ブックタイトルメカトロニクス3月号2020年

ページ
10/52

このページは メカトロニクス3月号2020年 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

メカトロニクス3月号2020年

10 MECHATRONICS 2020.3 御社を設立した経緯や概要などについ てお聞かせください林 : 私は以前、外資系のコンピュータ関連企業に30 年ほど勤務しており、そこではマーケティングを中心とした商品企画業務を担当していました。その中で、いつしか「このまま年を重ねていってもいいのか」といった思いが募るようになり、以前からやってみたかった“ものづくり”にチャレンジするため独立を決意しました。 そして、個人的に付き合いのあったゴンドラメーカーで、作業中に強い風が吹いた時にゴンドラが揺れて非常に危険だなと感じたことを思い出し、また落下事故も年に数件発生していると聞いていたので、これを何とかしたいと考えました。すでに、ワイヤーで吊るすだけでなく建物側にレールを敷くなど、安全面での対策は色々と取られていたようですが、作業性や経年劣化で錆びるなど色々と問題があるようでした。そのため、今までにないようなゴンドラの揺れを止める装置に着眼点をおき、2004年6月にこの装置の開発および垂直壁面走行ロボットの開発を目的に当社を設立しています。 設立当時は、川崎市高津区にある「神奈川サイエンスパーク」に事務所を設置し、私自身エンジニアの経験がなかったので、専門の技術者を数人雇用する形でスタートしました。そして、技術者からはすぐに開発できるという話だったのですが、思うように進まず経費だけがかさんでいき、2 年半経っても何もできない状況が続きました。 その後、スイスとドイツの企業と連携し、現地でゴンドラ揺れ止め装置の1号機を開発しましたが、規格の問題などで製品化できず、結局成果は得られませんでした。ベンチャー企業の当社としては、非常に厳しい状況に立たされ、そこでようやく気づいたのですが、専門の技術者が普通に思いつくようなものであれば、すでに世の中に出ていると思いました。 そのため、そこからは自分の力で何とかしていこうと決断し、技術者の雇用をやめて独自に技術を学んでいきました。ただ、そのような状況を知った身内である弟が、心配して色々とサポートしてくれていました。その頃は、6 年ほど居た「神奈川サイエンスパーク」を離れ、拠点を海老名市にある「神奈川県代表取締役社長林 健治 氏独自の真空吸着技術を活かした垂直壁面走行ロボット~空気が抜けるような凹凸面を対象にしたビジネスモデル~産業技術センター」に移転しており、そこでゴンドラ揺れ止め装置2号機の設計/開発を進めていました。結局は、この2 号機も失敗しましたが、色々とノウハウを蓄積することができました。 また、並行して関連するロボット開発も色々と行っていき、ほとんどが製品化できずに失敗していましたが、なかには失敗を重ねながら改良し、当社の主力となる製品になった事例もあります。 2013 年からは、海老名市の「神奈川県産業技術センター」から現在の相模原市にある「さがみはら産業創造センター」内に営業拠点を移し、今までのノウハウを活かしたゴンドラ揺れ止め装置3号機の設計/開発を行っていきました。 そして、2018 年にこの3 号機の開発に成功し、製品名も『ゴンドラ振れ止め装置』に変更して、第31回「中小企業優秀新技術・新製品賞」(主催:りそな中小企業振興財団)を受賞するとともに、2019年相模原市トライアル発注認定制度認定製品にも選ばれています。さらに、当社の技術が高く評価されてNEDOの「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」にも採択されるなど、ようやく会社的にも軌道に乗ってきたように思っています。 現在当社は、基本的に設計/開発に専念するため、営業/販売に関しては弟が起業した有限会社ユニキューブTecnosが行っており、グループ会社という位置づけになっています。 御社のコア技術とそれを活かした、主力 製品の特徴などについてお聞かせくだ さい林 : 当社のコアとなる技術は、独自の真空吸着技術がベースになっています。真空吸着技術は、空気の抜けない平坦な面を対象によく使われる技術ですが、当社では空気の抜けてしまうような凸凹した面などを対象にした技術をビジネスモデルにしています。 この独自の真空吸着技術を活かして最初に製品化したのが、ハンディ電動吸着パッド『タコパッドⅢ』で、現在当社の主力製品になっています(写真1)。この製品は、名前の通り3号機で、1号機、2号機の失敗ステラ技研株式会社 高所の作業に使われるゴンドラにスポットを当て、その揺れを止めるための装置を開発する目的で設立されたステラ技研株式会社。従来の平面を対象にしたモデルではなく、空気が抜けてしまうような凹凸面を対象にしたモデルの開発を進めた同社の概要と取り組み、並行して進められていたロボット開発などについて、代表取締役社長 林 健治 氏にお話を伺った。写真1 ハンディ電動吸着パッド『タコパッドⅢ』写真2 『タコパッドⅢ』を利用したビル壁面および風力発電塔の保守作業 写真3 インフラ診断ロボット『ALP』