ブックタイトル実装技術6月号2017年特別編集版

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概要

実装技術6月号2017年特別編集版

41ニッケルが析出する(式2)。また、水素イオンと電子が次亜リン酸イオンを還元してリンが析出し、めっき皮膜に共析される(式3)。式1?3の反応は同時に発生するため、めっき皮膜はNi-P 合金皮膜となる。また、一連の化学反応は被めっき物表面が触媒活性状態であることが前提条件で、触媒活性であれば不導体材料へのめっきが可能である。たとえばABS樹脂ではあらかじめ樹脂表面に触媒金属であるパラジウムを付与することで、パラジウム表面で還元剤の酸化がはじまり、Ni-P 皮膜が析出する2)。 めっき液は主成分であるニッケル塩、次亜リン酸塩の他に錯化剤、pH 調整剤、安定剤、添加剤で構成されており、各成分の構成やpHなどを組み合わせることで様々な皮膜特性を有するめっき液が各メーカーで開発・市販化されている。2. 無電解Ni-Pめっきの特徴 無電解Ni-Pめっき皮膜では、リン含有率に応じて低リン、中リン、高リンに分類される。表1に各リン含有率での皮膜特性と比較として電気Niめっき皮膜特性を示した3)4)。 一般にもっとも多く使用されているのは中リンタイプで、浴安定性やめっき速度、素材への付きまわり性にもっとも優れ、さらに汎用性が高い。たとえば機械部品や輸送機器に対しては主に耐摩耗性や耐食性付与が目的で、特に優れた付きまわり性を生かして大型部品へのめっきに中リンタイプがもっとも用いられている。電子部品については、はんだ付け性付与目的の金めっきの下地皮膜に中リン皮膜がもっとも適している。近年、中低リン、中リン、中高リンと更に細かく分類されるよう表1 無電解Ni-Pめっきと電気めっきの特性比較になり、素材や目的に応じた様々な種類のめっき液が市販化されている。 低リンタイプは未熱処理時でもっとも高い皮膜硬度を得られることから、主に熱処理で軟化の懸念がある素材への耐摩耗性付与を目的に用いられる。また、ITOやポリイミドなどの特殊素材への密着性にも優れることから、電子部品へのめっきにも用いられる。他にABS樹脂などの不導体材料への導電性付与を目的に低リンタイプが用いられる。 高リンタイプは耐食性及び耐酸化性に優れ、厳しい腐食環境下での防食付与を目的に用いられる。耐食性に優れる要因として、①皮膜の非晶質性により腐食の起点となる結晶粒界を抑える②腐食で皮膜が溶解する際にリン酸化物が表面に形成するこ とで耐食性が向上するが挙げられる5)。また、非晶質性は非磁性と比例関係にあり、非磁性安定性を要求されるアルミ製ハードディスク基板の下地めっきに用いられる。 上記のめっき技術の他にPTFEや炭化ケイ素などの微粒子をめっき皮膜に共析させるコンポジットめっきや、タングステンなどの金属元素を加えた多元合金めっきも開発され、実用化されており、無電解Ni-Pめっきの進歩は著しいものといえる。そのいっぽうで、めっき皮膜に要求される性能もより厳しくなっており、その要求に対応すべく薬品メーカーや研究機関による技術革新が進んでいる。