ブックタイトルメカトロニクス9月号2017年

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概要

メカトロニクス9月号2017年

MECHATRONICS 2017.9 45<図表1>環境、経済、社会を三層構造で示した木の図1)の国内で取り組まなければならない課題が増えている。次に、包括的な目標を示すと同時に、各々の目標は相互に関連することが強調されており、分野横断的なアプローチが必要とされている。加えて、グローバル・パートナーシップの重視も2030 アジェンダの特徴である。具体的には、2030アジェンダの序文や、SDGsの「ゴール17(パートナーシップ)」において、目標達成のために、多種多様な関係主体が連携・協力する「マルチステークホルダー・パートナーシップ」を促進することが明記されている。 さらに、リオ+ 20で示された、環境、経済、社会の三側面統合の概念が、2030アジェンダ及びSDGsにおいて明確に打ち出されている点も特徴的である。具体的には、2030アジェンダの序文では、「持続可能な開発を、経済、社会及び環境というその3つの側面において、バランスがとれ統合された形で達成することにコミットしている」と明記されている。   この経済、社会、環境の三側面をバランスがとれ、統合された形で達成するという考え方は、環境基本計画等に示された我が国の環境政策が目指すべき方向性と基本的に同様であると言える。(C)SDGsの環境との関わり SDGsの17のゴールを見ると、「ゴール6(水)」、「ゴール12(持続可能な生産・消費)」、「ゴール13(気候変動)」、「ゴール14(海洋)」、「ゴール15(生態系・森林)」等のゴールは、特に環境と関わりが深くなっている。 これは、SDGsの前身の1 つであるMDGsには、8つのゴールのうち環境に直接関係するゴールが1つしか含まれなかったことと比較して、環境的側面が増加していることをよく表している。また、これにとどまらず、SDGsの特徴の1 つであるゴール間の関連から、その他のゴールにも環境との関わりが見られる。 例えば、一見環境との関わりが浅い「ゴール5(ジェンダー平等)」では、ゴールを達成するための手段の1 つとして、「女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する」と明記されており、森林、土壌、水、大気、自然資源等、自然によって形成される資本(ストック)である自然資本を利用することが、ゴールの達成に深く関わることを示している。 また、「ゴール8(雇用)」では、「包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)」が目標であり、そのためには、ターゲット8.4で示されているように「世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10 年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る」ことが重要であるとしている。 このように、各ゴールはターゲットを介して環境との結び付きが示され、持続可能な開発の三側面(環境、経済、社会)は一体不可分であるという考えが、ターゲットのレベルでも貫かれている。(以下、次号に続く)(2017年7月18日記)<参考資料>1)環境省編:「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」日経印刷(株)(2017.6)全文は以下のウェブサイトに掲載されている。http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h29/index.html2)United Nations:「Transforming our world:the 2030Agenda for Sustainable Development」(General Assembly Seventieth session,A/70/L.1)【(国連文書A/70/L.1を基に外務省が作成した仮訳)「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030 アジェンダ」(2015年9月25日第70回国連総会で採択)】の達成状況の評価によると、目標達成について一定の成果が上げられたとする一方で、目標の達成度は、目標、国・地域により異なっていることに加え、経済・環境に関わる目標の数が不十分だったという課題が指摘されている。 MDGsの達成に向けた取組が行われる中、2010年9 月に国連で開催された「MDGs国連首脳会合」では、MDGsの目標期限である2015年以降の開発分野での国際目標として、ポスト2015 年開発アジェンダの議論を開始することが合意され、国連事務総長に対して検討の要請が行われた。(b)「リオ+20」からの流れ 2012 年6 月に開催されたリオ+ 20の成果文書「我々が望む未来(The Future We Want)」では、あらゆる側面で持続可能な開発を達成するために、経済的、社会的、環境的側面を統合し、それらの相関を認識し、あらゆるレベルで持続可能な開発を、主流として更に組み込む必要があることを宣言した(図表1)1)。 その具体的な手段として、MDGs の課題を踏まえ、環境、経済、社会の三側面統合の概念を打ち出してSDGs を採択すること、さらに、これをMDGs の後継目標となる「ポスト2015 開発アジェンダ」に統合することが決定された。 「ポスト2015 年開発アジェンダ」の検討プロセスでは、開発の目標やターゲットだけでなく、その達成のために必要な資金の確保や活用も重要な検討課題となり、議論が進められた。 さらに、SDGsは、国連加盟国を始め、国際機関・民間企業・市民社会・研究者等の多様なステークホルダーが関わって採択された。この背景には、持続可能な開発は、私たち一人一人に影響があり、国際社会全体で取り組んでいく必要があるということに人々が気付き、行動し始めたと見ることができる。(2)SDGsの内容(a)SDGsが中核をなす2030アジェンダの  基本的な考え方 「2030アジェンダ」は、SDGsの前身の一部であるMDGs の実施に当たって浮かび上がった様々な課題を踏まえ、基本的な考え方を提示している。MDGsの課題の1つは格差の問題である。MDGsは、1 つの国を単位として達成状況を測定するマクロな指標だが、アジア諸国のように、経済成長を遂げる一方で、国内の地域間や教育、所得、文化的背景による格差が拡大している国も見られる。また、女性、子供、障害者、高齢者、難民等、立場の弱い人々が国内で取り残されないようにする取組もますます重要になる。 この流れを受け、2030 アジェンダでは目標達成に向けて、地球上の「誰一人取り残さない」(no onewill be left behind)ことを明確に掲げている。 また、2030 アジェンダの冒頭では、持続可能な開発のキーワードとして、人間(People)、地球(Planet)、繁栄(Prosperity)、平和(Peace)、連帯(Partnership)の「5つのP」を掲げている。17のゴールは、この「5つのP」を具現化したもので、ゴール・ターゲット間は相互に関連しており、統合して解決していくことが必要である。 加えて、2030 アジェンダでは、自身が掲げるゴール及びターゲットを「包括的、遠大かつ人間中心な一連の普遍的かつ変革的」なものであると表現している。地球上には、依然として貧困や飢餓に苦しむ数十億人の人々がおり、国内・国際的な不平等は拡大している。さらに、地球規模の健康の脅威、より頻繁に生じる甚大な自然災害、悪化する紛争及び深刻化する気候変動に向き合う必要がある。 しかし、2030 アジェンダでは、今日の世界をこれらの課題を解決する大きなチャンスの時と捉えている。過去、多くの開発の課題に対応するため、教育へのアクセスやデジタルデバイドの問題等で重要な進展があった。2030アジェンダでは、SDGs で野心的な目標を掲げ、その達成のために必要な手段を逆算して決めていくバックキャスティングの考え方を採用するとともに、その実施を確保するために活性化された「グローバル・パートナーシップ」を必要とする。それは、全ての目標とターゲットの実施のために地球規模レベルでの集中的な取組を促進するとしている。(b)SDGsの概要及び特徴 SDGs には、これまでの国際目標とは異なる幾つかの画期的な特徴がある。 大きな特徴の1 つは、途上国に限らず先進国を含む全ての国に目標が適用されるというユニバーサリティ(普遍性)で、MDGsと比較すると、先進国が自ら