ブックタイトル実装技術9月号2020年特別編集版

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概要

実装技術9月号2020年特別編集版

25チメーターで電位差を1 秒間隔で測定した(図2(A))。相補的配列の10 塩基DNA(Match DNA)と1 塩基だけ配列の異なるDNA(Mismatch DNA)を添加した時の電位差は、図2(B)のように明らかに差があった。このようにして1 塩基の異なるDNAが検出できた。4. 体液中の乳酸を測定するセンサ 乳酸は汗などの体液に含まれている代謝物質で、筋肉の疲労度と関係がある。この乳酸濃度を、印刷による有機半導体のアナログ回路を用いて定量的に測定するシステムを開発した。 まずPENフィルム上にインクジェット印刷により銀電極を形成し、つぎにメディエーター層としてプルシアンブルーとグラファイトの混合インクを銀電極上に塗布した。図3(左)に電極構造を示す。 テフロンの障壁を形成した後、乳酸酸化酵素とキトサン(固定剤)の混合インクを塗布した。乳酸が酵素によって酸化された時、過酸化水素が発生する。これがプルシアンブルーを還元して酸化体に変わり、カーボンから電子を受容するため、最下層の電極に電流が流れる。この電流値は乳酸濃度に比例し定量化できる。 図3(中)はプラスチック上に印刷された有機半導体トランジスタで、その特性は図3(右)のようになっており、移動度は1.3cm2/Vsとアモーファスシリコン薄膜トランジスタと同程度であった。 図4(左)は、印刷法OTFTでフィードバック制御部と検出部の回路を製作した。乳酸センサ部は、作用極表面の酵素反応によって生じる電流を検出するもので、図4(左)のように作用極/参照極/対極に、有機半導体で作成したインバータ回路を接続したシステムを作成した。乳酸濃度を0mM(Mはmol/L(リッター)のこと)から、0.5mMまで変化させ、それに応じた出力電圧は図4(右)のグラフのように変化した。本システムは酵素反応を利用するあらゆる電気化学センサに適用可能であり、印刷有機回路によるウエアラブルセンシングデバイスへの応用が期待される。5. 立体曲面上のタッチセンサ 人と協同するロボットでは、安全性の点からロボット表面がソフトであることが必要であり、そこに各種のセンサを搭載することが要求される。時任研では、柔らかい曲面上にインクジェット印刷で、タッチセンサを形成する技術を開発した。 図5は、タッチセンサの基礎データを得るためガラス基板上で容量の変化を測定するテストを行ったキャパシタの構造である。図4 乳酸を検出するセンシング回路と得られたデータ(資料は時任研のご提供による)図5 実験に用いたキャパシタの構造(図は時任研の資料を元に筆者が作成)図3 乳酸センサの電極構造、プラスチック上に印刷した回路、及び乳酸検出特性のグラフ(資料は時任研のご提供による)