ブックタイトルメカトロニクス11月号2015年

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概要

メカトロニクス11月号2015年

MECHATRONICS 2015.11 53 「オーケストラ付きクラシック合唱作品」の演奏では、アマチュア音楽の世界では、年末のベートーヴェン作曲「交響曲第9番“合唱付”」が最もポピュラーな行事となっているが、年間を通しての行事の計画と実施は、各種団体によって多彩な自主企画が組織的に行われている。ある合唱団「東京オラトリオ研究会(指揮者・郡司博)」では、NPO法人を立ち上げ、その傘下にいくつかの専属の混声合唱団、児童合唱団、それに、専属のオーケストラをかかえ、なおソリストとしておおぜいの声楽家とつながりを持っている。 このNPO法人「おんがくの共同作業場(代表理事:郡司博)」は、「オーケストラ付きクラシック合唱作品」を主に演奏するオーケストラと合唱団、それらを支える聴衆、三者の連携と協力を促している。その演奏活動を通して「オーケストラ付きクラシック合唱作品」の振興と普及を図り、適宜、人権、平和及び慈善を目的とする演奏会(自然災害の復興支援、アフガニスタンの子どもたちに車椅子を贈る演奏会)などを企画、実行している。また海外演奏会を通じて国際交流を行うなどのクラシック音楽文化創造と次世代人材の育成にも心がけている。 その演奏曲目も多彩となり、物故作曲家の本邦初演(テオド-ル・グヴィ(1819 ~1898)作曲「レクイエム」、「スターバト・マーテル」)、現役作曲家の新作(カール・ジェンキンス(1944~)作曲「平和への道程(2013)」などがある。 その法人では、いま新しい合唱曲の初演を夢見てその実現のための議論がはじまり、例えば、以下のような意見が検討されている。・テーマとして地球環境問題をとりあげることが、世界共通の課題として普遍性ある内容になるのではないか?・生物多様性の問題は、名古屋市で国際会議が開催され、名古屋議定書が採択されたこともあり、日本で取り上げるにふさわしいテーマではないか?・「“森は海の恋人”運動」は、日本の里地里山問題への取組みの典型であり、東日本大震災を契機としてフランスとは牡蠣養殖のための問題解決として、交流が進んでいる。・しかも、“里山”のことばは、“SATOYAMAイニシアティブ注5)”として、世界の共通認識として普及しつつある。注5)SATOYAMA イニシアティブ:人と自然との共生を目指し、世界的な規模で生物多様性の保全と持続可能な利用・管理を促進するための取組。日本の里地里山のような人間の営みにより形成・維持されてきた農地や人工林、二次林などの二次的な自然地域を対象とし、保全と持続可能な利用を進めるもの。環境省が国連大学等の国際機関と共に提唱している。・東日本大震災からの復興を祈念したオラトリオ(和合亮一(わごう・りょういち)詩、新美徳英(にいみ・とくひで)曲「つぶてソング」)を、福島で被災した多くの児童も含めた合唱団を組織して、福島県(会津若松市、郡山市)と東京都(池袋、新宿)で演奏した経験(2013年、2014年)を次の新しい企画に生かしたい。 このように日本人の作詞、日本人の作曲になる地球環境問題をアピールする新しいオラトリオの誕生と、その本邦初演はいつになるかは不明だが、関係者の目標達成への議論はしだいに熱を帯びてきている。(2015.9.13記)<参考資料>1)環境省編:「平成27年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」日経印刷(株)(2015.6)http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/2)畠山重篤(短歌:熊谷龍子、挿画:相澤一夫(新象作家協会会員):「森は海の恋人」北斗出版(1994.10)(のち文春文庫)3)熊谷龍子:「(歌集)無冠の森」六花書林(2008.10)4)山重篤:「日本<汽水>紀行~「森は海の恋人」の世界を尋ねて」文藝春秋(2003.9)5)畠山重篤:「牡蠣とトランク」ワック(株)(2015.6)6)「NPO法人 森は海の恋人」のURLhttp://www.mori-umi.org/はじまって、「森・里・川・海」という広域的なつながりを重視した自然環境保全活動の事例が話題となる。  “現在(いま)われは森の新旧交替を   つぶさに視つむ 立会人として  熊谷龍子”⑯東日本大震災 気仙沼湾の舞根地区は2011年年3月11日の東日本大震災で約15mの津波が押し寄せ、漁業が壊滅的な被害を受けた。同NPO法人と関係者は、環境調査、環境評価を行い、牡蠣養殖の再開に努力した。  “森のそびら辿りてゆけば海に逢う   悠久よりの生態系は  熊谷龍子”⑰ESD活動の模範例 この活動は、小・中学校の教科書にも取り上げられ、科学的な知見を通じたESD活動として環境教育・防災教育を実践している。  “長瀞の水際あゆめば水たちの   囁きというせせらぎありき  熊谷龍子”⑱京都大学の新しい教育プログラム 京都大学では、この活動をきっかけとして、森里海連環学の教育プログラムが設けられた。  “生きていて寡黙なるもの筆頭に   先ず樹々たちを挙げねばならぬ  熊谷龍子”⑲「海と生きるまちづくり」 同NPO法人は現在、「森は海の恋人運動」の取組を発展させ、気仙沼市舞根地区の震災復興のため「海と生きるまちづくり」を掲げて、ESD活動として環境教育・防災教育を実践している。  “風花や小鳥や雲や風たちや   佇ち尽くす樹を見舞うものたち  熊谷龍子”■畠山重篤氏について(1)肩書 畠山氏は、現在以下のような肩書きで紹介されている。“水山(みずやま)養殖場代表取締役、日本の養殖漁業家、エッセイスト、京都大学フィールド科学教育センター社会連携教授、「牡蠣の森を慕う会(現「特定非営利活動法人 森は海の恋人」)」代表。”(2)受賞 畠山氏は今までに以下のような賞を受賞している。①1994 年:朝日森林文化賞(森は海の恋人運動に対して)②1999年:「みどりの日」自然環境功労者環境庁長官表彰③ 2001年:「第48回産経児童出版文化賞」、「第50回小学館児童出版文化賞」(『漁師さんの森づくり』に対して)④2003年:緑化推進運動功労者内閣総理大臣表彰⑤2003年:第52回日本エッセイスト・クラブ賞(『日本<汽水>紀行~「森は海の恋人」の世界を尋ねて』に対して)⑥2004年:宮澤賢治イーハトーブ賞⑦2004年:河北文化賞⑧ 2012 年:国連のフォレスト・ヒーローズ表彰(牡蠣、帆立養殖業のかたわら「森は海の恋人」をテーマに気仙沼湾上流の植樹を続けている活動に対して)⑨ 2012年:第46回吉川英治文化賞受賞(植林活動で海を再生させたことに対して)⑩ 2012年:第59回産経児童出版文化賞、産経新聞社賞受賞(『鉄は魔法つかい』に対して)⑪2015年:第6回KYOTO地球環境の殿堂入り⑫2015年:第25回みどりの文化賞(3)著書 畠山氏と熊谷氏は今までに以下のような著書を発表している。①畠山重篤(短歌:熊谷龍子、挿画:相澤一夫(新象作家協会会員):「森は海の恋人」北斗出版(1994.10)(のち文春文庫)② 熊谷龍子:「(歌集)森は海の恋人」北斗出版(1997.6)③畠山重篤、松永勝彦:「漁師が山に木を植える理由」成星出版(1999.3)④畠山重篤:「リアスの海辺から~森は海の恋人」文藝春秋(1999.5)(のち文春文庫)⑤畠山重篤、(絵)スギヤマ カナヨ:「漁師さんの森づくり~森は海の恋人~」講談社(2000.11)⑥畠山重篤:「リアスの海辺から~森は海の恋人(文春文庫)」文藝春秋(2002.5)⑦畠山重篤:「日本<汽水>紀行~「森は海の恋人」の世界を尋ねて」文藝春秋(2003.9)⑧畠山重篤、徳田秀雄:「カキじいさんとしげぼう」講談社(2005.6)⑨畠山重篤(短歌・熊谷龍子、挿画・相澤一夫(新象作家協会会員)、イラスト・クサナギシンペイ、カバー・大久保明子):「森は海の恋人(文春文庫)」文藝春秋(2006.9)⑩ 畠山重篤:「牡蠣礼賛(文春新書)」文藝春秋(2006.11)⑪熊谷龍子:「(歌集)無冠の森」六花書林(2008.10)⑫畠山重篤、宍戸清孝:「森・川・海つながるいのち(守ってのこそう!いのちつながる日本の自然)」童心社(2011.1)⑬畠山重篤、スギヤマ カナヨ:「鉄は魔法つかい)」(2011.6)⑭畠山重篤:「鉄で海がよみがえる(文春文庫)」文藝春秋(2012.5)⑮「カキじいさんとしげぼう」の翻訳版「Grandfather Oyster and Shigebo」(英・フランス・ロシア・ポルトガル・スペイン各国語版)カキの森書房⑯畠山重篤:「牡蠣とトランク」ワック(株)(2015.6)■牡蠣養殖でのフランスとの交流 東日本大震災への支援でのエピソードの中に、畠山氏がフランスの漁業組合からうけた牡蠣養殖資材と義援金の提供がある。それは50年前に日本の漁業組合がフランスの牡蠣養殖の危機を救った背景があった。 畠山氏の最新の書籍にその説明が記されており、有名ブランドのルイ・ヴィトン社のトランクが原料素材としての森の保護に関係し、牡蠣養殖のための養分提供にも関係するということで、里地里山活動の一環となるエピソードとして以下に紹介する4)。・1958頃:故今井丈夫教授(東北大学農学部)から「牡蠣研究所」建設の相談を受け、岩手県の舞根湾牡蠣養殖組合長畠山氏(畠山重篤氏の父)は舞根湾地区に同研究所を建設することに協力することとなる。・その後、フランスで牡蠣の稚貝がウィルス性の病気で全滅しかけ、牡蠣研究所はウィルスに強い牡蠣の種苗をフランスに提供して、牡蠣養殖の危機を救った。・2011年3月11日:東日本大震災発生。牡蠣の養殖筏が壊滅。・2011年5月:京都大学の森里海連環学の調査チームが舞根湾の植物プランクトンの調査を行い、異常ないことを確認。・2011年6 月:フランスの各地漁業組合、ノルマンディ地方の水産高校等から養殖資材、義援金が届けられた(50年前に、フランスの牡蠣の病気発生に際して、日本が宮城県産の種苗がその危機を救ったことへの恩返しとのこと)。同じ頃、ルイ・ヴィトン社より大震災支援の申し出を受ける。・2014 年6月1日に「第26回森は海の恋人植樹祭」が行われ、フランスからパトリック・ルイ・ヴィトン氏注4)が参加(同氏はその3ヶ月後に急逝)。注4)Patrick-Louis Vuitton(1951~2014):ルイ・ヴィトン社の創業者直系の第5 代当主。■環境問題をとりあげる合唱曲への期待