ブックタイトル実装技術2月号2015年特別編集版

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概要

実装技術2月号2015年特別編集版

361. はじめに エアコンなどのモータ駆動は、インバータによる可変速制御が行われるが、その方法は、入力をいったん直流に変換(AC/DC 変換)し、この直流を再び交流に変換(DC/AC 変換)してモータを駆動する。この方法は直流中間に大型の電解コンデンサや入力に大容量のリアクトルが必要とされるため、大型化、高コスト化の問題がある。いっぽうで、約30 年前から入力交流を直接交流に変換(AC/AC 変換)する技術としてマトリクスコンバータが研究されてきており(参考文献の1)参照)、その目標は、効率アップ、高力率、小型・軽量、回生の標準機能化、低コスト化であった。 しかし、これまで発表されている方式は、これらの目標を達成しているとはいいがたい。先の参考文献の1)は、現状を分析し、①入力電圧の86.6%が出力電圧の理論限界であること、②変調方法が複雑であること、③無効電力補償能力の不足、④入力アンバランスに弱いこと、をあげて原理的制約と同様に方式の問題点を指摘している。筆者も、提案されている従来の方式で製品化した場合、方式の問題点を別の手段で補うことが必要となるため、高コスト化により競争力を喪失し製品として普及できないと考えている。 その具体的な原因を2つ指摘する。1つ目は、入力フィルタである。キャリア周波数が10kHzでもカットオフ周波数が1.5kHz 程度に設定されているため、リアクトルやコンデンサ、ダンピング抵抗を小さくできない。2つ目は、転流失敗を内在した方式であるために大きなスナバ回路を装備している点である。前者は従来の方式が低周波の歪を除去できないため、後者は転流失敗の対応のためにハードウエアを追加するものである。ハードウエアで対応せざるを得ないために高コスト化するという結果になる。この場合のハードウエアは、不要なエネルギー蓄積要素として使用されているが、この「エネルギー蓄積要素を必要とする」ところに問題があると考えている。 筆者は、もともとマトリクスコンバータの研究をしていたわけではなく、他の研究をしている中でどうしてもAC/AC 変換が必要となったことをきっかけに、これまでの方式を踏襲しない新たな方式を発見した。この方式によれば、入力電流の電源高調波を数学的・原理的に除去できるため、入力電流は正弦波電流となり、また、転流失敗を起こさずに出力電圧を従来通りの変調信号(DC 一定のインバータの変調信号)で発生できる。この場合の入力フィルタのカットオフ周波数は高周波のキャリア周波数成分を減衰するための高い周波数で良く、入力フィルタを小さくできる。また、スナバは転流失敗を考慮する必要がないため不要である(ただし、異常停止時の負荷からの回生エネルギー吸収用スナバは残る)。 今回提案する方式は、従来方式が不要なエネルギー蓄積要素を排除できないのに対して、キャリア周波数を高くすることによりエネルギー蓄積要素を極限まで小さくできる方式となっている。これは、変換器そのものを半導体のみの大きさまで小さくできることを意味する。AC/AC 変換の本来の目標が、エネルギー蓄積要素「0」の実現によって達成されたと(株)富士通ゼネラル空調技術研究所 / 一木 敏マトリクスコンバータの実用化エネルギー蓄積要素「0」の電力変換装置の実現へ図1 マトリクスコンバータによるRL負荷試験回路