ブックタイトルメカトロニクス2月号2020年

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概要

メカトロニクス2月号2020年

MECHATRONICS 2020.2 11関係で現場に近い存在だったので、単にソフトウエアを開発するというよりは、実際に現場の作業者が困っていることなどをリサーチし、それを基に開発を行っていました。そのため、製品開発の1つのコンセプトとして、“ 現場でも、またITに詳しくない方でも使えるようなソフトウエア”を目指していました。従来は、ソフトウエアメーカーなどが製作し、その後エンドユーザーに使っていただき、修正点があればメーカーに依頼して改良するという流れ、つまりソフトウエアメーカーとユーザーが繰り返し作業を行うことでソフトウエアを完成していくのが、一般的なスタイルと我々は認識しています。そこからちょっと違う方向を目指そうと考え、我々は“プラットフォーム”と表現していますが、これは枠組みというような意味合いで、センサのデータを取って「見える化」や「分析」をするという枠組みをつくっていきます。その枠組みの上で、極端なことをいうと、エンドユーザーが自分のやりたいことを実現していくという取り組みを考えました。 そのエンドユーザーというのが、我々の中ではITに詳しい方だけでなく、現場の作業者でも簡単に使えて身近に感じられるシステムをイメージして開発を行いました。そして、2015 年に『Argoculus(アルゴキュラス)』を発売し、本格的にIoTプラットフォーム事業をスタートさせています。 ちなみに、『Argoculus(アルゴキュラス)』という商品名には意味があり、“アルゴス”というギリシア神話に登場する「100 の目をもつ巨人」と、“オキュラス”というラテン語で「目」を意味する単語を合わせることで、「多くの目で色々なものを監視する」という意味合いをもたせた造語になっています。 IoTプラットフォーム『Argoculus』の特 徴や導入事例などをお聞かせください房枝 : このシステムは、遠隔地にある様々な現場のセンサとつなぐだけで、機器の稼働状況や工場/オフィスなどの環境状況を「見える化」することができるIoT のためのオールインワンプラットフォームです。 仕組みとしては、エッジと呼ばれるセンサ部分と、サーバと呼ばれるデータを蓄える部分の大きな2つの構成になっており、当社ではこのサーバの部分にクラウドを使用しています(図1)。そのため、例えばエッジと呼ばれるセンサ部分のデバイスだけをお客様にお送りするだけで、我々が現地に行かなくてもお客様サイドで設定して設置することも可能であり、低コストで簡単にすぐ始められるといったメリットがあります。 主な特徴としては、収集したデータを蓄積管理する「データベース」、ユーザーにデータ閲覧などのUIを提供する「ダッシュボード」(写真1)、データを判定して自動的にアクションを取る「リアルタイム診断」(図2)などのIoTに必要な機能をもっています。また、外部システムとの連携を容易に行うことができ、データと通信を守る標準的なセキュリティの仕組みも備えています。 また、エッジデバイス自体は当社で開発していませんが、ソフトウエアについてはすべて自社開発で行っているため、基本スペックからお客様ごとのカスタマイズも柔軟に対応することが可能です。 導入事例については、製造現場における製品/機器の状況をリアルタイムに把握したり、オフィス/作業現場などの温度や湿度、CO2濃度といった環境モニタリングに活用されています(写真2)。こちらは、先程お話した1つの例として我々が現地に行かなくてもエッジデバイスをお送りするだけで、あとはクラウドを通してデータの見える化や異常検知を実現しています。 それから、IoTを導入する以前に抱えている問題を当社に相談され、そこから色々とアドバイスをしながら導入していく場合もあります。こちらは、ただ当社のソフトウエアを使っていただくだけでなく、その前段階で例えば「異常検知を行うためには、何を測りましょうか?」、「測ったあとはどのような分析をしましょうか?」など、データを取るところから分析までIoTシステム全体を一貫して請け負うことができ、我々の中ではワンストップサービスと呼んでいます。 このようなITとエンジニアリングをセットしたサービスは、当社が創業当初から実践している事業形態であり、IoTにおいてもこのサービスを利用した導入が大半を占めています。 今後の展開についてお聞かせください房枝 :ま ずは、我々のワンストップサービスを活かして『Argoculus』をお客様の役立つシステムにしていきたいと考えています。また、色々なお客様が、身近にIoTを使えるような環境づくりにも取り組んでいきます。西川 : お客様の役に立つことが我々の基本方針で、お客様が抱えている問題に向き合いながら仕事を進めてきました。最近はお客様の製造している製品を使われているメーカーなどが抱えている課題を解消するための活動にも力を入れています。実際、それがIoTといえるのかということではちょっと微妙になりますが、ソリューションという観点から見れば非常に大事なことになると思います。 すでに、お客様の新製品の試作開発を行っています。この新製品はお客様がそのお客様自身の課題解消を目的としたものです。このようにお客様と一緒になって仕事ができるようになり、本当のソリューションになってきたように感じています。房枝 : 我々も色々と展示会に出展する機会が増えており、そこで「自社製品のIoT 化を図りたい」という相談を受けるケースが、最近多くなってきました。その場合は、今までの受託開発とはちょっと違う形で、装置製造メーカーなどへのシステム提供という形になると思います。このように、ビジネスの幅も徐々に広がりを見せており、それに対応していくことも今後の展開になっていきます。西川 : IoTは、ビックデータやAIなどと組み合わせてビジネスに展開していくのが主流になっており、我々も同じように組み合わせたビジネスを行っています。ただ、エンジニアリングのベースがあればそのような難しいことをしなくても、データを見れば判断できることは沢山あります。簡単であっても課題に対し最も合理的はシステムにすることが重要と考えています。 特に最近では、どこのメーカーでも保守について課題をもっており、今後市場としても伸びると予想されるので、我々のもつエンジニアリングの経験や知見を活かせればと思っています。本日はお忙しい中ありがとうございました。所在地 :U R L :事業内容 :東京都目黒区https://www.ssil.co.jpエンジニアリング、科学/工学系ITシステム構築、受託研究/開発。サイエンス ソリューションズ株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・図2 「リアルタイム診断」機能の仕組み写真2 製造現場での設置事例