メカトロクス12月号2011年

メカトロクス12月号2011年 page 53/60

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MECHATRONICS 2011.12 5332は“全反射補角“とすべき。反射にしろ屈折にしろ、光線の挙動は境界面の法線方向を基準に表現すべきなのだ。 光学をこれから勉強しようとするとき、奇異な用語に突き当たる。“入射”に....

MECHATRONICS 2011.12 5332は“全反射補角“とすべき。反射にしろ屈折にしろ、光線の挙動は境界面の法線方向を基準に表現すべきなのだ。 光学をこれから勉強しようとするとき、奇異な用語に突き当たる。“入射”に対する“射出”はJIS 用語に用いられているが、最近の文献では“出射”が流行している。言葉は時代の流れ。個人の嗜好では如何とも成し難い。“入光”とか“出光”の用語は単刀直入な表現だ。シート類の機能に関して言えば、“偏角”、“偏向”、“変向”、“偏光”、“変更”、“偏項”、“導向”など同音類似語/異義語が散乱している。これらの言語を活用する対象はそれぞれみな異なる。もちろん作用効果も差がある。誤った解釈は正常な思考を混乱させるから、技術者たるもの心して精進しよう。 私の開発が先をほぼ見通せるようになった数年後、隣国を頻繁に往復している自称プラスチックコンサルタントが来訪された。宣伝をかねた彼の論文集は凄い。導光板からの放出光線は回折作用で強調される・・・板面に敷設される微細突起粒は富士山型とか屋根型などの形態は輝度の強調に効果があると、工夫の数々が記録されていた。そして特許も出願したと得意満面。でも導光板のパターン設計ができないからといって、後発だった私を訪ねてきたのだ。彼ばかりではない。多くの人々が隣国からも来駕された。一体どういう現象なのであろうか。彼らに共通するものは、他人の意見を生飲みし、自己陶酔しながら思考の淵に漂ってしまった心境だった。ⅱ シートを積層したバックライト構成 電気生産分野で液晶技術が開発されているとはいえ、バックライトは光学部材の一種である。光学技術を習得してからその基礎にたって開発に着手したほうが、回り道をしなくて効率が良い仕事になる。 そこで、バックライトの構成を敢えて光学用語に固執した名称で図化してみた(図2-151)。そしてこれらシート類の機能を私なりに解釈してみるのである(表2-6)。 このように多数枚のシートを重塁する理由は、導光板だけでは照明光線を液晶パネルの方向へ放出できないからである。導光板の表裏面から放出される光線を測定してみると、驚くような配光特性である(図2-152)。放出方向は導光板に貼り沿うように傾斜している。特に放出素子を敷設した裏面からの漏洩光量が多い。放出素子の模様を書き換えても漏洩の量は少なくならない。裏面に放出素子を形成した反射方式であろうと、表面に敷設した屈折方式であろうとも、あるいは放出素子の模様や敷設場所によっても、放出光や漏洩光の光量や方向は千差万別に変動する。測定のために、反対側に黒色シートや白色シートで被覆してみると、光の強さは格段に変わる。機能性シートで導光板の表裏面を被覆することにより放出光線は漸く法線方向へ偏角してくれるのだった。 重塁されるシートの枚数が夥しいばかりではない。その製造価格はバックライトの中核部材である導光板よりも高価なのである(図2-153)。導光板の価格が18%に対して、バックライトユニットに占めるシート類の価格構成は55%である。2-77) シート類を節約するために“シートレス化”の要望が叫ばれてから久しい歳月が流れた。枚数を半減できたが、完全に皆無にするまでには至っていない。ⅲ シート類の呼称 さて、薄葉部材の呼称を“フィルム”とか“シート”とか、あるいは“板“と呼んでいるが、どのような差異があるのだろうか。JIS 規格「プラスチック用語」を紐解いた(表2-7)。さらに理解しやすいように図表で表現してみた。薄い物とやや厚い物とは二つの群に分かれ、きれいに仕分けされている(図2-154)。フィルムとシートとを区別している板厚は、日本では一般にほぼ0.2 mmであり、欧米では0.25 mm=10/100 インチ= 10mil 以下のものをフィルムというらしい。そしてこのJIS 規格での英語表示は「~ sheet」または「~ board」であるが、日本の正式名称は「~板」または[~ボード]と表現されている。 こうした図表を描いてみるのも、部材に対する知識を確認するのに役立ちそうだ。開発は真剣勝負である。どのような些細な事項にも見逃さず一閃に創意工夫を加える。もう一息という所でとどめを刺して、一歩々々制覇してゆこう。《 迷雲を払って 真月を見よ 》井上圓了(1858―1919 仏教哲学者・教育家)【参考文献】2-77) 井上弘「LCD バックライトの光学と品質」メカトロニクス2007.10( 技術調査会)2 設計からはじめよう(その31)表2-7 プラスチックの形状・特性(JIS K 6900 プラスチック用語による)図2-154 シート類の板厚(JIS規格を図化)