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大型品の3D造形を可能とするプラスチック金型用ステンレス系粉末を発売
〜特殊な処理なしで連続的に大型品の造形が可能〜

大同特殊鋼株式会社(社長:清水 哲也)は、3Dプリンタ用金属粉末DAP™-AMシリーズ*1の第三弾として、プラスチック射出成形金型に適した3Dプリンタ用ステンレス系粉末LTX™420を開発し、8月から販売を開始します。LTX™420は、耐食性や耐摩耗性が要求されるプラスチック金型に用いられるSUS420J2系金型用鋼材を、SLM方式*2の3Dプリンタでの造形に適した合金組成に調整し、造形時に発生するひずみを大幅に低減しました。これにより、造形過程で必要とされてきた特殊処理をしなくても、連続的な造形において割れを抑えるとともに、大型品の造形が可能となりました。LTX™420はSUS420J2を改良した成分を有し、クロムを13%含有します。また、特定化学物質障害予防規則などで健康障害防止措置が義務付けられているコバルトを含有していません。さらに、予熱温度に関しても一般的なSLM方式の3Dプリンタで予熱が可能な120℃で造形が可能です。当社は今後も3Dプリンタに適した金属粉末の開発を推進し、3Dプリンタ技術の発展に貢献していきます。

1.背景

プラスチック射出成形の分野では、耐食性や耐摩耗性が求められる金型に、高硬度が得られるSUS420J2系鋼材が用いられています。近年、プラスチック射出成形金型の分野でも、サイクルタイム*3の短縮や成形品の品質改善を目的に、水冷孔を自由に配置できる3Dプリンタによる造形金型の使用事例が増えています。しかしながら、SUS420J2系金型材料は造形後に硬さが高くなり割れやすいため、SLM方式の3Dプリンタでの造形が非常に難しい材料として認知されてきました。そのため、3Dプリンタ造形時に特殊処理を施し、SUS420J2の造型割れを抑制する技術も開発されていますが、この特殊処理は時間を要するため、造形時間が長くなるという課題がありました。当社は2022年9月から販売を開始した、大型造形を可能とするダイス鋼系3Dプリンタ用粉末LTX*4の考え方を、SUS420J2系金型材料にも適用しました。これにより、造形時に特殊処理を行わずとも連続的な造形において割れの発生を抑えるとともに、大型品の造形が可能な新たなSUS420J2系粉末を製品化することができました。

2.LTX™420の特長

(1)120℃予熱で150mm角を超える大型品の造形が可能
合金成分の調整により 120℃予熱でも造形品に発生するひずみを大幅に低減。造形ひずみに起因した割れが抑制され、150mm角を超える大型品の造形が可能。造形中の特殊な処理も不要。

(2)SUS420J2系金型材料とほぼ同じ性能
造形品は SUS420J2系金型材料と同等の性能と製造性。3D造形による金型冷却のメリットをそのまま活用可能(積層造形特有の造形欠陥が存在するため高鏡面用途への適用は不可)。

(3)コバルトフリー
特定化学物質のコバルトを含有しない。

3.売上目標

2026年度 2~3億円

4.製品名

DAP™-AM シリーズ LTX420

Daido Alloy Powder – for Additive Manufacturing Series
Low Thermal Deformation by Martensitic Transformation(X) 420

呼び名 ダップ エー・エム シリーズ
エル・ティー・エックス 420

DAP、LTXは大同特殊鋼株式会社の登録商標または商標です。

5.特許

日本、米国、中国、韓国、欧州に出願済み

6.模擬型造形例

LTXTM420 を用いた模擬型造形例(予熱温度:120℃)
LTX™420 を用いた模擬型造形例(予熱温度:120℃)

7.用語説明

*1 DAP™-AM シリーズ
大同特殊鋼が SLM方式の3Dプリンタ用に製造する金属粉末ラインナップのブランド名

*2 SLM方式
薄く敷き詰めた金属粉末を、造形したい形状の部分のみ選択的にレーザーで溶融・凝固させることを繰り返し、積み重ねることで目的とした形状を得る方法

*3 サイクルタイム
その工程で製品1個を製造するために必要な時間

*4 LTX™
当社が2022年9月に発売開始したダイス鋼系3Dプリンタ用粉末。金型用途に適し、予熱温度の調整で大型の品の造形でもひずみの発生を抑制し、割れなく造形できる。

8.参考

以 上