ブックタイトルメカトロニクス2月号2018年

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概要

メカトロニクス2月号2018年

MECHATRONICS 2018.2 11所在地:U R L:事業内容:横浜市緑区http://www.resonic.jp慣性特性(質量特性/剛体特性)の計測サービス、計測機の設計/製造/販売。株式会社 レゾニック・ジャパン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・により、客観的に定量化することが可能です。 さらに、最近ではモデルベースのエンジニアリングが注目されていますが、こちらでも慣性特性が重要なポイントになってきます。試作品をつくってテストし、そのテスト結果をまた設計に反映して次の試作品をつくっていると、時間やコストを費やしてしまうため、シミュレーション内でできることはシミュレーション中にやっていこうという手法が、最近では注目を集めています。その時、どんなに高価なシミュレーションのソフトウエアを使っていても、慣性特性が分かっていないとあまり良い結果は得られません。シミュレーションの中では、対象物をモデル化しないといけないので、運動特性を解析する場合には慣性特性が大きな役割を担っているといえます。 あとは、ベンチマーキングにも重要視されています。最近の自動車業界では、電気自動車の開発が進み、車のレイアウトにも自由度が生まれていますが、一体どのような慣性特性をもった車が良い車なのか、原点回帰の傾向が多少見られます。そのため、ベンチマーキングや車の特性を根本から調べていくという動きが起こっています。非常に興味深い動きであると思いますし、電気自動車の発現によりエネルギー問題だけでなく、車そのものの乗り心地や特性まで根本的に考えなくてはいけないということになってきています。 当社のレゾニック計測技術は、今のところこのような4つの慣性特性を計測するシーンで需要が見込まれています。 レゾニック計測技術の概要や 装置の特徴についてお聞かせ下さい川口 : レゾニック計測技術は、まずばねで柔軟に支持された装置上に測定物を載せて、装置を加振することで測定物に自由振動を発生させます。ばねの特性はあらかじめ分かっていますので、その自由振動が生じるためにはどこに重心の位置があって、どういう慣性テンソルであればその振動が発生するのかということを、逆計算して求める技術になります。 従来は、ばねで支持された回転するテーブルの上に計測物を載せて、そのテーブルを回転させてストップウォッチで周期を測ることにより、慣性モーメント計測する「振り子式」や、アクチュエータで実際に加振させて計測する「加振式」が使われていました(図表1)。それから、計測物に加速度センサをいくつか設置し、ハンマーで叩いた時の出力を計測する「実験モード解析」という近代的な技術もありました(図表2)。しかし、それぞれ精度が出なかったり、危険な作業が伴ったり、時間が掛かったりなど、色々なデメリットが発生していました。 当社のレゾニック計測技術は、ばねで吊るしたり/支持したりするだけで、計測ができてしまうという技術です(図表3)。ものの「自由振動」を計測することにより、例えば私どもの装置は5つの運動の自由度をもっているため、5つの卓越した振動数(固有振動数)が出てきますが、その5つの自由度の振動数が出てくるには、どういう慣性特性であればいいのか逆計算するということになります。ハードウエアはいたってシンプルなものですが、中のアルゴリズムは非常に複雑なものになっています。そのため、ハードウエアに関しては色々と真似することが可能ですが、ソフトウエアに関しては難しいと思います。 現在当社では、「スピーディーで」、「精度良く」、「安全に」の3 つをコンセプトに、計測重量範囲が100g~2.5tまでのすべての計測に対して製品をラインアップしています。今回は、その中で主力となる3つの装置を紹介します。 まずは、計測重量範囲が100g~25kgまで対応する『RESONIC 25K / 2K』です(写真1)。この製品は、空気ベアリングを用いて1つの自由度の振動数を計測する装置になります。スピーディーに再現性良く配置変更可能な構造で、所用時間は1時間以内ですべての慣性テンソル成分を計測できます。自動車/二輪部品、超小型人工衛星、コンプレッサ、スポーツ用品などの計測に適しています。 次に、計測重量範囲が20kg~450kgまで対応する『RESONIC 450F』です(写真2)。この製品は、高精度、短時間で計測する柔軟性の高い装置になります。お客様によるカスタマイズが可能で、エンジンのような車両コンポーネント部品、バイクなどの測定に適しています。 最後は、計測重量範囲が200kg~2.5tまで対応する『RESONIC 2000F』です(写真3)。この製品は、計測物のサイズに柔軟に対応でき、従来製品と比べて摩擦を徹底的に削減しているので、精度が大幅に向上した装置になります。コンパクトな設計ですが、大きな測定物に対しても計測が可能です。また、持ち運びができるため、お客様の指定した場所での計測を実現します。エンジンやトランスミッションを積んだままの自動車の車体全体や、ヘリコプターのような飛行物などの測定に適しています。 今後の展開についてお聞かせ下さい川口 : 現状は、日本国内での事業展開がメインになっていますが、少しずつ海外にも重点を置いていきたいと考えています。特に、中国や韓国を検討していますが、その他にも国のプロジェクトで人工衛星の開発を進めている所などに、ハイエンドな計測装置としてアプローチしていきたいと思っています。 また、分野においても幅広く展開していきたいと考えています。国内では、2020 年に東京オリンピック/パラリンピックが開催されるので、今まで主観的に選ばれていたスポーツ用品に少し科学的な光を当てて、比較できるようなことを検討しています。例えば、サッカーボールの慣性特性なども計測しており、その他にも槍やテニスラケットなど、様々なスポーツ用品に当社の計測装置を活用して頂き、スポーツ用品の新たな未来が描けないかと思っています。 それから、今まで測れなかった人体の関節ごとの部位の計測についても、色々と準備を進めています。今までの振り子式や加振式、それからハンマーで叩くモード解析では、人体の計測は難しいとされていましたが、レゾニック計測技術を用いればそれも可能だと思っています。現在、ちょっとユーモラスを含めた製品として、宇宙用の体重計をリリースしたいと考えています。体重計は重力がないと測れませんが、レゾニック計測技術はばねと自由振動があれば測れてしまうので、寝ている間でもその人の体重が分かってしまいます。 このように、レゾニック計測技術は色々な可能性を秘めた技術だと思いますので、今後も幅広く広めていくことにより、かなり大きな未来が描いていけるのではと期待しています。本日はお忙しい中、ありがとうございました。図表3 レゾニック計測技術写真2 慣性特性計測機『RESONIC 450F』写真3 慣性特性計測機『RESONIC 2000F』写真1 慣性特性計測機『RESONIC 25K/2K』