ブックタイトルメカトロニクス6月号2018年

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概要

メカトロニクス6月号2018年

44 MECHATRONICS 2018.6与し、社会実装に繋げた吉野彰博士の功績は極めて大きく、「資源・エネルギー、環境、社会基盤」分野における貢献を称える2018年日本国際賞(2018Japan Prize)にふさわしいと考える。”(2)財団の歴史 公益財団法人 国際科学技術財団は、科学技術の分野における権威ある国際的な賞として『JapanPrize』を創設するために、1982年11月1日に内閣総理大臣の許可を得て発足した。『Japan Prize』の創設は、1981年、当時の鈴木内閣の中山太郎総理府総務長官が「国際社会への恩返しの意味で、日本にノーベル賞並みの世界的な賞を作っては」という構想をたてられ、これに松下幸之助氏が“畢生(ひっせい)の志”のもとに寄付をもって応え、実現したものである。【畢生(ひっせい)の志】 同財団を設置後、松下幸之助は初代会長として努力した。その頃の彼の心を示す言葉として、以下の文が残され残されている。“人類の平和と繁栄は、私の終生の願いです。この願いと軌を同じくする理念の下に『日本国際賞』が設けられ、わが国として国際社会の発展にいささかなりとも貢献しうるようになりましたことは誠によろこばしいことです。 現代の科学技術の進歩は、実に目を見張るものがあります。今日の人類の偉大な文明は、これにより築かれてきたといっても過言ではありません。しかしながら、今日においてもなお解決を要する幾多の諸問題が在しており、衆知を結集する必要性は一段と高まっているといえるでしょう。 このような状況の中で、わが国が国際的な視野に立って、科学技術の分野で人類の平和と繁栄に著しく貢献した人に対し、その業績を讃え、これを顕彰することは意義の深いものがあると考えています。この賞が、世界的権威ある賞として、広く世界から認められることを心から願っています。” 同賞は、科学技術の全分野を対象とし、科学技術の動向等を勘案して、毎年2 つの分野を対象として指定する。(3)同賞の「授賞対象分野」の予定 同賞の「授賞対象分野」は、基本的には、2 種類の「領域」にグループ化された合計6種類の「授賞対象分野」により構成されている。また、それぞれの分野は、単数もしくは複数の関連テーマを包含している。 「授賞対象分野」は、毎年「Japan Prize 分野検討委員会」から向こう3 年間の授賞対象分野が発表される。来年より3年間の授賞対象分野は、以下のように発表されている。【「物理、化学、情報、工学」領域からの「授賞対象分野】・2019 年:物質、材料、生産・2020 年:エレクトロニクス、情報、通信・2021 年:資源、エネルギー、環境、社会基盤【「物理、化学、情報、工学」領域からの「授賞対象分野】・2019 年:生物生産、生態、環境・2020 年:生命科学・2021 年:医学、薬学(4)記念招待講演会 吉野博士の記念招待講演会が以下のように予定されている。・日時:2018年10月19 日(金)11時より・会場:東京ビッグサイト・注:同講演会は「2018 洗浄総合展」の特別行事として開催される。(以下、次号に続く。)(2018年4月24日記)<参考資料>1)公益財団法人 国際科学技術財団ホームページ:http://www.japanprize.jp リチウムイオン電池の開発分野で、日本企業に在籍する日本人研究者である吉野彰(よしの あきら)博士が、日本の表彰制度で国際的に有名な「日本国際賞」(Japan International Prize)の2018年度の授賞者に選ばれたことが、2018年1月に発表された。このニュースは、将来のエネルギー問題に、新しい素材を導入した画期的な技術であることと、ノーベル賞級の権威ある国際的表彰制度で日本の技術開発が高く評価されたこととを併せて認めるべきものである。今回は、その表彰制度の概要と、吉野博士の業績について、その表彰制度の実施組織である財団法人 国際科学技術財団のURLに基いて紹介する1)。日本産業洗浄協議会 名誉理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力リチウムイオン電池、日本国際賞リチウムイオン電池の開発~吉野彰博士が日本国際賞を受賞(その1)~【第195回】ン・B・グッドイナフ博士の LiCoO2正極、1980 年、1981年にそれぞれ特許出願がなされたペンシルベニア大学のマクダイアミッド教授らによるポリアセチレン負極や1981年の三洋電機 池田宏之助博士の黒鉛負極の開発など、様々な要素技術開発が進められていた。しかし、当時、有望な正極材料として考えられていた金属カルコゲナイト化合物等とカーボン負極の組み合わせや、LiCoO2正極と金属Li 負極の組み合わせでは、起電力が小さい等の理由により実用化に繋がるほどの性能は見出されていなかった。吉野博士は独自の要素技術開発と既存技術を組み合わせることで、リチウムイオン電池をシステムとして成立させたが、この発明はリチウムイオン電池における基本特許の一つとなっている。博士の発案者、技術開発者としての貢献は極めて大きい。 90 年代初めから始まったデジタル化やIT 革命、携帯電話等のモバイル革命は、小型、軽量、大容量、長寿命のリチウムイオン電池なしには構築できなかった。モバイル端末は現在、先進国のみならず開発途上国においても、広く社会基盤として欠かせない要素となっている。また近年では、リチウムイオン電池はハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車にも搭載され、輸送時の環境影響物質の排出低減に貢献している。加えて、地球温暖化対策としての自然エネルギーの供給不安定性を解決する手段として、カスケード利用を含めたリチウムイオン電池の活用が期待されるなど社会における重要性がますます増加しており、本技術を再評価する時期に来たと考える。その中で博士が達成した成果は、現在のリチウムイオン電池の技術・産業面での礎となっており、特筆すべきものである。 以上、リチウムイオン電池の開発において独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄キーワード■はじめに 日本国際賞(Japan Prize)とは、“国際社会への恩返しの意味で、日本にノーベル賞並みの世界的な賞を「作ってはどうか」”との政府の構想に基づいて、1985 年に実現した表彰制度である。 同賞は、全世界の科学技術者を対象とし、独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に与えられるとされている。 2018年度の同賞は、リチウムイオン電池の開発において大きな貢献をした吉野彰博士と、現代免疫学の礎となる基本コンセプトを構築したマックス・クーパー博士、ジャック・ミラー博士の3 氏に贈られることが2018年1 月に発表された。 今回は、日本国際賞の授賞制度について解説するとともに、同賞の過去の経緯を同財団の資料に基いて紹介する(写真1)。■『2018 Japan Prize』の授賞について(1)財団が発表した『2018 Japan Prize』の授賞 財団が発表した吉野博士の受賞理由には、以下のような説明が付されている。“吉野彰博士は、リチウムイオン電池の開発において大きな貢献を果たした。博士の最大の貢献は、正極におけるアルミ箔集電材、およびポリエチレン系セパレータといった要素技術の開発、さらにそれらと既存のLiCoO2 正極材料やカーボン系負極材料を組み合わせることで、3.9V以上の起電力を有する実応用可能なリチウムイオン電池を実現した点にある。 リチウムイオン電池に関しては、1979 年にオックスフォード大学で開発された水島公一博士とジョ<写真1> 『2018 Japan Prize』の授賞式風景・出典:公益財団法人 国際科学技術財団 ホームページ(http://www.japanprize.jp/press_kits_20180418_02.html)