ブックタイトルメカトロニクス7月号2020年

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概要

メカトロニクス7月号2020年

10 MECHATRONICS 2020.7 御社を設立した経緯や概要などについ てお聞かせください多田 : 私は以前、アメリカのコンピュータ会社にエンジニアとして勤務していた経験があり、今から40年程前にマイコンが世の中に出てきたことで独立を考え、個人でマイコンを使った開発会社を立ち上げようと準備を進めたのが起業の経緯になります。 創業時は、東京都大田区の自宅を事務所兼作業場として使用していました。大田区は町工場が多く存在し、当時は町工場でマイコンを設計できる方があまりいなかったこともあり、今までの知識を活かして町工場を中心に、マイコン設計の請け負いをビジネスとして行っていました。 自宅では、実際にT定規を使って図面を書いたり、はんだゴテで基板に電子部品を実装するなど試作品製作を行い、作業は子供の手の届かない押し入れのスペースを利用していました。そのため、当社の工場は「押し入れ工場」からスタートしたことになっています。 その後、自宅の近所に4畳半のアパートを借りて、そこを次の事務所兼作業場として利用していました。そして、1年ほど経った頃にドラフターを導入し、そこからは仕事もどんどん増えていき、そのおかげで事務所も大森駅近くの冷暖房完備のワンルームマンションに移転しています。 その頃から、ソフトウエアの設計だけでなくハードウエアの設計も行うようになり、専門のエンジニアを1名雇用しています。また、ビジネス拡大を目的に、1984年3月には会社を法人化しています。社名の“アイオイ”は、縁結びや和合、長寿の象徴とされている「相生の松」をイメージして付けています。 その後、同じ大森駅近くで2DK のマンションに移転したのち、1995年11月には品川区南大井のオフィスビルに本社を移転しています。その頃は、従業員も8 名ほどになっており、会社の規模も徐々に大きくなっていきました。現在の所在地である大田区大森北には、2005 年6月に移転しています。 また、当社の大きな転機になったのが、2000 年に東京国際フォーラムで開催された「ベンチャーフェアJAPAN2000」に出展したことです。当社代表取締役多田 潔 氏コア技術を活かした安心で安全なデジタルピッキングシステム~次世代の製造/物流現場に一括したソリューションを提案~の展示ブースでは、私が考案した色々な製品を出品していました。その中で、当社のコアとなる「交流信号で極性のない2本の線を利用して電力とデータを送る技術」を活かした『病院向けの位置認識システム』が、展示会場で出品された製品を評価する審査員の目に留まり、当時の通商産業省とともに展示会の主催者であった当時の工業技術院の院長賞を受賞しています。 これがきっかけで、今までは叶わなかった金融機関からの融資も受けられるようになり、以前から細々と展開していたコア技術を活かしたソリューションビジネスを1つの柱とし、ものづくりへのチャレンジや営業体制の確立などを図っていきました。 そして、国内だけでなく海外にも視野を向けていき、私自身がサンプルをもってまずはアメリカを色々と周り、エンジニアリング会社と総代理店契約を結んでいます。そのエンジニアリング会社とは、現在も取り引きが続いています。 その2年後には、ヨーロッパでの販売を検討し、ヨーロッパには多くの国があるのでアメリカのような総代理店契約ではなく、紹介して頂いたスペインのバスク地方にある物流系のエンジニアリング会社と合弁契約を結んでビジネスを展開しています。 2004年7月には、中国の上海に販売/製造拠点となる100%子会社の愛鴎自動化系統有限公司を設立し、のちに広州に昨年は北京にも拠点を置き、中国でのビジネス強化を図っています。また2014 年7 月には、シンガポールに開発および販売子会社としてDISPLAY IT CARD PTE.LTD.を設立し、南アジアの拠点としてビジネスを展開しており、今年の2 月にはAIOI.SYSTEMSSINGAPORE PTE.LTD.に社名変更しています。 このように、今まで色々と紆余曲折もありましたが、現在は100 名以上の社員を抱える規模まで成長し、売り上げも順調に伸びている状況です。 御社のコア技術についてお聞かせくだ さい多田 : 当社のコアは、「交流信号で極性のない2本の線を利用して電力とデータを送る技術」で、我々は“2 線式”と呼んでいます。この技術は、今から26年ほど前に私が開発し特許を取得していますが、すでにコアの部分は期限が切れており、その後追加で取得した周辺の特許が生きている状況です。 ただ、コアの特許は理論特許を取得しており、この特許で実際に開発した回路をほかの回路とともにチップに入れ、このチップ自体は特許を申請していないため、チップ内の構造はオープンにしていません。このオールインワンチップにしたことが、ある意味当社の強みになっています。 このオールインワンチップが、当社のコア製品となる省配線ネットワークシステム『AI-NET』で、現在は第3世代に進化しており、第1世代からの累計で約500万個の販売実績を上げています。現在は、第4世代の開発に取り組んでいる状況です。 実際、2 本線でネットワークを組む技術は、簡単にネットワークが構築できるので国内でも色々と事例が出ていますが、その中で当社の技術は信頼性が高いと評価されています。特に、ノイズに強いことが特徴になっており、そのためLANケーブルのように1kmほど離れていても、問題なく通信することが可能です。 当社は、この“2線式”を標準化するとともに、世界の規格にも順次対応しています。また、省配線ネットワークシステム『AI-NET』を活用し、特に物流分野でのソリューションビジネスを主軸に展開しています。 現在展開されているコア技術を活かし たソリューションや、主力製品などをい くつかご紹介ください多田 : まずは、当社のソリューションビジネスの先駆けとなる『デジタルピッキングシステム(DPS)』を紹介します。このシステムは、表示器を利用したピッキング支援システムで、工場や物流センターの作業者は、表示器のランプが光った場所を確認し、表示された数だけ商品を取り出す仕組みになっています(写真1)。このように、表示器の指示に従って行う株式会社 アイオイ・システム コアとなる「交流信号で極性のない2本の線を利用して電力とデータを送る技術」を活かし、世界中の様々な製造/物流現場でビジネスを展開する株式会社 アイオイ・システム。今回は、同社の概要とコア技術を活かしたデジタルピッキングシステムや主力の製品などについて、代表取締役多田 潔 氏にお話しを伺った。写真1 『デジタルピッキングシステム(DPS)』の表示器