ブックタイトル実装技術8月号2020年特別編集版

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概要

実装技術8月号2020年特別編集版

39 TSV の場合、基板とめっき層の間には一般的に三層の薄膜形成がなされる。まず一番下地には絶縁層、ついで銅の拡散を防ぐためのバリア層、最後に銅めっきの電極となるシード層が必要である(図2)。 ただ、必ずしも「共通」の層構成があるわけではない。TGVの場合、一般的なガラスは絶縁体であるため絶縁層は必要ないと考えられ、またビア内導電体としてタングステンやポリシリコン、あるいは導電ペーストを使用することで導電性は低下するもののCu 拡散バリア層が必要ではなくなる(Cuを使った場合でもアプリケーションによってはバリア層が必要なほど拡散はしないケースもある)。世の中には下地成膜をせず、触媒を付着させて直接めっきする無電解めっきというものも存在しており、膜の構成やプロセスはまさに千差万別である。 膜構成を決める上で重要なポイントが密着性である。特に平滑なガラス表面に対してのめっき層の密着性は一般に良くなく、接着層の成膜がひとつのカギとなる。 また成膜の難易度はアスペクト比と比例して上がる。TSV・TGVではビアのアスペクト比は大凡5?20程度と言われているが、このレベルではスパッタなどPVDではほとんどビア開口部周辺のみしか成膜されない(※)。CVDでは成膜はできるもののカバレッジがいいとはいえず、開口部から遠くなると顕著に膜厚が落ちる。(※)垂直ビアの場合。テーパー型などの場合にはアスペクト比が下がるため底部まで届きうるが、やはり奥に入るほど膜厚は大きく低下する。4. ALDによるビア成膜の特徴 ALD技術については本誌でも数回述べてきたが、以下に簡単に特徴を述べる。技術詳細については参考文献をご参照いただきたい。① 膜質が化学量論比に近く非常に緻密であり、ピンホールフ  リー② 素地への密着性が高い③ 複雑な3D形状物やナノスケール表面(高ARトレンチ・ナ  ノポアなど)へも均一に成膜できる④ 再現性の高いプロセスとして膜厚を厳密にコントロールで  きる⑤ 比較的低温での成膜が可能で、基板へのダメージを低減で  きる これらの特色のうち、ビア成膜に関しては特に③の高アスペクト比への均一成膜が強みをもつ。成膜可能なアスペクト比の大凡の目安では、PVD の場合は1、CVDでは10に対して、ALDでは100 以上(Picosun の装置では1000 以上も可能)である。またステップカバレッジも非常に優れており(図3)、CVDでAR10 未満でも50 %程度に対し、ALDではAR60で>90%というデータがある(※)。 まためっき下地として、②の密着性はきわめて重要であるが、ALDの場合、膜は基板表面に化学吸着(共有結合)するため密着力が高く、接着層としての使用には最適である。図3 ALDによるビア内成膜断面SEM写真