ブックタイトルメカトロニクス8月号2016年

ページ
42/52

このページは メカトロニクス8月号2016年 の電子ブックに掲載されている42ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

メカトロニクス8月号2016年

42 MECHATRONICS 2016.8日本産業洗浄協議会名誉理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力2014年度PRTRデータの概要~化学物質の環境リスクの管理に役立つ「化学物質の排出量・移動量の集計結果」~【第173回】■国際的な動きを受け入れた現状のPRTR 国際的な動きを取り入れた現状のPRTRについては、環境白書の最新版(2016年版)において、“第2部各分野の施策等に関する報告、第5章 化学物質の環境リスクの評価・管理、第3節 化学物質の環境リスクの管理”の部分で、以下のように要約して紹介されている2)。(1)「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」注3)に基づく取組 持続可能な開発に関する世界首脳会議注4)(WSSD)における“2020年までに、化学物質による人の健康や環境への著しい悪影響を最小化する”という目標を踏まえて、2009年5月に化学物質審査規制法が改正された。注3)化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律:(略称:“化学物質審査規制法”、“化審法”)(1973年法律第117 号)注4)持続可能な開発に関する世界首脳会議:World SummitonSustainable Development(略称:“WSSD”、“リオ+10”、“ヨハネスブルグ・サミット”)。2002 年8 月~ 9 月に、ヨハネスブルグ(南アフリカ共和国)で開催。1992年に開催された国連環境開発会議(地球サミット)から10年目に当たり、「アジェンダ21」等の見直し、新たに生じた課題等の議論を行った。 改正された化学物質審査規制法では、包括的な化学物質の管理を行うため、法制定以前に製造・輸入が行われていた既存化学物質を含む一般化学物質等を対象に、まずはスクリーニング評価を行い、リスクがないとは言えない化学物質を絞り込んで優先評価化学物質に指定した上で、それらについて段階的に情報収集を求め、国がリスク評価を行う効果的、効率的な体系が導入された。2016年4月1日時点で、優先評価化学物質には196物質が指定されている(図表1)注5)。注5)原本の「<図5-3-1>化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律のポイント」1)。 また、優先評価化学物質については段階的に詳細なリスク評価を進めており、2015年度までに54物質について「リスク評価(一次)評価Ⅱ」に着手し、10物質について評価Ⅱの評価結果を審議した。 一方、新たに製造・輸入される新規化学物質については、2016年度は、567件(うち低生産量新規化学物質は220件)の届出を事前審査した。 また、2015年5月に開催されたPOPs条約第7回締約国会議注6、7)の議論を踏まえ、2016年3月に化学物質審査規制法施行令を改正し、新たに条約上の廃絶対象とすることが決定された塩素数が2であるポリ塩化ナフタレン及びペンタクロロフェノール又はその塩若しくはエステルを第一種特定化学物質に指定(同年4月1日施行)するとともに、当該物質が使用されている場合に輸入することができない製品群を指定(同年10月1日施行)した注6、7)。注6)POPs:Persistent Organic Pollutants、残留性有機汚染物質。毒性、難分解性、生物蓄積性及び長距離移動性を有する物質。注7)POPs条約:残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(略称“ストックホルム条約”、“POPs条約”)。POPsの廃絶、削減等に国際的に取り組むため、2001年5 月22日にストックホルムで採択され、2004年5月17日に発効。 さらに、化学物質審査規制法については、2009年の法改正時の附則で施行後5年を経過した場合の見直しが規定されていることから、施行状況等について予備的な点検・検討を行い、課題の整理等を行うため、関係省において2015年8月から「化審法施行状況検討会」を開催し、検討を開始した。(2)「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づく取組 化学物質排出把握管理促進法に基づく「化学物質排出移動量届出制度」(以下「PRTR制度」という。)については、同法施行後の第14回目の届出として、事業者が把握した平成26年度の排出量等が都道府県経由で国へ届け出られた。届出された個別事業所のデータ、その集計結果及び国が行った届出対象外の排出源(届出対象外の事業者、家庭、自動車等)からの排出量の推計結果を、2016年3月4日に公表した。 2010 年度からは、個別事業所ごとのPRTRデータをインターネット地図上に分かりやすく表示し、ウェブサイト(http://www.env.go.jp/chemi/prtr/prtmap/)で公開している(図表2~4)注8)。注8)原本の「<図5-3-2>化学物質の排出量の把握等の措置(PRTR)の実施の手順」、「<図5-3-3>届出排出量・届出外排出量の構成(2014 年度分)」、「<図5-3-4>届出排出量・届出外排出量上位10物質とその排出量(2014年度分)」1)。■2014年度データのポイント1)(1)届出排出量・移動量 今般、2014年度の1年間に届出対象事業者が把握し、2015年4月1日から6月30日までに届出のあった事業所からの排出量・移動量について、全国・全物質で集計した。2014年度は、前年度に比べ、届出排出量は減少したが、届出移動量は増加した。 また、2010年度から届出対象物質が354物質から462物質に見直されており、見直しの前後で継続して届出対象物質として指定された物質(以下「継続物質」という。276物質)についても、届出排出量は減少したが、移動量は増加し、合算した値は前年度と比べ増加した。<全対象化学物質(462物質のうち届出があった435物質)> ・届出事業所数:35,573事業所 (前年度から486事業所の減少) ・届出排出量:159千トン (前年度から1.0%の減少) ・届出移動量:224千トン (前年度から3.9%の増加) ・届出排出量と届出移動量の合計:383千トン(前  年度から1.8%の増加)<継続物質(276物質のうち届出があった263物質)> ・届出排出量:143千トン (前年度から1.1%の減少) ・届出移動量:202千トン (前年度から4.8%の増加) ・届出排出量と届出移動量の合計:345千トン(前  年度から2.3%の増加) 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法)」注1)は、1999年7月に公布された。同法に基づき導入された「化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)注2)」により、人の健康や動植物に有害な影響を及ぼすおそれのある化学物質について、毎年度、対象事業者には、対象化学物質の環境に排出される量(排出量)及び廃棄物等に含まれて事業所の外に移動する量(移動量)の届出が義務付けられ、国は届出の集計結果及び推計を行った届出対象外の排出量の集計結果を併せて公表することとされている。(第1回の集計結果は、2001年度の数値であり、2002年3月に公表された。) 化管法は、2008年11月に対象物質の見直し(従来の354物質に代えて、新たに462物質を指定)及び対象業種への「医療業」の追加を内容とする化管法施行令の改正を行った。 経済産業省および環境省は、共同で2014年度のPRTR集計結果を、第14回目として、さる2016年3月4日に発表した1)。今回は、PRTR制度について「環境白書」が記している2つの法律との関係の説明を付すとともに2)、2014年度PRTRデータの構成について紹介する。注1)特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律:(略称:“化学物質排出把握管理促進法”、“化学物質管理促進法”、“化管法”、“PRTR法”)2009 年法律第86 号。注2)PRTR制度:Pollutant Release and Transfer Register、化学物質排出移動量届出制度。人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれがある化学物質について、環境中への排出量及び廃棄物に含まれて事業所の外に移動する量を事業者が自ら把握し、国に報告を行い、国は、事業者からの報告や統計資料等を用いた推計に基づき、対象化学物質の環境への排出量等を把握、集計し、公表する仕組みをいう。<図表1>化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律のポイント2)