ブックタイトルメカトロニクス3月号2014年

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概要

メカトロニクス3月号2014年

MECHATRONICS 2014.3 51<図1>「上郷開発計画」~開発前後の景観(2)市街化調整区域を市街化区域に変更する悪例 市街化調整区域を都市計画提案制度(後述、(都市計画法 第21 条の2))によって市街化区域に変更して都市開発をおこなった例は全国で1 件もない。本件は極めて悪しき前例となり、全国の市街化調整区域の緑地が破壊される危機が生じる。■都市計画提案制度について 「上郷開発計画」で争点になっている都市計画提案制度については、以下のように説明されている。(1)本制度の概要 都市計画提案制度とは、2002 年における都市計画法の改正及び都市再生特別措置法の制定で創設された都市計画に関わる制度である。土地の所有者やまちづくりNPO等あるいは民間事業者等が、一定規模以上の一団の土地について、土地所有者の3分の2 以上の同意等一定の条件を満たした場合に、都市計画の決定や変更の提案をすることができる。提案を受けた地方自治体は、遅滞なく、計画提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要があるかどうかを判断し、決定又は変更の必要があると認めるときは案を作成しなければならない。一方、都市計画の決定又は変更の必要がないと判断したときは、あらかじめ都市計画審議会に計画提案を提出してその意見を聴いた上で、決定しない旨とその理由を提案者に通知しなければならない。(2)提案に必要な条件 本制度の提案を行う場合には、次の条件が満たされる必要がある。・0.5ヘクタール以上の一体的な一団の土地であること・「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」など、都市計画に関する基準に適合していること・提案区域内の土地の所有者等の3分の2以上の同意(人数と面積)があること。(3)提案に必要な書類 提案を行う場合には、次の書類が必要である。・都市計画の素案(区域を示す図面等)・土地所有者等の同意書・周辺環境への影響に関する調書       ・地権者及び周辺住民等への説明に関する調書(4)本制度の問題点 都市計画提案制度によって行政主導でない民意を反映したまちづくりがすすめられるのではないか、という期待もあるが、大企業にとって都合のいいように用途などの緩和を提案される危惧がある。(以下、次号に続く) (2014.1.20 記)<参考資料>1)横浜市栄区役所・横浜市都市計画局:「栄区まちづくり方針~横浜市都市計画マスタープラン = 栄区プラン =」(2004年12月)2)上郷開発から緑地をまもる署名の会:「ホタルの里・瀬上を守ろう!」(2008 年8月改訂)3)上郷開発から緑地を守る署名の会:「上郷開発予定地緑地の全面保全を求める陳情書」(2007 年12 月3 日)4)横浜市埋蔵文化財調査委員会:「横浜市栄区上郷町 上郷深田遺跡 発掘調査概要」(1988)5)横浜市栄区役所・横浜市都市計画局:「栄区まちづくり方針 =横浜市都市計画マスタープラン~栄区プラン =」(2004年12月)6)関連ホームページ6-1)東急建設(株)http://const.tokyu.com/topics/topics_08.pdf6-2)「上郷・瀬上の自然を守る会」、「上郷開発から緑地を守る署名の会」http://segamizawa.blog54.fc2.com/6-3)「ホタルのふるさと瀬上沢基金」http://www.segamikikin.org/■横浜市長に宛てた陳情書「上郷開発から緑地を守る署名の会」は、2007 年12 月に、当時の横浜市長であった中田宏氏宛に以下の内容の陳情書を提出している3)。(1)陳情項目①「上郷開発計画」における計画予定地の緑地を全面保全することを求めます。②豊かな自然緑地の破壊・貴重な動物植物の減少・文化遺産の破壊・風水害の発生・交通渋滞の発生・良 好な住環境の破壊を伴う本計画の中止を求めます。(2)陳情理由 2007 年9 月10 日に、15,527 名・9 団体の署名を添えて提出した「陳情送第12 号」に対しまして丁重なる回答を頂き、また議会や委員会におきまして上郷開発に関して多くの議論がなされました事に感謝申し上げます。 その後も住民・市民の関心が強いため引き続き11 月末まで署名活動を行い、72,736 名( 累計で88,263 名)の署名が集まりましたので再度陳情する次第であります。 「上郷開発計画」による環境破壊は、178,000m2の緑地破壊、1,100m3 の樹木伐採、樹木の伐採量は50 万本植樹に相当し、年間4,500 トンのCO2を吸収する緑地の破壊に匹敵し、商業施設から発生するCO2 は年間8,000トン以上と見込まれます。また瀬上沢一帯は、シンボルであるホタルをはじめ、多くの希少種を含む多様な生きものによって構成される豊かな生態系をもった谷戸であります。予定地には世界的にも貴重な貝化石の露頭や古代の製鉄遺跡、江戸時代の横堰などの文化遺産があります。この自然豊かな環境と文化遺産を破壊してしまえば人間の手で再生することは不可能です。 上郷開発計画は「栄区マスタープラン」1)との矛盾、いたち川流域の氾濫懸念、大規模商業施設への車の増加による深刻な交通渋滞、住宅街と大規模商業施設を直結する道路による住環境の破壊などさまざまな問題を含んでいます。 一方、開発による利便性の為に商業施設・住宅・道路が必要との説明もありますが、既に港南台付近には充分な商業施設があり新たな商業施設を必要としていません。また人口減や都心部への人口回帰等により多くの空き住居の存在が指摘されている今、横浜市有数の緑地を破壊してまで建設する時代ではありません。さらに都市計画道路舞岡上郷線の拡幅についても、終端である環状4号線光明寺方面の拡幅の計画が無い現状では、4 車線化の必要性は少ないと考えられます。 地権者の権利保護については、公的に所有する土地との等価交換や、市民トラスト、緑地債の発行等で買い上げるなどの補償の方法があると考えます。 横浜市では「水と緑の基本計画」「緑被率の向上」「150万本植樹行動」「市街化調整区域のあり方」「環境行動都市宣言」等、多くの環境保護への取組みをしています。しかし開発による環境破壊はこれを上回り、温暖化は地球規模で進行し、異常気象は年々増加しています。1997 年の京都議定書から10 年、CO2削減は主催国日本が守れず増加の一途であり、最新のIPCC報告は「私たちの孫の時代には地球環境が危機的状況になる」と報告しています。 「これくらいなら影響がない」「今回だけは良いではないか」「今までの経緯があるから」等の理由で開発を許していったら、環境は悪化の一途をたどります。緑地が次々と失われてゆき緑被率が年々低下していく中で、市街化調整区域の果たす役割は極めて重要であります。いまこそ思いきった施策を実行に移す時です。いま目の前にあるこの大型開発計画による緑地破壊を止める事が、市民からも地球からも求められているのではないでしょうか。 今回、短期間で約90,000人もの署名を頂いた事で、「瀬上沢を守りたい、緑地を守りたい」という市民の関心が非常に大きいことを私たちは実感しました。この力をもってすれば、市民トラスト等の方法で買い上げ資金コストの一部を負担する事も可能です。また署名に参加した多くの市民やボランティア団体と力を合わせれば、この文化遺産・里山・湿地を保全していくために、維持管理や費用の捻出について協力することも可能です。瀬上沢を円海山周辺緑地保全の前線基地として市民と行政との協働で守っていきたい、と私たちは考えています。 私たち市民の意思を署名の形にまとめ提出しましたが、この瀬上沢の緑地を守るには政治・行政の責任と指導力が極めて大きいと言えます。今環境保全のために投資しなければ、将来何倍もの財政負担になることは必至です。 横浜市は真の環境行動都市として、地球温暖化防止の先頭に立ち、この貴重な瀬上沢緑地保存の道を探るべく、まずは事業者(地権者)に対し土地の等価交換・買収等の意志を示して頂きたいと存じます。 以上をもって、「上郷開発計画予定地の緑地の全面保全と本計画の中止を求め、署名を添えて貴職に陳情いたします。■「上郷・瀬上の自然を守る会」 「上郷・瀬上の自然を守る会」(代表者:山仲章介)は、「上郷開発計画」の問題を取り上げ自然環境と住環境を保持する組織活動を行うために2011 年に設立された。現在の「上郷開発計画」の問題点について、山仲氏は次のように分析している。(1)緑地を破壊する開発による悪影響 開発計画が実行されることになった場合、開発による損失は緑地の喪失による環境問題への影響ばかりではなく、派生する住環境の悪化を含め多面的に影響を及ぼすことを考慮して慎重な評価が必要である。・生態系の保護・文化遺産の保全・巨大スーパーマーケットの進出からの既存商店の営業活動保護・道路交通渋滞増加への充分な配慮・署名運動、公聴会、陳情書、公開質問状等に反映される民意の尊重6-2)