現場環境」の時代となった。1-2. Environment 3.0(1991年~2015年)1) 有害物質として目を向けられたのは、経済開発機構(OECD)が決めたリスク・リダクションのリストに5 物質(「鉛」、「カドミウム」、「水銀」、「特定臭素系難燃剤 [ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、テトラブロモビスフェノール(TBBA)]」、「塩化メチレン」)が1991 年にリストされたことから始まった。 また、資源消費型社会であったため1990 年代になると年々、増加する廃棄物の処理問題が浮上してきた。 日本では、一般廃棄物が年間約4000万トン、産業廃棄物が約4億トン発生している状況でもあった。大量廃棄社会は、もはや限界に近づいてきた。 欧州では、急増する電気・電子機器の廃棄問題が欧州連合で議論されるまでになった。図1 化管法の対象となる物質Version 主な環境対応の内容Environment 1.0( ~1970年) 鉱害( 鉱毒)、公害( 大気汚染、水質汚染、土壌汚染、騒音、振動)、環境事故対策Environment 2.0(1971~1990年) オゾン層破壊物質低減、化学物質排出管理システムの確立Environment 3.0(1991~2015年)化学物質排出管理システムの運用、ダイオキシン低減、リサイクル、有害物質の使用制限、含有化学物質管理Environment 4.0(2016 年~) 化学物質の影響の最小化、農薬の使用低減、持続可能な開発目標、温暖化対策、低炭素社会の構築国制度名英語名日本語名オランダEIS    Emission Inventory System    排出目録制度英国CRI    Chemical Release Inventory    化学物質排出目録EU PER    Polluting Emission Resister    環境汚染物質排出目録米国TRI    Transfer Release Inventory    有害化学物質排出目録カナダNPRI    National Pollutant Release Inventory    全国汚染物質排出目録日本PRTR    Pollutant Release and Transfer Registers    化学物質排出把握管理促進法表1 Environment 4.0への進展表2 各国の化学物質排出管理システム