ブックタイトル実装技術10月2015年特別編集版

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概要

実装技術10月2015年特別編集版

れていたメカニカル系の操縦感覚と新しい操縦システムとの感覚の違いが大きな問題になります。 航空機は非常に厳しい動作環境が要求されます。たとえば熱帯や砂漠など50℃を超える地域から-30℃、-40℃の極寒地まででの運用を要求されます。 また、高度1 万mでは外気温度は極低温で、与圧していない機構部では、気圧は非常に低くなります。このような環境下で高い信頼性を保つ必要があります(図4)。 このため、たとえばMIL(Militaly Standard)と呼ばれるアメリカの軍規格で軍用に使用する部品や機器の信頼性の規格があります。 ICの動作温度だけをみても、一般民生用ICの動作温度範囲は0~70℃程度ですが、軍用では-55~125 ℃が要求されます。 このほか、振動試験やヒートサイクル試験なども一般製品より厳しい条件が要求されています。このため、現在は軍用機から大型旅客機まで広く使われているフライ・バイ・ワイヤ技術も1970年代から、信頼性の向上、確認、操縦者の感覚に合った操縦性の開発など、20 年以上の歳月をかけて実用化されました。2. フライ・バイ・ワイヤの問題 長い間の評価と改善を経て実用化されたフライ・バイ・ワイヤですが多くの欠点があることも判明しました。 以前とは比べものもないほど複雑になった操縦系統はすでに古いメカニカルな操縦システムでは不可能です。フライ・バイ・ワイヤが実用化されたために航空機自体の進歩が実現しました。 しかし、信号配線が複雑になり電線が飛行機の内部を這い回りハーネスの重量も莫大なものとなっています。 たとえば、最新鋭の中型旅客機、ボーイングB787(図5)ではハーネスの総延長は112kmにもなるといわれています。 このハーネスには、各座席に付いている液晶ディスプレイに映画やゲームを送信するビデオ・オン・デマンドや機内証明、機内食用の冷蔵庫や電子レンジなど、旅客機ならでの配線も多くを占めています(図6)。 それでも操縦系統のフライ・バイ・ワイヤ配線は安全のため、2系統、3系統の回路をもつので、ある程度の長さと重量はあります。 軍用機にとって大きな問題はEMCです。現在、軍用機、特に戦闘機は見えない戦闘機と呼ばれるスティルス性がもっとも大きな問題となっています。 現在、遠くの航空機を見る手段はレーダです。レーダは自分から電波を発射し、目標物からの反射を捉えるのですが、敵機が不用意に放射した電磁波を捉えて敵機を発見する機能もあります(図7)。自分で発射した電磁波の反射を捉えるアクティブ探知では電波を発射したタイミングから反射が帰ってくるまでの時間差で敵機の正確な位置と速度がわかります。敵機が放射した電磁波を捉えるパッシブな検知は不安定で敵機の位置や速度はわかりませんが、あらかじめ敵機の発信周波数スペクトラムを承知していれば、機種の推測が付きます。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図6 各座席に付いたオン・デマンド・システム(全日空HPより) 図7 アクティブ/パッシブ図4 低温試験(Lockheed Martin 社HPより)図5 B-787(Boing 社HPより)53