ブックタイトル実装技術8月号2020年特別編集版

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概要

実装技術8月号2020年特別編集版

21“手直し不要”を実現するはんだ付け専用ロボット【 メイコー“真”理論2.0】はんだ接合技術5 しかし時すでにおそし、そこから対策を講じても抜本的な改善は見込めない。これがX社ロボットの問題による盲点なのだ。その結果としてユーザーは日々対応に追われ、「今日は付いたけど、明日付くかどうか分からない」という状況に陥る。   原因はロボットです   ~X社ロボットの構造的問題~ 安定した品質と省人化を見込んでロボットを導入しても、うまくいかない。なぜなら原因は(X社製)ロボットに問題があり、はんだ付けの自動機として性能不足であるからだ。それではどこが問題なのか? 具体例を挙げて述べてゆく。 まず、前提として、メイコー以外のX社ではロボットの設計は行わず、市販の汎用ロボットを製品化している。 ここに構造的な問題が潜んでいる。つまり汎用ロボット自体の仕様制限により、はんだ付け動作への悪影響が生じている。その悪影響により、はんだ付けの安定化を阻害する結果となる。 ここではX社ロボットの具体的な問題点として3点を挙げて解説する。 (1) アームスピード不足 (2) ピストン構造によるこて先移動の制限 (3) こて先とはんだ送りの連動不足(1) アームスピード不足 こて先(ロボットアーム)は、高い移動速度や運動速度が求められる。その理由は、スピード不足の場合、はんだ付けポイント間の移動中にこて先の状態悪化を招くからである。 具体的には、こて先上のはんだの酸化や劣化が急速に進行してしまう。結果的に、はんだのぬれ性・切れ性が低下し、はんだ付け不良の要因となる。そのようなこて先では不良発生器と化してしまい、全ポイントにおいてはんだ付け不良のリスクをもたらす。 一方、こて先(ロボットアーム)のハイスピード化にはどんなメリットが生じるか? それは移動先のポイントにおいて、タイミング良くはんだ(フラックス)をこて先へ供給することができる。そして、フラックスの還元力により、こて先の状態は良好に維持され、高品質・高安定なはんだ付けをもたらす。 少々解説が長くなったが、X社ロボットにおいては、このアームスピードが不足している。 また、逆説的なようであるが、スペックだけを比べるとX社ロボットの方がはるかに高い。 じつは、ここにも盲点が潜んでいる。盲点とは、この数値は“最大速度”であるということだ。 一方、はんだ付けのワークエリアは200×200mm内など狭いエリアが対象となる。しかし、このエリアにおいてロボットアームは最大速度に到達することはない。つまり、着目すべきは最大速度ではなく、加速度・減速度などの機敏性なのである。 しかし、X社ロボットでは、アーム重量やモータの制限により、はんだ付けに適した機敏性を実現できていない。また、それらを改善したくても汎用ロボット(購入品)であるため、ハードウエアの改造は特に難しい。(2) ピストン構造によるこて先移動の制限 はんだ付けの際、こて先ははんだ付けポイント(パッドやスルー孔)へ移動する。こてのあて方・逃げ方など、移動ルートやスピードの設定はワークにより一様ではない。これらの合理性・効率性の追求が“条件出し(” ※)の鉄則となる。(※)“条件出し”の定義  こて先・はんだ・フラックスの選定から始まり、  こて先及びはんだ送りの動作(当て方/逃げ方/予熱加熱  /はんだ量など)の中から、     生産性・安定性・信頼性を兼ね備えたシーケンスを探求して  ゆく作業 しかし、X社ロボットではこて先の動きに制限が生じる。具体的には、X社ロボットに採用されるエアシリンダを用いたこて先のピストン構造が原因になる。 このピストン構造により、こて先のアプローチ(あて方/逃げ方)が単調な直線往復運動に制限される。これはロボットによる“条件出し”には大きなビハインドになる。結果、ワークに対して非合理・非効率なこて先の動きに制限される(図1)。(株)メイコー図1 X社ロボット : こて先の単調な直線往復運動