ブックタイトルメカトロニクス10月号2013年

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概要

メカトロニクス10月号2013年

MECHATRONICS 2013.10 51はGDPの1%程度であり、温暖化対策においては早期に行動することで経済影響が小さくなると結論づけられている”(p35)。(10)森林の減少と生物多様性の損失 “森林は、世界の陸地面積の約3割を占め、陸上の生物種の約8割が生息・生育していると考えられているなど生物多様性の保全を図る上で重要な役割を果たしている。また、水源かん養、洪水緩和、二酸化炭素の吸収による地球温暖化の防止に加え、食料や木材のほか、レクリエーションの場や観光資源を提供するなど我々の生活をより豊かにする機能をもっている。 しかし、世界全体の森林面積は、農地や宅地の開発に伴う伐採、気候変動、環境汚染などにより減少していく傾向にある。持続的でない森林管理や気候変動、森林火災等による森林の減少・劣化は、地球温暖化や砂漠化の進行だけでなく、生物多様性の損失も含めた地球規模での環境問題をさらに深刻化させるおそれがある。 TEEB注9()生態系と生物多様性の経済学)によれば、世界の森林喪失から生じる生物多様性と生態系サービスの便益喪失は、総額で年間2~5兆ドルに上ると推計されている”。(p35、36)注9)生態系と生物多様性の経済学:(The Economics of Ecosystemsand Biodiversities、TEEB)生態系と生物多様性のもたらす経済的価値への理解を深め、価値を適切に計算するための経済的ツールの提供を目指した研究。国連環境計画の主導のもと、ドイツ銀行のエコノミスト スクデフ氏を研究リーダーとしてドイツ政府が中心となり実施。2010年の生物多様性条約締約国会議(COP10)において最終報告書が発表された(p395)。 “また、OECDによれば、生物多様性の喪失を拡大させる主な原因として、土地利用の変化、気候変動等が挙げられており、世界全体では、2050年の陸上の生物多様性が、2010年比でさらに10%減少すると予測されている。”(p36)(以下次号に続く)(2013.8.16記)<参考資料>1)環境省編:「平成25年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」日経印刷(株)(2013.6)http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/2)Donella H. Meadows, Dennis L. Meadows,Jorgen randers,William W. Behrens III:「The Limits to Growth - A Reportfor THE CLUB OF ROMES Project on the Predicament ofMankind」Universe Books(1972)3)<参考資料2)>の日本語訳 ドネラ・H・メドウズ他、(監訳)大来佐武郎:「成長の限界~ローマ・クラブ『人類の危機』レポート」ダイヤモンド社、( 1972)4)Donella Meadows, Jorgen Randers and Dennis Meadows:「Limits to Growth - The 30 Year Update -」Earthcan (2004)5)<参考資料4)>の日本語訳 枝廣淳子訳:「成長の限界 =人類の選択=」ダイヤモンド社(2005)6)OECD:「OECD Environmental Outlook 2050」(2011)7)IPPC:「Climate Change 2007 = The 4th AssessmentReport of the IPPC =」IPPC(2007)8)<参考資料7)>の日本語訳 IPPC編、文部科学省。経済産業省・気象庁・環境省訳:「IPCC地球環境第四次レポート = 気候変動2007」中央法規出版(株)(2009)9)Sir Nicholas Stern:「 The Economics of Climate Change(気候変動の経済学)」(Stern Review)(2006)(「気候変動と経済」とも訳されている。) “第4条 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。”(4)ハーマン・デイリーの3原則 現在の経済社会は地球環境に負荷をかけながら成長してきた。このままでは、いずれ大きなコストとして跳ね返ってくるおそれがある。 経済学者ハーマン・デイリー(Herman Daly)は、物質とエネルギーを利用する上での、3つの原則を示した注7)。注7)ハーマン・デイリーの3原則: Herman Daly:「Toward SomeOperational Pinciples of Sustainable Development」EcologicalEconomics 2(1990) (ドネラ・メドウズ他、訳・枝廣淳子訳「成長の限界 = 人類の選択 =」ダイヤモンド社、(2005)の引用文を参照)①土壌や水、森林、魚などの「再生可能な資源」を利用する速度が、再生する速度を超えてはならない(漁業の場合では、魚を獲る速度が、残りの魚が繁殖して元に戻る速度を超えない状態)。②化石燃料、レアメタルなど一度採掘すると元には戻らない「再生不可能な資源」については、別の「再生可能な資源」に転用される速度以上に利用してはならない。③環境汚染物質を排出する速度が、地球が浄化し、無害化する速度を超えてはならない(下水を流す際には、分解するバクテリアが増えすぎて生態系を破壊するなどの不安定な状態にならないようにしなければならない)。 こうした考え方に従えば、GDPを尺度として経済成長を目標にした社会から、環境問題も解決する持続可能な社会へシステム転換することによって、地球環境を維持しながら、同時に経済成長も実現できる可能性がある。そうした持続可能な経済社会システムの構築を目指す取り組みが、現在、国際的に進められている。(5)「成長の限界」の30年後の問題提起 ローマクラブのメンバーだったメドウズらは、2004年に出版した著書4)の中で「成長の限界」を振り返り、「豊かな土壌、淡水等の再生可能な資源を酷使しつつ、化石燃料や鉱物等の再生不可能な資源が減少する中で、地球が受容できる以上の排出を続ける限り、現在の経済を維持するために必要なエネルギー等のコストが高くなって、経済を拡大させることが困難になるだろう。」と再び警鐘を鳴らし、社会の持続可能性を高めるよう提言している”(p34)。(6)OECDによる未来予測経済協力開発機構(OECD)は2011年に報告書「OECD環境アウトルック2050」を発表し、今後の経済社会と環境問題の未来予測について概観した6()写真3)。 同報告書についてのOECDの説明によると、 “次の40年がもたらすものは何か?”を問うもので、OECDとオランダ環境評価庁(PBL)が共同作成したシミュレーションモデルに基づき、現在から2050年までの予測を行い、世界がより意欲的な環境政策を講じない場合、その長期的な人口動態と経済動向が環境にどのような影響をもたらすのかを示す。”とのことである。その概要の一部は以下の通りである(p34-37)。①世界人口 “2010年から2050年までに、世界人口は約70億人から約90億人以上へと増加し、世界経済の規模が4倍近く拡大することが予測されている。”(p34)②人口及びエネルギー利用の増加による地球温暖化の進行 “人口増加と経済成長に伴う生活水準の向上により、エネルギー、食糧、天然資源への需要も増加し、それがさらなる環境汚染につながる可能性がある。 世界がこのまま意欲的な環境対策を行わない場合、世界の一次エネルギー使用量は、新興諸国の化石燃料使用を中心に2010年から2050年までに80%増加する可能性がある。エネルギー関連のCO2排出量が70%増加することが主な原因となり、世界全体の温室効果ガス排出量は50%増加する可能性があると予測されている”(p35)。(7)IPCCによる地球温暖化の予測 “地球温暖化に関しては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、各国の政府から推薦された科学者の参加の下、地球温暖化に関する科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、現状の分析と今後の予測について、数年おきに評価報告書を公表している。第4次報告書は2007年に公表され、2014 年には第5 次報告書が発表される予定である。第4次報告書7、8)では、温室効果ガスの排出が、現在以上の速度で続いた場合、21世紀には1.8~4.0度の温度上昇が起き、海面が0.18~0.59m上昇すること、世界の自然・気候システムに多くの変化が引き起こされること、また温室効果ガスの排出量を減らし地球温暖化を緩和するためのマクロ経済的コストは、一般的に気候を安定化させるための目標達成が厳しくなればなるほど増加すること、などが予測されている。(8)国連難民高等弁務官事務所による環境難民の予測 “国連難民高等弁務官事務所注8)によれば、海面上昇に伴い、海抜高度の低い太平洋上の島嶼国など気候変動によって現在の居住地を離れなければならなくなる環境難民が全世界で2億人にのぼる、と予測されている”(p35)。注8)国連難民高等弁務官事務所:(Offi ce of the United NationsHigh Commissioner for Refugees、UNHCR):世界各国にいる難民の保護と支援を行う国連機関。国連総会によって1951年に創設され、ジュネーブ(スイス)に本部を置き活動。緒方貞子は1990年~2000年に第8代の高等弁務官に就任した。(9)地球温暖化に関する経済学的な分析 一方、地球温暖化に関する経済学的な分析としては、2006年に英国の経済学者ニコラス・スターンが公表した「気候変動と経済」に関する報告書(スターン・レビュー)がある9)。 この報告書では、気候変動に伴う農業・インフラ・工業生産などに対する経済影響を、世界全体の総GDPベースで算定している。 具体的には、気候変動の被害損失が将来的にはGDPの5~20%になると見積もっている。一方、現時点で気候変動に関する対策を行った場合のコスト<写真2> ブルントラント委員会の報告書の日本語訳「地球の未来を守るために」<写真1>「 成長の限界」(The Limits to Growth)の表紙<写真4>「スターン・レビュー」の表紙<写真3>「OECD環境アウトルック2050」の表紙