ブックタイトルメカトロニクス10月号2019年

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メカトロニクス10月号2019年

44 MECHATRONICS 2019.10   日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第16回 <部品点数とねじの本数>連載  前回は電子機器の重量価格比について紹介した。今回も別の角度から話題商品の側面を紹介したい。 色んな電子機器を組み立てるのに多くの様々な部品を使用している。大きい部品から小さい部品を含めて使用され、それらの部品は、自動挿入機や自動装着機によってプリント配線板に実装されている。実装されたプリント回路板を筐体に挿入して組立てて最終製品となる。 今回は、話題商品を作る上で関係深い部品点数、実装方法、自動実装機、接合方法などについて紹介する。1. 部品点数 一体、どのくらいの部品点数があるかと思って分かる範囲で電気製品以外も含めて製品別に調べてみた。 すると表1、表2に示すように製品によって、その部品点数は大きく異なることが分かる。実装技術者にとって部品点数はなじみのある言葉であり、部品を実装するのに、ミスなくいかに精度良く、高速で実施するかを検討している。 部品点数が多くなればなる程、製造方法も複雑になると同時に信頼性の確保にどのようにするかも必要となってくる。そういう意味では、様々な方法で部品点数の削減化に努力が傾注されている。部品点数の削減は、管理工数の削減、組立工数の削減、材料費の節減、環境負荷の低減などにつながり、大きな共通の課題であり、テーマでもある。 当然ながら、部品点数を削減するには、それなりの努力が必要となってくる。設計段階から設計基準を見直し、規格の共通化も必要となってくる。2. 実装方法と自動実装機 部品をプリント配線板(PWB=Printed WiringBoard)に実装するのに、初期の頃はラインに女性が並んで部品を人手で基板に挿入していた。挿入後、最後にフローソルダーを通過するとはんだ付けが終了し、実装された製品をプリント回路板(PCB=Printed Circuit Board)と呼称された。つまり、部品がPWBに組み付かれた完成品である。 その後、自動化が進展し手挿入で実施していたものから自動挿入機によって自動で実施されるようになった。自動挿入機の開発には他産業で使用されていた自動機を参考に開発された。 松下電器産業甲府事業所で靴に釘を打ち込む自動機を参考にして電子部品の自動挿入機が開発されたと言う。特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光 部品はその後、挿入実装型部品から表面実装型部品に変わるにつれ、自動機も挿入実装機から表面実装機へと進化・発展していった。しかも電子部品は表3に示すように極小チップ部品へと変化し、米粒よりも小さいチップ部品を高速で高精度に実装する方法へと進化していった。 実装の実例をあげて説明すると、カメラ一体型VTR(アナログ)が商品化された時に、約2,200個の部品が0.6mmの薄い4層多層プリント配線板の両面に高密度実装され、大きな話題となった。 ソニーが商品化したパスポートサイズハンディカム(カメラ一体型VTR / CCD-TR55、重量790g、価格\160,000)(写真1)であり、 1989年6月のことである。 ソニー/パスポートサイズハンディカムの諸元 その後、部品点数を削減するために、半導体への高集積化が検討されて部品点数が少なくなっていった。 3年後の1992年11月に松下電器が商品化した世界最小・最軽量ビデオムービ(ブレンビープロNV-3CCD1、重量890g、価格\298,000)(写真2)の部品点数は半分の1,100個となった。松下電器産業/世界最小・最軽量ビデオムービの諸元 1980 年代から1990 年代は、日本発の多くの電子機器が商品化され、世界で売れた。ビデオムービーは小型化・軽量化を競う格好の話題製品であった。そのため部品はチップ化され、サイズは小さくなり、プリント配線板も薄物多層プリント配線板にサーフェスビアをもつ高密度化を実現するものになった。この頃は、部品のみならず実装機も高速で高精度の実装機として進化していき日本の実装技術を高める時期でもあった。まさに、大型コンピュータ用に開発されていた実装技術が民生機器の飽くなき軽量化と小型化・薄型化を達成するために新たに民生分野での実装技術の開発が進展したことであった。 デジタルカメラにおいても小型化・軽量化を達成するために高密度実装技術を採用するために写真3に示すようにフレックスリジッドプリント配線板を採用し、コネクタを削減して対応する時期があった。フレックスリジットプリント配線板と言えば米国で航空宇宙搭載用として開発されたものが日本では民生機器に使用され始めた。 しかし、デジタルカメラ用の半導体パッケージを高集積化することによって幾つかの部品が不要となり、スペースが空いたために再び、コネクタを採用して通常の多層プリント配線板とフレキシブルプリント配線板を接続する方法が採用された。量がまとまれば半導体への高集積化が進展することであった。半導体の高集積化と高密度実装技術の競争が始まった。 設計する際に、基本は、なるだけ共通化して標準化して特殊な部品を採用しないことである。差異化するために特殊な材料を使用したために、その仕様で決めた会社のみしか供給できないような部品は、後々苦労する羽目になる。集約して部品点数を削減する際には足かせとなってしまう。 昔は、各社で電子機器の筐体には、様々な樹脂を使用し、かつ、異なる難燃化手法を採用して差異化をしていた。 しかしながら結果的には、特殊な部品となり、リサイクルをする場合にも足かせとなる。もし、汎用樹脂を使用していれば、同一成分で、リサイクルする場合にも楽になる。環境問題から端を発してある時期から反省して単純な組成へと方向展開する機運が生まれた。3. 接合方法 さて、電子機器を組立てる上で、部品を基板に接合させるには広くはんだ付け技術が利用される。 さらに筐体に組み込むのにほぼ確実に使用されるものにねじがある(表4)。機械的な接合方式で、このねじも機器によって本数が異なってくる。ねじは世界で最も普及した締結部品でもあり1)、ねじは“産業の塩”とも言われる。固定化するのにねじで簡単に出来、かつ、交換する場合には、ねじを外せば本体から取り出せ、便利な接合方式である。 例えば、ジャンボジェット機には約700 万本、自動車は約2万本前後のねじが使用されていると言う。電気・電子機器でねじの数が多いのは複写機等スルーホール径 0.35mmφ/ランド径 0.5mmφ、導体幅/導体間隙(L/S)=150/150μm の板厚0.6mm の4層板に0.5mmリードピッチQFPや1608サイズのチップ部品を搭載したカメラ一体型VTR。発表は1989 年5 月で浅野温子の予告コマーシャルで発売前から予約が殺到し、1989 年6月21日に発売し5 万台が2日で売り切れた。1989 年日刊工業十大新製品賞を受賞している。世界初※ 1 の1005 サイズのチップ部品を搭載するとともに27万画素の3CCDを採用した商品であった。プリント配線板も0.8mm 6 層SVH※ 2 多層プリント配線板(L/S=120/180μm、SVHφ0.15mm、貫通スルーホールφ0.3mm)となり、より高精細のプリント配線板が採用された。※ 1 同社調べ※ 2 SVH(Surface Via Hole): 多層プリント配線板の表面から   2層以上の導体間を接続するIVH(Interstitial Via Hole)。