ブックタイトルメカトロニクス4月号2015年

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概要

メカトロニクス4月号2015年

42 MECHATRONICS 2015.4日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力電磁波過敏症は次の環境汚染問題となるか?~(1)その症状と関連事項の経緯~【第157回】■知人N氏からの情報 知人N氏から電磁波過敏症に関して筆者が受けたメールには、先ほどの文面に続いて、“病状”、“日常注意していることがら”などの説明があり、以下にその一部を紹介する3)。(1)症状について・症状としては、頭痛、胸痛、耳鳴り、眼の疲れ、身体がピリピリするなどです。・電磁波、電界、磁界の影響を受けた時に症状が出ますが、その影響がなくなった後でもしばらく症状は続きます。・至近距離で被曝して、数週間、痛みが続いたことも何度かあります。・症状がひどかった時は、鋭い刺すような痛みも日々感じました(恐らく、特別強い電磁波が飛んできた時でしょうか)。・音、光、匂いなどの刺激も、ある時には特別にきつく感じることがあります。(2)治療について・日本では病気として認められておらず、相談できる医師が限られています。・医師に相談しても、治療薬はなく、生活習慣、生活環境の改善しかないと言われます。(3)日常生活上で工夫していること 医師の指示により以下のことに心掛けています。①生活習慣・規則正しい生活:早寝早起き、決まった時間に食事・食べ物への配慮:ビタミンCの摂取、ミネラル分の摂取(にがり、煮干しなど)・運動:気功②生活環境(家の中)・電気製品はできるだけ使用しない・携帯電話はほとんど常時電源をオフにする・テレビは見ない・炊飯器は電気加熱からガス加熱に買い換えました・ひげ剃り:電気カミソリは使用しません・電子レンジ・掃除機・洗濯機等:使用中はその機器から離れる・蛍光灯:使用しない・パソコン:アースを付け、本体からは離れる・自分の居る部屋(マンション):床に鉄板を敷く。壁にも鉄板を置く。アースもつなぐ③生活環境(家の外)・通勤にはラッシュアワーを避けて、電車が空いている時間に交通機関を利用します・街中はどこへ行ってもスマートフォンばかりなので、気を付けないといけません・混んだ電車には乗らない。混んだエレベーターにも乗らない・スマートフォン、タブレット、パソコン、携帯電話、電子ゲーム、電子辞書等を使用中の人がいれば、近づかない・電車待ち、信号待ち、スーパーのレジ待ちの時も要注意です(4)職場で工夫していること・同じ部屋の同僚は全員がパソコンを使っているので、少し離れた書棚(スチール棚)の陰で仕事をしています(他の人のパソコンは、スチール棚で遮られている場合はアースをつなげなくても影響はありません)。・自分のパソコンの場合には、アースをつなげ、キーボードを外付けにして、本体は自分のからだから離して作業しています。・自分の席の近くに置かれたプリンタやコピー機にもアースをつないでもらっています。・コピーや電話の利用は他の人にお願いしています。・会議の際は、出席者がもっている携帯電話、スマートフォンなどの電源を切ってもらいます。(5)外部の会議に出席の場合の応急措置・会議の出席者に、携帯電話、スマートフォンの電源を切って頂きます。・会議中にパソコンを使う場合は、アースをつないでもらいます。■電磁波過敏症は新しい情報として どのように紹介されてきたか(1)年鑑における取り上げ方の経緯 環境問題を含めて世の中の新しく問題となった現象や考え方を調べるとき、年鑑が便利な場合がある。出版物の「現代用語の基礎知識」(以下「現代用語」と略)は、用語の意味を把握するときに便利であり、話題になった時期を判定するにも重宝する。同書は、1948 年から毎年発行され、年鑑としての役割も果たす日本で唯一の事典で、本シリーズでも何回か引用させて頂いている(たとえば“里地里山”(第131回))。 “電磁波”あるいは“電磁波過敏症”が人体に悪影響を与える環境問題としてはじめて同書に取り上げられたのは、2007年版からであり、以後毎年その表現が変わりつつも現在の最新版(2015年版)まで存続しており、継続して現代社会における用語の一つとして定着していることを示している。同時に、それ以前の類似の出版物でも電磁波障害を取り上げたものに以下のような例がある。①「2001年版環境問題情報事典」1):“電磁波障害(electro magnetic interference)” “電流の流れから発生する電磁波による健康被害。従来は飛行機の計器類への影響などが注目されていたが、1976 年にアメリカで高圧送電線付近の住民には小児白血病のリスクが高いという症例対照研究が報告され、スウェーデンのカロリンスカ研究所の1960年から25年間にわたる大々的な調査・研究の結果である「カロリンスカ報告」も同様の結論に達した。疫学調査では電磁波によるガンや白血病のリスクが報告されているが、確定的な因果関係が証明されていないため、電力会社の思惑もからんで無害説の声も依然根強い。②「2007年版現代用語」2):“電磁波対策・環境保護基準” “世界保健機関(WHO)注1)は、電磁波対策の必要性を明記した環境保護基準の原案をまとめた。電磁波に関する初の本格的基準で、WHO 本部は、「2006 年秋にも公表し、加盟各国に勧告する」としている。注1)世界保健機関:(World Health Organization、WHO)国際連合の保健衛生分野の専門機関として1948 年4月に発足(本部はジュネーブ(スイス))。すべての人が最高の健康水準に達することを目的として国際保健事業の調整、保険事業援助、伝染病・風土病撲滅、衛生状態改善、保険関連条約の提案・勧告、医療衛生等の国際基準策定等を任務としている。 日本政府は、電磁波について健康被害との因果関係が認められないとしているが、基準公表を受け、関係各省で対応を協議する。 原案では、電磁波による健康被害の有無は「現時点では断言できない」としながらも、30 センチメートル離れたテレビから受ける最大電磁波の5 分の1 程度に当たる0.3~0.4 マイクロテスラ以上の電磁波に常時さらされていると、小児白血病の発症率が2倍になる」とするアメリカや日本の研究者の調査結果を引用し、科学的証明を待たず被害防止策を進める「予防原則」注2)の考え方に立ち、対策先行への転換を促す。”注2)予防原則について、上記説明の次に続く用語解説として以下のように掲載されている。 “予防原則とは、「その定義はいまだに十分合意されていないものの、疑わしい状況は回避すべきである」と表現できるだろう。EU では、環境対策の基本的な方針として予防原則を掲げているが、何をもって「疑わしい状況」と判定するか、それには科学的な 電磁波過敏症についてお聞きおよびの人は多いと考えられるが、日常生活でその症状のために苦しんでおられる方の苦労を理解できる人は少ないかも知れない。筆者も知人のN氏からの話で、交通機関の中での他人の携帯電話で日常悩まされるばかりか、勤務先のオフィスでの卓上電話やパソコンの操作でも体調に影響があるということを知るまでは、電磁波過敏症のことには関心がなかった。 N氏は、その悩みをこう説明する。 「電磁波過敏症については、世間には認知されていない病気で、本当にそんなことがあるのかと疑問視する向きもあり、気のせいだ、気にしすぎだと言われることもあります。以前、仕事で調べたことがあり、電磁波過敏症のことは知っていたのですが、症状が出た時は、自分でも電磁波・電磁界が原因であることを疑っていたくらいなので、仕方がないと思います。 しかし、現在私たちの身の回りに普通にある電磁波・電磁界は、人間に影響がないとはとても思えないくらいきつく感じます。ここ数年でスマートフォンが一気に普及しました。街中でずっとスマートフォンを使い続けている若者を見ると、十数年後は大丈夫なのかと思ってしまいます。電磁波・電磁界の健康影響は昔から言われ続けているので、世の中の方に広く知って頂ければと思います」 今回は、知人N氏から教わった電磁波過敏症についての情報を紹介し、電磁波過敏症について調べるときに、どのような情報が世の中に紹介されているかについて、断片的ではあるが、手がかりとなるキーワードをあわせて紹介する。