ブックタイトル実装技術5月号2020年特別編集版

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概要

実装技術5月号2020年特別編集版

341. はじめに LSIの微細化が原子のオーダーに近づくにつれ、集積度向上の指針となってきたムーアの法則の終焉が叫ばれてきた。次の発展として、微細化に依存しないでも、より高いレベルのデバイスを開発するのも重要なテーマとなっているが、いっぽう、生産が簡単で安価で、生活に密着したようなPrintedElectronicsが注目されている。図1は、プラスチックシート上に有機物による回路を形成したもので、フレキシブルである。 今回、Printed Electronics の技術開発において世界をリードしている山形大学の時任静士先生の研究室を訪問し、時任先生にお話を伺った。 今月は第1 回として有機トランジスタを取り上げ、第2 回から各種のセンサ、各種のデバイスを紹介する予定である。2. 有機TFTデバイス作成 印刷で回路を作成するには、トランジスタやその他の回路部品は印刷できる有機物であることが望ましい。有機物トランジスタ(以後、Organic Thin Film TransisitorをOTFTと略記する)について、巷に市販されている半導体入門書にはほとんど触られていないので、読者の皆様が十分な知識をもっておられないおそれがあるので、時任研の資料を参考にしながら解説する。1. 印刷可能な有機物半導体 有機物は一般に絶縁物だが、図2左のごぞんじのベンゼンには2重結合と単結合が交互に並んでおり、二重結合の二つの電子(π電子、パイ電子と呼ばれる)はここに局在しているわけでなく、電子雲となって周りを移動しており、これが電導性を与えている。この発明(導電性ポリアセチレンの発見)により白川英樹博士がノーベル賞を受賞された。図2の右はベンゼン環が5つ繋がったペンタセンで、電子エネルギーのバンド構造ではエネルギーギャップをもっているので半導体となる。 Printableの半導体材料として図3のような種類があり、いずれも二重結合をもっている。この図の1~6はp 型半導体で、7~9はn型半導体である。もっともよく知られた有機半導体はP3HT(Poly 3-hexylthiophene)やその誘導体で、フレキシブルな長いチオフェン環をもち、溶液処理が可能であるが、移動度は0.1cm2/Vs、カットオフのオン/オフ比は106 以下であった。移動度が10cm2/Vsという非常に高い値も報告されているが、これらはシリコンやガラスのような固体の上に形成した半導体でのデータなので、フレキシブルな用途には向かない。シリーズ・さまざまな研究所を巡る(第16回)プリンテッド・エレクトロニクス技術開発で世界をリードする山形大学時任研究室(その1)厚木エレクトロニクス / 加藤 俊夫図1 プラスチックシート上に印刷した折り曲げ可能な回路(写真は、時任研のご提供による)図2 二重結合をもつベンゼンと、5つ繋がったペンタセンの構造式(資料は、時任研のご提供による)