ブックタイトルメカトロニクス4月号2015年

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概要

メカトロニクス4月号2015年

10 MECHATRONICS 2015.4 御社の概要についてお聞かせ下さい青木:当社は、私を含め大手通信機メーカーをスピンアウトした6 名のエンジニアにより、1992 年に設立した会社です。当時は、バブル経済の崩壊後で経済状況は悪化していましたが、「自分たちが最大限の力を発揮できる場をつくりたい」という思いから起業を決意しました。仕事は、大手通信会社の研究所向けに音や音声に関する試作装置の開発などを行い、これを事業の柱にスタートしています。その当時、研究所の研究成果を利用させて頂ける制度があったので、そういった仕組みを利用してオリジナル製品の開発なども行っていました。 その頃は、携帯電話がアナログからデジタルに変わる時期でもあり、それに必要とされる音声コーデックの開発に力を入れていました。音声コーデックは、ネットワークの限られた帯域を効率良く利用するために、デジタル処理で音声情報を圧縮する技術です。いかに、音質を保ったまま情報量を圧縮できるかがポイントになっていました。大手通信会社の研究所では、効率の良い圧縮方式のアルゴリズム開発を行い、当社はその圧縮方式が実際に通信端末に組み込めるようにするという、いわば実用化の面でお手伝いさせて頂きました。この音声コーデックの開発は、私自身が担当したこともあり、一番思い入れが深いものになっています。 音声コーデックは、基本的に電話回線に使用されるので共通方式にしておかないと相互通話ができません。そのため、国際電気通信連合内にある通信分野の標準策定を担当する電気通信標準化部門(ITU-T:International Telecommunication UnionTelecommunication Standardization Sector)において、国際標準化されており、世界共通で使えるようになっています。基本的には、ITU-Tから新しい国際標準化に向けた募集を行い、各国の研究機関などが提案を行って、コンテストにより決定します。最近はコンテストではなく、最初から研究機関が協力し合って国際標準を作成する方法も取られているようです。当社を設立した頃は、G.729という規格の国際標準化が行われており、当社も日本の開発チームの一員として開発のお手伝いをしていました。その後、G.729が国際標準となり、誰でも使用することができるようになりましたので、我々としても新たな気持ちでG.729 のソフト 音や通信に関するハードウエア設計、ソフトウエア設計などを手掛ける日本キャステム株式会社。音声デジタル信号処理技術を活かして、通信関連機器だけでなく最近では防災関連機器にも事業の幅を広げている同社の概要と製品などについて、代表取締役 青木 実 氏にお話を伺った。日本キャステム株式会社代表取締役青木 実 氏音声デジタル信号処理技術を活かした組込みシステム開発~通信関連機器から防災関連機器まで幅広く展開~ウエアライブラリを開発し、さらにボード製品としても発売していきました。 ひとたび音声コーデックの製品販売を始めると、お客様からはG.729以外の音声コーデックも使いたいという要望を頂き、徐々にラインアップが増えていきました。それと並行して、カナダにある特許のパテントプールの企業と代理店契約を行い、ソフトウエアライブラリと共に、面倒な特許ライセンス契約のサポートサービスを行い、ワンストップでソリューション提供できるような体制を整えていきました。G.729は、IP 電話やスマートフォンの通話アプリなどで使われていますが、あと数年で特許が切れると、さらに広く使われるようになるのではないかと思います。 また、インターネットの普及が進む中で、音声コーデックと共にエコーキャンセラ、ノイズキャンセラ、話速変換といった技術の開発も並行して行っていきました。エコーキャンセラは、テレビ会議、インターホンなど近接したスピーカとマイクを使用する拡声通話において発生する音響エコーを取り除き、スムーズな会話を行うために不可欠な技術です。ノイズキャンセラは、環境騒音などのノイズを含んだ音声信号からノイズ成分だけを取り除き、聞き易い音声を抽出する技術になります。話速変換は、デジタル信号処理によって声の高さを変えずに再生速度を変える技術で、人間の音声信号の周期性を利用しています。これらの技術は、単体でなにかを行うというよりは、システムの中のパーツというか素材的な役割で製品開発に活かされており、こういう技術を保有していることが当社の強みになっていると思います。 さらに新規事業として、緊急地震速報や緊急警報放送などに関する製品開発も行っています。緊急警報放送とは、津波警報などが発令された場合にラジオを自動的に起動させる仕組みで約30 年の歴史があります。いままでも、自動起動に対応した防災ラジオは販売されていましたが高価なものが多く、普及があまり進んでいませんでした。もし、これが低価格で提供できるようになれば普及も進んでいくのではという仮説のもとに、スタートした事業になります。緊急警報放送では、非常時にラジオを自動起動させるために、各放送局から「ピロピロ」というFSK変調の信号音が流れます。当社は、この信号音を検出するためのデバイスを開発しました。非常に、低コストのデバイスで実現する演算方式がポイントになっており、特許も取得しています。そして、同じ低コストデバイスで緊急地震速報を知らせる「ピロンピローン」というチャイム音を検出することにも成功し、地震と津波を知らせてくれる防災ラジオが完成しました。開発に当たっては、NHKや気象庁の関係者から大きなご支援を頂きました。 防災製品を開発する企業として、自らの社員の安全を確保するための災害対策にも取り組み、さらにお客様には当社の製品を安心して使い続けて頂くために、「事業継続マネジメント・システム(公共緊急放送受信システムの保守サービス)」を構築し、防災機器メーカーとしては日本で第一号の国際規格「ISO22301」の認定を取得しました。(写真1)。 音声コーデックなどの技術を活かした 御社主力製品についてお聞かせ下さい青木:まずは、組込み用のボード製品からG.729AnnexA 変換モジュール『VUD-35G』を紹介します(写真2)。この製品は、8kbps の音声コーデックITU-TG.729AnnexAを2チャンネル搭載したVoIP 用音声変換モジュールです。声の入出力は、アナログインタフェースで行います。揺らぎ制御機能により、VoIPなど伝送路にゆらぎのある環境でも遅延の少ない良好な音声を再生でき、オプションでノイズキャンセラ、シリアル通信方式、I2Sインタフェースなどの各種カスタマイズにも対応します。また、ITU-T G.729 の特許使用料は本製品に含まれているので、ライセンス契約の写真1 国際規格「ISO22301」の認定写真2 G.729AnnexA変換モジュール『VUD-35G』