ブックタイトル実装技術5月号2020年特別編集版

ページ
26/34

このページは 実装技術5月号2020年特別編集版 の電子ブックに掲載されている26ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

実装技術5月号2020年特別編集版

401. はじめに このエレクトロニクス実装技術を手にとって読もうとしている読者であれば、プリント基板とか、フレキシブル基板というような単語に対して、さほど違和感はないであろう。いずれも現代の民生用電子機器、モバイル機器の配線技術にとして、極めて普遍的に使われているからである。通常、これらの配線材料は、薄い銅箔を化学的にエッチングして電子回路を形成している。 一方で、厚膜印刷回路という言葉があるが、こちらは、あまり一般的ではない。多くの読者は、その違いはおろか、初耳という方もおられるのではなかろうか。しかしながら、厚膜印刷回路という技術は決して新しいものではない。1970 年代には、すでに基本的な技術は確立されており、いくつかの分野においては大量に使われてきている。ただ、これまでは、主要用途が限られていたために、一般のエレクトロニクス技術者の目にとまることが少なかったのであろう。1980 年代~1990年代になると、生産量はそれなりに増えて、産業としてまとまった規模になってきたが、用途が限られ、専門メーカーの数もそれほど大きくならなかったために、一つの回路技術として産業統計などにおいても、認識されるに至らなかった。ところが、21 世紀になり、エレクトロニクス機器が多様になるにしたがって、厚膜印刷技術が改めて注目される存在になってきている。それは、従来の銅箔をエッチングする技術では実現が困難と考えられた回路構成が、厚膜印刷技術を使えば容易に実現できる事例が増えてきたためである。応用事例が増えると、その技術自身も進化してくる。もはや、かつての厚膜印刷回路技術とは、似て非なるものといってよい状況である。 そこで、今回から何回かにわたって、不定期連載という形で、厚膜印刷回路の初歩に始まり、最新の技術、さらにそこで使われる材料や製造装置について紹介していくことにしたい。2. 厚膜印刷電子回路の応用の広がり 厚膜印刷回路の技術が確立されたのは1970年代のことであるが、当初はセラミック基材をベースとして使う、ハイブリッドIC のような無機材料で構成されたものが中心であった(図1)。このような無機系の厚膜印刷回路は、耐熱性が高く、信頼性も高かったが、実用的な回路の大きさが限られており、製造コストもかなり割高であったために、用途は産業用や電子部品のパッケージなどに限られ、まとまった規模の産業に拡大することはなかった。 一方、有機材料系の厚膜印刷回路は、1980年代に入って大きな展開を果たすことになる。導体材料は依然として、もっとも導電性の高い金属銀の粉末が使われていたが、導体微粒わかりやすい厚膜印刷回路入門~初歩から最新技術まで~第1回 イントロダクションDKN リサーチ / 沼倉 研史図1 セラミック基板上に形成された無機厚膜回路ここで示されているサンプルは、最新の高密度印刷でつくられたもの(平井精密工業(株))