PRESS RELEASE

2021年10月11日
富士通株式会社

富士通、東大病院と心電図から心臓の動きの異常を推定するAIの臨床研究を開始

当社は、心疾患の早期発見を目的に、東京大学医学部附属病院(所在地:東京都文京区、病院長 瀬戸泰之、以下 東大病院)と共同で研究開発した、心電図注1のデータから心臓の動きの異常を推定するAIについて、その有効性を検証するための臨床研究を10月25日より東大病院において開始予定です。

当社は、2019年12月より、東大病院と共同で、東大病院にてこれまでに受診した患者の心電図検査のデータ約63万件と心臓超音波検査(以下 心エコー検査)注2のデータ約14万件を使用して独自のAIの研究開発注3を進めており、この度、心臓の動きの異常を高い精度で検出することに成功しました。

今回、本AIを用いて、東大病院でこれから心電図検査を受ける患者の心電図データをもとに、心臓の動きの異常の有無を推定させ、異常ありと推定された患者に心エコー検査を受けてもらい、本AIの推定結果と比較して有効性を検証します。

当社は、本AIを活用することで心疾患を早期に発見し、患者の重症化を防止し、人々のウェルビーイングな暮らしをサポートする「Healthy Living」の取り組みを強化していきます。

本取り組みは、10月12日(火曜日)からオンライン形式で開催する、「Fujitsu ActivateNow 2021」に出展します。

背景

心疾患は日本人の死因の第2位注4となっており、心疾患を早期に発見するために、心臓の電気パルス信号の波形をもとに心筋の異常や脈の乱れを検出する心電図検査が診断手段として広く用いられています。しかし、心電図のみを用いて心臓の形や動きの異常を捉えることは難しく、医療の現場では、心電図検査結果に加え、患者の自覚症状をもとに医師が聴診器を使って心音の異常を検知した後、心エコー検査を行うことなどで検出しています。しかし、心エコー検査は専門の医師や臨床検査技師がいる限られた施設でしか行うことができないなどの理由のため、すべての患者に対して検査を行うことが難しいという実態があります。このため、早期発見がしにくく、発見したときにはすでに疾患が重症化しているケースもあります。心疾患の治療においては、早期に発見して適切な処置を行うことが医療の現場での重要な課題となっています。

当社は、東大病院循環器内科の藤生克仁特任准教授および小室一成教授らの研究グループと2019年12月より、富士通独自の波形解析技術TDA(トポロジカル・データ・アナリシス)注5を活用した心電図データから心疾患を検出するAIの研究開発に取り組んできました。そしてこの度、心電図データから心機能の異常の有無を推定するAIを研究開発し、実際の医療現場において、AIの有効性を検証するため、東大病院にて臨床研究を開始します。

臨床研究について

東大病院にて診察を受けた患者の心電図データをもとに、AIによる心臓の動きの異常の検出の有効性を検証します。

1. 期間

2021年10月25日(月曜日)から2022年3月31日(木曜日)まで(予定)

2. 場所

東京大学医学部附属病院循環器内科

3. 心臓の動きの異常を推定するAIの検証について

東大病院内に心臓の動きの異常を検出するAIを搭載したサーバを設置し、心電図データを蓄積したサーバと接続し患者の心電図を解析、異常の有無を推定します。異常ありとAIが推定した患者には、心エコー検査を行った上で、医師が心疾患の有無を判断し、AIの有効性を検証します。

4. 役割分担

富士通:AIを搭載したサーバの設置と運用
東大病院:患者の心電図データをAIに入力し、AIが異常ありと推定した場合には、心エコー検査を行い、その結果をもとにAIの有効性を検証。

臨床研究のフロー 臨床研究のフロー

今後の展開

当社は、今回の臨床研究の成果をもとに、心臓の動きの異常を早期に検出できるソリューションの研究開発を推進し、重症化予防に貢献していきます。また東大病院との共同研究を通じて、今後もさまざまな心疾患を検出するAIの研究開発を推進します。その結果を、医療現場の課題解決に利活用できるよう取り組むことで生活者を取り巻く社会に信頼をもたらし、人々のウェルビーイングな暮らしをサポートする「Healthy Living」の取り組みを推進していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    心電図:
    心臓の動作の元になる電位の変化を体表から記録したもの。
  • 注2
    心臓超音波検査:
    胸部に超音波を照射し、反射してきた波を分析・画像化することで、心臓の動きや形態などの心臓の力学的な機能を調べる検査。
  • 注3
    独自のAIの研究開発:
    東大病院の倫理規定に従って実施。
  • 注4
  • 注5
    TDA(トポロジカル・データ・アナリシス):
    データをある空間内に配置された点の集合とみなし、その集合の幾何的な情報を抽出するデータ分析手法のこと。

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs

本件に関するお問い合わせ




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