ブックタイトル実装技術6月号2017年特別編集版

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概要

実装技術6月号2017年特別編集版

401. はじめに 材料表面に新しい機能を付与する表面処理技術の一つである無電解めっきは、材料の高機能化、長寿命などの特性改善のために種々の産業分野において適用されている。無電解めっきはめっき液中の金属イオンと還元剤との酸化還元反応を利用してめっき皮膜を形成させる技術で、1946年米国のNational Bureau of Standards のA. Brenner氏が電気ニッケル-タングステン合金めっきの際に次亜リン酸塩をめっき液に添加すると電流効率が100%を超える現象を発見したのがはじまりである。 当初は浴安定性や生産コストなどの問題があり、工業的な利用は限定的であった。しかし、その後 General AmericanTransportation Co. のG. Gutzeit 氏が浴安定性やコストなどの問題を改善したカニゼン法が開発されてから工業化が進んできた。 無電解めっきは電気めっきに比べて格段にコストが高いが、①様々な形状でも均一な厚さの皮膜を形成する②不導体材料にもめっき可能③電気めっき皮膜にはない様々な機能性皮膜を得られるなどの特徴を示すことから、自動車産業や電子機器産業などの多くの分野で急速に需要が拡大している1)。 特に無電解ニッケル-リンめっき(Ni-P)は多様なめっき皮膜特性や浴管理の容易さなどの理由から他の無電解めっきに比べて利用される産業分野は多岐に渡り、基幹技術として長年の産業発展を下支えしてきた。また、現在でも薬品メーカーや研究機関による研究開発が進められており、様々な機能性めっき液が実用化されている。当社でも無電解Ni-Pめっきの研究開発に着手し、高耐食性に優れる『クオルニック』と低温浴でめっきが可能な『クオルニックLT』を開発した。 本稿では無電解Ni-Pめっきの概説と当社で開発した無電解Ni-Pめっきを紹介する。2. 無電解Ni-Pめっきについて1. めっき析出機構 電気めっき及び無電解めっきは電子によって金属イオンが還元されることでめっき皮膜の析出がはじまる。ただ、電気めっきでは整流器などの外部電源から、無電解めっきでは浴中の還元剤の酸化反応からと電子の供給手段がそれぞれ異なる(図1)。一般的に無電解Ni-Pめっきでは還元剤である次亜リン酸イオンが酸化されると以下の反応が発生することが知られている。 H2PO2?+H2O → H2PO3?+2H++2e?( 式1) Ni2++2e? → Ni( 式2) H2PO2?+2H++e? → 2H2O+P( 式3) 被めっき物上で次亜リン酸イオンが酸化されて電子を放出し(式1)、放出された電子がニッケルイオンを還元して金属無電解ニッケルめっきの新展開?高耐食性Ni-Pめっき/低温浴Ni-Pめっき?図1 電気めっきと無電解めっきの皮膜析出の模式図(株)クオルテック / 西森 太樹