ブックタイトル実装技術5月号20015年特別編集版

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概要

実装技術5月号20015年特別編集版

321. はじめに Sn-58Biはんだ合金の融点は138 ℃であり、一般的な鉛フリーはんだ合金であるSn-Ag-Cu 系よりも80 ℃ほど低いので、低温ではんだ付けできるのが特徴である。そのため、はんだ付け工程の省エネ・CO2 削減を図ることができる。また、安価ではあるが耐熱性の低い紙フェノール基板を、熱変色や反りを発生させずにリフロー工程で用いることができる。紙フェノール基板はめっき工程を必要としないので、これも環境負荷の低い材料といえる。 Sn-58Biはんだは、古くから知られている組成にも関わらず、広く普及していない。その理由として大きく二つ考えられる。すなわち、(1)Pbめっき部品と組み合わせたときに、100℃付近で更に低融点の合金層を形成する1)こと、(2)耐衝撃性に劣る2)ことである。 とはいえ、近年になってこれらの障害は取り除かれつつある。まず、鉛フリー化の進展に伴い部品のめっきにPbがほとんど使われなくなっている。加えて一部の家電製品では、耐衝撃性が大きなリスクとならないケースも認識され始めている。たとえば、洗濯機や電子レンジ・食洗機といった据え置き機器であれば、いったん設置された後、落下や衝撃のような負荷が頻繁に加わるとは考えにくい。このような機器に適用することでSn-58Biはんだはさらに活用されてメリットを発揮できる可能性が大いに残されていると考えられる。 当社はパナソニックアプライアンス社と協働で洗濯機の表示基板を対象に、Sn-58Biはんだペーストである、パインソルダー『XFP LF138』の適用に取り組んだ。これは上述の、リフロー炉の消費電力を削減することと、紙フェノール基板をリフロー工程で使いこなすことを主目的としたものである。リフローピーク温度を240℃から170℃に下げることで、約30 %の省エネ効果が期待できる。 本稿では、Sn-58Biはんだの適用に伴い課題となった はんだぬれ性の改善についてまず説明する。その後、低温でのリフローという特性を活かした、手はんだ部品の自動実装化について紹介し、最後に今後の展望について述べる。2. はんだぬれ性の改善 Sn-58Biはんだ組成は、Biが酸化しやすいことから、基本的にSn-Ag-Cuなど従来のはんだ組成と比べるとぬれ性に劣る。検討当初、実装部品の一つであるスイッチのリード端子へのぬれ不具合がみられた。図1にスイッチ部品全景、図2に実装済みスイッチ部品リード部を示す。スイッチ部品のリード先端面では、はんだ自体がフィレットを形成しておらず、ぬれ上がっていないことがわかる。いっぽう、リード側面には多少のぬれ上がりがみられた。リード端子の材料はCuとZn の荒川化学工業(株) / 渡辺 正樹Sn-Bi低融点ソルダペーストの実用化図1 スイッチ部品全景図図2 スイッチ部品リード部