ブックタイトル実装技術6月号2021年特別編集版

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概要

実装技術6月号2021年特別編集版

57 そこで、ITOに替わりうる新しい材料と加工技術の実用化が待たれているが、厚膜印刷技術が有力候補になってきている。4. 透明基材 透明なフレキシブル回路を作るためには、まず、透明な基材が使えることが前提になるが、現在耐熱性のあるフレキシブル基板の基材として使われているのは、ほとんどがポリイミドフィルムであり、柿色(いわゆるポリイミド色)を呈しており、無色透明には程遠い。 これまで、透明なフレキシブル基板といえば、耐熱性の低いPETフィルムでなんとか間に合わせてきたような経緯があり、耐熱性のある透明プラスチックフィルムを、積極的に実現しようとする動きはあまりなかったといってよい。 しかしながら、この数年、ウエラブルデバイスやメディカルデバイスの広がりに伴い、耐熱性と透明性を併せ持つ新しい基材が使えるようになってきている。 ただし、それぞれの材料の特徴は一長一短で、コストも含めて考慮すると、全ての面で優れた性能を持つ素材はなく、用途からの要求や、加工工程の都合に合わせて、材料を選ぶことになる。表1は、候補となる材料を比較して見たものである。 この中で、ちょっと異質な存在が、 まったく無機質な材料であるガラスである。ガラスといえば、硬い材料の代表格ともいえる存在であるが、厚さを25ミクロン程度まで薄くしてやると、鉛筆に巻き付けられるほどのフレキシビリティを持たせることができ、表面に適当な処理を施せば、耐折性も大幅に改善することができる。 一方で、ガラスは酸化珪素という無機材料であるために、有機化合物であるプラスチック材料に比べて、耐熱性や、寸法安定性は、桁が違うほどに優れている。このため、無機の厚膜印刷インクを適用できる可能性がある。5. 透明な導体材料と加工プロセス 透明なベースができれば、次はいよいよ透明な導体で回路を形成する段階へ進むことになるが、ベース材料を透明化するのに比べると、技術的な難易度は数段高いところにある状況である。一部の研究者からは、透明性と導電性とは両立しないのではないかという諦めの声さえ聞こえてきそうである。 さらに、フレキシブルな透明回路となると、ゴールはさらに遠いものになってしまいそうである。しかし、不完全ではある表1 耐熱性のある透明フレキシブル基材の比較(※評価は筆者の経験によるもので、使われ方により変わる可能性あり)■ コラム 透明とは? たいした説明もしないで「透明」ということばを使っているが、ちょっと突っ込んだ話をしようとすると、 なかなか難しい問題があり、それだけで何冊もの本が書けるほどである。一般的な認識としては、そのフィルムが「透明」ということは、可視光線が可視光線とは、 電磁波の1種で、波長が400 ナノメータから800 ナノメータ位のものを指している。人間の網膜は、波長が380 ナノメータから780 ナノメータ光に感じるとされており、波長領域としては、だいたいこれに一致する(人による差は、小さいとされているが、鳥類や昆虫ではかなり異なることが報告されている)。可視光線は、波長が長い方から、赤、橙、黄、緑、青、紫と色が変わり、これらの波長帯域よりも、波長が長いものが、赤外線、電波であり、短いものが紫外線、エックス線である。あるオプティカルデバイスを作ろうとした場合、そこで使われる光の波長がどの帯域に入るのか、確認しておくべきである。物質の光吸収性は、その物質の構造と深い関わりがあり、波長によって大きく違っている。多くのプラスチックは有機化合物であり、その分子構造により、特定の波長の赤外線を強く吸収する。これを逆用したのが、赤外線吸収スペクトルであり、わずかな量の試料から、その有機化合物を特定することができる。 一般的に、透明といわれる材料でも、広い波長領域に渡って均一な光吸収率を持つことはなく、材料に特有のスペクトルをもっているのが普通である。そのような特定の光吸収能力を持った材料を使って定量計測を行うセンサーなどを作るにあたっては、波長に対する感度の補正を行う必要がある。