ブックタイトル実装技術7月号2020年特別編集版

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概要

実装技術7月号2020年特別編集版

5G通信の立ち上がりは大幅に遅れることは確実です。 しかし反面、在宅勤務の増大、リモート会議の普及、ゲームや動画需要の増加など通信トラフィックは急増し、今後も減ることはないでしょう。 この通信量の増大への対策として、5G通信は基盤インフラとなっています。 5G 通信は短期的には立ち上がり、普及は遅れますが、長期的には想定以上に普及するものと思われます。 また、早期に次世代6Gの議論が進むものと思われます。 (閑話休題)1. 誘電体のDkとDf それでは本題に。 誘電体の電気的性質として(比)誘電率(ε、Dk)と誘電正接(Dielectric Tangent/tanδ、Df)があります。 この2つの性質は共に電気双極子の振る舞いから発生しています。 金属などの導体では、負の電荷を持った電子が自由に移動できます。 この自由電子の移動が電流になります(図1)。 ところが絶縁体では、正電荷と負電荷が少し離れた位置で密接に結びついた状態で存在しています(図2)。 たとえば水の分子は?2価を持った一個の酸素イオンに+1 価の水素イオンが2個付いています。このため、電気的には中性ですが、酸素分子と水素分子の中心はずれています(図3)。これが「電気双極子」です。 正と負が常に結びついたついた状態で存在するので電気的には常に中性で、電流は流れません。つまり「絶縁体」です。 しかし、電気双極子は静止しているわけではなく電界(電場)がかけられると、双極子の正の電荷または負の電荷がかけられた電解によって移動(回転)します。 正と正、負と負、同じ電荷はお互いに反発し、正と負、負と正、異なる電荷はお互いに引きつけられます(図4)。 このために基板上で両面の銅箔間に電位差が生じれば、この電解により、誘電体内の電気双極子は方向が揃います(図5)。 両面の銅箔間の電位が同じ時には電界が生じないので、電気双極子は、各々自由な方向を見ています(図6)。 バラバラな方向を向いている双極子は電位に変化に対して同じ極と異なる極が平均的に分布しています。 信号変化が高速になると、この電気双極子の方向変化も高速になります。 この時、同極では、斥力が働き、信号変化を妨げる力が発生し、信号変化のエネルギーと変化速度を遅らせる働きをします(図7)。 この電気双極子の場による効果を表す係数が誘電率です。 場の効果の大きさはは2 乗平均根なので、損失や遅延に対して、√εで影響します。 また、電気双極子が回転するためにはエネルギーを消費します。 このエネルギーは信号変化の電気エネルギーから得られます。 つまり、配線を流れる信号の電気エネルギーが誘電体内の電気双極子の回転(運動)エネルギーに変換され、最終的には熱エネルギーに変わります。 この信号のエネルギーが電気双極子の運動エネルギーに変換される量が誘電正接量です。 なお、英語ではTangent (tanδ)で日本語では正接(Sinδ)と表現しますが、これは、前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図7 斥力とエネルギー図2 電気双極子図3 水の分子図4同じ電荷は反発、異なる電荷は引き合う図1 電子の流れ図6 基板上の信号と分子の動き(電位差がない場合)図5 基板上の信号と分子の動き(電位差がある場合)51