ブックタイトル実装技術2月号2020年特別編集版

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概要

実装技術2月号2020年特別編集版

281. はじめに 昨年は、JAXA、鉄道総研、JAMSTECと、エレクトロニクスと直接的には関係の薄い研究所を取り上げたので、本年はエレクトロニクス関連の研究所を紹介することにする。 その第1 回として、NHK 放送技術研究所(以下、NHK技研と略称する)を取材させていただいた。2. NHK技研の概要 NHK 技研は、日本でラジオ放送が始まった5 年後の1930年に設立され、放送技術全般にわたる日本で唯一の研究所として、放送の進歩発達に関わる調査・研究を基礎から応用まで一貫して取り組んできた。1966 年には衛星放送の研究が開始され、1984 年には試験放送が始まった。スーパーハイビジョンは、1995年に研究を開始され、昨年放送が開始された。これまでの経験では、一つのシステムが完成し実用化されるのに約20 年かかっている。したがって、現在は20 年後の社会情勢などを考慮しながら、次のような研究テーマを設定している。インターネットのサービス、次世代テレビ方式、AI(人工知能)、空間表現(3 次元、AR、多視点カメラなど)、新機能デバイスなど。約230名の研究員である。 ご報告したい話題は豊富にあるが、今月は撮像デバイスを取り上げることにする。3. イメージセンサの解説 CMOSイメージセンサは、スチルカメラやスマートフォンに大量に使用され、多くの皆さんに愛用されている。イメージセンサの構造や動作を十分ご存知の方も多いと思われるが、念のため筆者の分かる範囲で一般的な解説をしておく。 レンズを通った光はイメージセンサに入り、光の強度に応じた量の電子(または正孔)を発生する原理を使っている。古くは入射光量によって導電率が変わる酸化鉛のプランビコンや硫化アンチモンのビジコン撮像管が放送に使われていたが、シリコンのCCD(Charge Coupled Device)の登場によりシリコンに置き換わっていった。太陽光発電は、半導体のPN接合で光を電気に変換するものであるが、イメージセンサも同じ原理で光を電気に変換する。太陽光発電には色々な材料が使われているが、イメージセンサではシリコンが多く使用される。シリコンは、LSIでプロセス技術が完成しているという以外に、可視光域をカバーできる点が重要である。NHK技研では、シリコンでは満足しないで、より感度のある材料の研究もされている。図1は、シリコンのPN接合に光が入射した時の説明である。光(フォトン)のエネルギーで結晶格子に捕まっていた電子が飛び出して、電子と正孔がキャリアとなる。ただし波長シリーズ・さまざまな研究所を巡る(第13回)NHK放送技術研究所(その1)厚木エレクトロニクス / 加藤 俊夫図1 半導体に光が入射すると、電子と正孔が発生する図2 CMOSイメージセンサの構造