ブックタイトルメカトロニクス2月号2020年

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概要

メカトロニクス2月号2020年

MECHATRONICS 2020.2 45日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第20回 <裏の技術(1)>続的に発展するためには、その源泉である組織能力を強くするのが重要である。 その組織の強さを示すのを「職場力」とすれば、モノづくりの原点・出発点である「固有技術」を高め、その固有技術を最大限に活用するための「管理技術」によって、問題点を発見し、改善することが重要である。さらにやる気・チームワーク・豊かな人間性といった「和の心」を基本に置き、「固有技術」「管理技術」の2つと合わせることで、初めて「職場力」が高まることになる(図2)。 競争力の源泉は、問題解決を繰り返す進化の力である。そして、部門の壁を乗り越えて外部・内部情報を共有し、企業の方針や目標が明確な企業が好成績の結果を出している。 また、組織の片隅で眠っていた「技術」や「知恵」の活用できるチームワークやリーダーシップをいかに引き出すのも組織の活性化とともにダイナミックに動くために基本となる。仕事のやり方をチームプレー中心にして、会社の潜在能力をいかに活用するかにある。 職場の力は、優れた固有技術・技能、QCなどの管理ノウハウ、チームワークや互いに助けあおうとする心などが一体となって、組織力となる。 日本は、目線を同じにして悩みを聞き、品質改善などにチームで取り組む「現場力」がある。創意工夫が引き出せるような環境となっている点が現場では大事である。1-2. 小集団活動 聖徳太子の「五箇条の御誓文」にある「和をもって尊しとなす」以来の千数百年に及ぶ日本の協調を尊ぶ集団主義文化や数千年にわたる村社会の農耕文化が、この効率大量生産モデルの遂行にあって大きなバックボーンになっていることは疑いがない。 このような文化的背景があるためか日本では過去から現場のボトムアップ方式による改善が実践されていた。これが日本の強みでもあった。その具体例をあげて紹介しよう。① 改善運動(Kai Zen) 工程を改善し、品質を高める方法には、様々な手法が用いられ、ある程度、定着するとさらに新たな概念が生まれ、新たな手法が導入されて発展してきた。品質を高めるのに、連綿と紡がれてきたのが、日本のモノづくりの歴史でもある。 サークル活動さえ実施していれば品質は良いとの神話に安住はしておれない状況になってきている。 現場で問題が発生しても一過性としてとらえて対症療法で対応するのではなく、本質的な改善や改革として実施することが必要で、押し付けの改善から『引き出す』改善へ変化していった。 トヨタでの改善提案は年間、45万件(1986年のピークの時は約265万件)におよび、その99%が採用されているという。 1951年から実施されており、米国のフォードで実施されていた提案制度を参考にして、「創意くふう提案制度」が創設された4)。 改善活動は「現場力」を向上させる一手法でもある(写真3、4)。日本で生まれ育った改善活動は、海外からも注目され、「Kai Zen」と日本語のまま使用されて普及したこともあった(写真5)。また、セル生産方式になってからセル生産現場で実施するセル改善活動へと変化してきている。② モチベーションのアップ モチベーションを如何にあげるかが重要で、企業によって様々な手法が検討されている。例えば、技能コンテストを実施してモチベーションをあげている企業や全社的な運動で行き詰った企業は、拠点ごとに実施している例もある。活気ある職場、働きがいのある職場を目指して、先ずはモチベーションを如何にあげるかにある。a. グループ表彰b. 2 年に一度の社内技能競技大会の開催によるメ ダル授与写真7 Brown Bag Lunch Meeting 写真8 Brown Bagc. 全社技能競技大会の開催で拠点同士の競争意識 を高める 日本的なリーダーシップに、「車座」(写真6)、「おやじ」、「草の根コミュニケーション」といった現場の仕事仲間が集まって意見を交換する手法があり、飲みながら情報交換して一体感のもとに日々の改善に努めたものもある。モチベーションをあげるのに一役かっているものと思われる。 現場力構築には、心のこもったコミュニケーションや思いやりが重要で、このような当たり前のことができるようにする所に、日本のモノづくりの源泉がある。 知識を詰め込みだけが技能伝承ではないのである。日本が得意とする「絶妙に呼吸の合う連携」が生きている。 日本で実施しているこの手法と似たものに“Brown Bag Lunch Meeting”というのを米系外資企業が日本で実施している例がある(写真7)。 各自、ランチを持ち込んで食べながらコミュニケーションを図るもので、サンドイッチや飲み物を茶色の袋(Brown Bag)に入れて持ち寄るために、このような名前がついている( 写真8)。 次回は、この続きについて紹介する。<参考資料>1)藤本隆宏、“ものづくり経営学”pp25?pp26(2003) ISBN978-4-334-03393-42)“ものづくり白書”(2004 年) ISBN978-4-324-07444-23)“「ものづくり白書」にみる国際競争力”日刊工業新聞2005-06-084)新生トヨタとTQCの広がり https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/ 75years/data/company_information/ management_and_finances/management/ tqm/explanation03.html写真3 改善提案推進会議写真6 車座写真4 改善提案箱 写真5 Kai Zen