ブックタイトル実装技術7月号2020年特別編集版

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概要

実装技術7月号2020年特別編集版

361. はじめに 電気自動車や鉄道、航空機に適用されるような高電力密度のパワーデバイスは、ケースタイプの構造となっている。ケースタイプのパワーデバイスは、半導体チップ(ダイ)、ワイヤ、端子、ダイアタッチ材(はんだなど)、絶縁基板、ベース基板、絶縁基板-ベース基板接合材(はんだ)、封止材、ケース、TIM(Thermal Interface Material)などで構成されている。電気自動車の開発に牽引される形で、ケースタイプのパワーデバイスに要求される電力密度は増加の一途を辿っている。電力密度の増加は、半導体チップに高い発熱温度をもたらす。従って、パワーデバイスを構成する材料にはパワーサイクル耐性だけでなく、高い耐熱性も要求される。 前回は、当社で開発した材料評価用パワーデバイスを用いた材料性能の評価方法と、当デバイスの基本性能を解説した。本稿では、当デバイスを用いた具体的な評価事例について述べる。2. パワーデバイスの封止材 パワーデバイス構造における封止材の役割は、絶縁と内部構造の保護である。 高い絶縁性能を有することは当然ながら、機械的、化学的ストレスからデバイス内部を保護する性能をもち、さらには耐湿性、ガスバリア性を有することが望ましい。どのようなパワーデバイスに、どのような封止材が用いられるかは、パワーデバイスの電力密度に依存する。 「樹脂封止タイプ」と呼ばれるパワーデバイス、すなわち単体の半導体チップのみが組み込まれており、小型で、運用電圧が数V?数百Vのデバイスには、一般的にエポキシ樹脂が使用されている。 IC部品のパッケージに使用されるような「硬くて黒い」エポキシ樹脂を想像されたい。「樹脂封止タイプ」のデバイスは構造全体がエポキシ樹脂で封止される。内部構造の保護という観点に拠れば、構造全体を封止するに越したことはないし、また、トランスファーモールドなどの製造工程とも相性が良いためである。 他方、「ケースタイプ」と呼ばれるパワーデバイス、すなわち複数の半導体チップが組み込まれており、運用電圧が1kVを超えるデバイスには、エポキシ樹脂の使用は難しくなる。 パワーデバイスの発熱?冷却の過程で発生するデバイスの構成部材間の熱応力に対し、エポキシ樹脂では固すぎて追随できず、封止構造が損壊してしまうためである。そのため、「ケースタイプ」のパワーデバイスには、柔らかく、密着性に優れるため熱応力に耐える、シリコーンゲルが使用される場合が多い。 このような封止材による絶縁と内部構造の保護により、パワーデバイスの寿命は延びるように思われる。しかしながら、実際に「封止材が存在することによって、どれだけパワーサイクル耐性が向上するのか」という基本的な点を詳細に評価した事例はない。 未だ十分な技術的蓄積があるとはいえないパワーサイクル試験において、封止材間の性能比較以前に、このような基本的な点について知見を得ることは重要である。 そこで今回は、ケースタイプのデバイスを想定し、封止材の有無によるパワーサイクル耐性への影響についての評価報告を行う。パワーデバイスの信頼性評価の概要 ③?封止材のパワーサイクル耐性の評価?(株)ケミトックス / 住田 智希表1 材料評価用デバイスの構成材料