ブックタイトルメカトロニクス10月号2018年

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概要

メカトロニクス10月号2018年

44 MECHATRONICS 2018.10   日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第4回 <電子機器を動かすのに必要な電力>連 載 前回は、日本の資源として「石炭資源」、「鉱物資源」、「生糸資源」、「ヨウ素資源」、「森林資源」などの5つの資源について紹介した。今回は、電子機器を動かすのに必要な電力のエネルギー問題について紹介するとともにエネルギーの「流体革命」に伴っての変化も紹介する。1. 電気の周波数 電気には電気の大きさや向きは同じである「直流」と、大きさが変わり向きも変わる「交流」の2つがある。分かり易く言えば電池から取る電気は「直流」、コンセントから取る電気を「交流」と言う。 交流には1 秒間に繰り返す波があり、それを周波数と言っている。日本では周波数として50Hzと60Hz の2つが使用され、世界でも珍しい国となっている(表1)。電圧についても米国型が110~130ボルト、欧州型は220~240ボルトが使用され、日本は100ボルトの電圧で低い点でも珍しい。感電した時の安全性を配慮して低い電圧に設定したとの説がある。 この周波数の違いが起きたのは、東京はドイツのAEG 製の50Hz の発電機が、大阪はアメリカのGE製の60Hzの発電機が導入されたために日本は2種類の周波数となった。現在は新潟県の糸魚川と静岡県の富士川を結ぶ線を境にして、東側は50Hzと西側は60Hzとなっている。 周波数を統一化することは何度が議論されたが、未だ統一化されていない国となっている。この2つの周波数が存在することは標準化を誤ると後世まで影響する事例の1つとして紹介されることがある。1) 電気製品に50/60Hzと記載されていれば両方に対応した電気製品を示し、単独の周波数しか記載していない電気製品は、その指定のサイクルでの使用が必要である。サイクルが異なると電気製品によっては使用できるものと使用できないものが出てくる。あるいは性能が変わる電気製品も出てくるので注意が必要である。特に回転に使用するモータは周波数に依存する。2. 限りある資源 電気製品を動かすには電気が必要である。その電気を起こすにはエネルギーが必要である。今までは限りある資源を利用しており、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料は将来的には枯渇が心配されている。2015~2016 年時点での可採年数は、石油が51 年、天然ガスが53 年、ウランが102 年、石炭が153 年と埋蔵量が確認されているが、可採年数はそれ程、大きくなく限度がある。 いずれにしてもエネルギー源をどう得るかは、資源の枯渇問題のみならず温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)の排出などの深刻な問題となりつつある。そのため、化石燃料から再生可能エネルギーに熱い視線が注がれている。3. 二酸化炭素の排出量 大気に含まれるCO2は増加しているのは事実であるが、CO2が温暖化の原因とする説には異論を唱える資料もある。その論議は別として、ここでは、温室効果ガスの削減方向で動いていることを前提に説明を進める。 世界のCO2排出量は図1に示すように約330億トン(2016 年)で排出量の多い順に10位までを示すと中国>アメリカ>インド>ロシア>日本>ドイツ>韓国>カナダ>ブラジル>メキシコの順となる。日本のCO2の排出量は世界で5 位に位置付けされ、12~13 億トンで推移し、リーマンショックで景気低迷した時には、生産規模が減少したことにより12億トン以下になった。2)4. 電源構成 エネルギー資源の有無やその国の政策の違いなどで各国の電源構成は異なっている。CO2の排出量の少ない原子力発電は、温室効果ガスの削減に寄与することから推進する方向であったが、東日本大震災の福島原発事故によって、各国でも見直しが始まり、ドイツは2022 年に全廃、ベルギーや台湾は2025 年に全廃、スイスは将来的には原子力発電を全廃する意向を示している。 韓国は新設抑制、スペインは新設停止、フランスは将来減少方向を示している。福島原発事故は、世界の電源構成を見直すきっかけにもなった。 さて、日本での電源構成の推移をみてみよう。戦後10 年後の1955 年時点では水力発電が79%も占め、20%が石炭火力発電で、「水主火従」の発電であった。この頃は水力発電であり、再生可能エネルギーが主であったことになる。丁度、この頃に電気洗濯機、電気??、トランジスタラジオ、トースタ、電気毛布、ジューサなどの家電製品が商品化され、電気製品の恩恵を受けることになった。 例えば、日本人の主食であるご飯を??で炊くということは掃除、洗濯とともに、主婦の家事労働の1つであり、経験に基づいたノウハウによりご飯のでき栄えが左右されるものだった。 タイムスイッチを使って、希望の時間にご飯が炊ける電気??が1955 年に東芝から商品化され、炊飯を単に自動の電気??に変えただけでなく、主婦の家事労働にかかる時間を大幅に軽減し生活様式にも大きな変化をもたらした(写真1)。 当時の家庭の契約電気容量は6アンペアで、使用出来る電気器具は600Wまでであり、話題商品の電気??の普及により、ご飯を炊く時間の夕方には10%以上も電圧低下する事態になったという。これは、当時の話題商品であった。特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光表1 地域別採用周波数図1 世界の二酸化炭素排出量(JCCCA) 写真1 1955年に発売された電気??(東芝)