ブックタイトルメカトロニクス6月号2013年

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概要

メカトロニクス6月号2013年

52 MECHATRONICS 2013.6《第50回》2 設計から始めよう(その48)表2-41 回折格子を活用した分光器2-105)表2-40 構造干渉色を活用した製品例 2-104)5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その9) 液晶表示板に用いられる回折シートを理解するために、予備知識として波動光学―その中で光の干渉や回折を概観してきた。今回は干渉現象や回折機能を活用した製品の事例を見ることにする。こうして応用例を広く学習すると、当面の課題も確実に認識できるようになるからである。 まず、光線干渉(既出表2-35)の作用が体得できる身近な物理現象として、薄くなった液膜で外光を干渉発色させているシャボン玉がある。膨らみながら萎みながら液膜の厚さが次第に変化するので、鮮やかに色彩を替えてゆく。シャボン液は無色透明であるから薄膜構造による干渉色であるが、外光を取り込んだ透過型干渉なのであろうか、または外光を跳ねた反射型干渉なのであろうか。悪戯として墨汁液でシャボン玉を膨らましてみた。膜はあまりにも薄くて黒色には見えなかった。無色透明な玉は風に吹かれ、落ちた個所には濃黒のしみが残った。 自然界では、干渉色を身にまとった生物が生息している。最近は身近に見られなくなったが、甲虫類タマムシの羽根は多層膜の構造で、光干渉により文字通り赤・緑の玉虫色に光る。魚類の秋刀魚や鰯の体表は板状結晶と細胞結晶とが積層した構造で、銀色に光が干渉する。これらの例よりも素敵なのは、南アメリカのアマゾン河流域に生息するモルフォ蝶の翅。鱗粉表面に刻まれた格子状構造により光線がブラッグ回折し、鮮明な青色に輝いている姿だ。 これらの現象を擬して、無染色でありながら神秘的な発色をする繊維を発明した技術として、干渉発色繊維および干渉発色構造体がある(表2-40)。ポリエステル(屈折率:1.60)とナイロン(屈折率:1.53)の屈折率が異なる有機系材料を多重積層した構造で、観視方向により干渉光は赤・緑・青・黄と多様な色に見える。この構造を製造可能にした要素は、繊維を紡糸する口金の構造である。実に繊細な仕組みだ。ここで蛇足だが、ポリ弗化ビニリデント繊維は屈折率が低く1.42であり、水(屈折率1.33)中では透明に見えるので、釣り糸に使われている。 分光器は、可視光や視外放射をスペクトルに分散し、波長成分を測定するのに用いる装置である。形式には、プリズムを用いた透過式分光器と、位相変調式(体積型)回折格子を用いた透過式分光器または反射式分光器がある。分光器として汎用されるものは反射式回折格子である(表2-41)。ローランド型分光器は、幾何学的な固有の性質により円周上での点が成す円周角と中心角とが一定の比1:2であるのを活用して、凹面反射式回折格子を照射スリットや受光板と同一の円周上に配置している。これらの要素が円周上のどこにあっても射出光線は必ず受光部に入射する。ツェル=ターナー型分光器は平面反射型回折格子を用いて点光源からの光線束を放物面鏡で平行光線束に矯正して照射している。分光器の格子基板は溝形状が正弦波状格子やラミナー(方形)格子あるいはブレーズ格子である(既出表2-33)が、ブレーズ形式が最も高い回折効率をもつ。格子間隔は600~2,400本/mm。波長分解能λ/⊿λは一般に103で、104以上の高分解能のものも実用されている。 屈折光学系には機能上の癖、つまり収差が付きまとうので、結像性能での欠陥を完全には回避できない。比較的良好な機構をもつ人体構造においても、眼球の光学性能は不十分なのである。視野でピントが合うのは網膜の中心部分でしかない。屈折光学系において単一な波長でも起こり得る単色収差は、入射光線束が像面上で一点に収束しない現象であり、および色収差はその光の波長が複数存在する場合に発生する光線のずれである。モノクロ印刷であっても撮像光線が多色ならば色収差は起こる。単色の場合には、色収差はない。 鏡筒内にレンズを単純に並置した光学系では色分散性が必ず残るので、そのレンズとは正反対の光学性質を有するレンズを貼り合わせれば、色収差を相殺できる。これを色消しレンズという(表2-42)。あるいは屈折率などが同質のレンズであっても、レンズ間隔を適切に設定すると、色分散を解消した接眼レンズが設計できる。大径レンズほど収差が大きく現れるので、色消しレンズは大きいレンズの位置で置換すると効果があがる。 さて、屈折光学素子による色分散とは正反対の光学性質を有するのが、回折光学素子である。色消しレンズが貼り合わせレンズ構成であるように、屈折光学素子と回折光学素子とを積層させると色収差を解消できる。屈折光学素子だけでは赤-緑-青の順に光線が偏角するが、回折光学系では青-緑-赤の逆順になり、複合すると相殺されるからである。回折格子が単層の場合では不要な回折光線を除去できないので、2層または3層に重層化している(表2-43)。位相型回折格子はレンズの中央部から中間帯へそして周縁輪帯に従い、鋸歯状溝筋の間隔が細かく線刻されているで、軸上光線よりも軸外光線のほうが大きく偏角する。この機能を上手に活用すると、非点収差をも解消でき