ブックタイトルメカトロニクス1月号2017年

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メカトロニクス1月号2017年

42 MECHATRONICS 2017.1日本産業洗浄協議会名誉理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力森林が果たす地球環境上の役割~過去の森林問題の経緯をたどる(1)~【第178回】■「2030 アジェンダ」における「森林問題」(1)SDGsの17 のゴール 「2030アジェンダ」には、17 のゴール(goal)とそれらのゴールに含まれる合計169 のターゲット(target)が記されている注1)。注1)外務省訳では、“goal” は“目標”あるいは“ゴール”、“target”は“ターゲット”とされている。 前回はその17のゴールについて、その表題、説明文およびロゴマークを「SDGs=世界を変えるための17 のゴール(目標)」と題する図表を紹介した。今回は、17 のゴールについて、その表題と、ロゴマークに付されたスローガンを再掲する。・ゴール1:(貧困)貧困をなくそう・ゴール2:(飢餓)飢餓をゼロに・ゴール3:(健康な生活)すべての人に健康と福祉を・ゴール4:(教育)質の高い教育をみんなに・ゴール5:(ジェンダー平等)ジェンダー平等を実現しよう・ゴール6:(水)安全な水とトイレを世界中に・ゴール7:(エネルギー)エネルギーをみんなに     そしてクリーンに・ゴール8:(雇用)働きがいも経済成長も・ゴール9:(インフラ)産業と技術革新の基礎をつくろう・ゴール10:(不平等の是正)人や国の不平等をなくそう・ゴール11:(安全な都市)住み続けられるまちづくりを・ゴール12:(持続可能な生産・消費)つくる責任・つかう責任・ゴール13:(気候変動)気候変動に具体的な対策を・ゴール14:(海洋)海の豊かさを守ろう・ゴール15:(生態系・森林)海の豊かさも守ろう・ゴール16:(法の支配等)平和と公正をすべての人に・ゴール17:(パートナーシップ)パートナーシップで      目標を達成しよう(2)森林問題が含まれる「ゴール15」 森林問題は、「SDGs17のゴール」の中では、15 番目に掲げられている。森林問題は、まさに地球全域の問題として、また国境を越えた地球規模の問題として取り上げられている。 森林問題が含まれる「ゴール15」には、以下の説明文が付されている。 “陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する”(3)「ゴール15のターゲット」 「ゴール15」に提示されたターゲットは10項目に分かれており、その全文を以下に紹介する。15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。■パリ協定における森林問題 地球温暖化対策の新しい国際枠組みである「パリ協定」は、各国の批准の条件をクリアして、2016 年11月4日に発効した。日本は、国会の承認を経て、2016年11月8日にパリ協定の締結を決定し、同日、国連事務総長宛に寄託した。 その時期に重なるようにして11月7日から18日まで、マラケシュ(モロッコ)において、国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)、京都議定書第12回締約国会合(CMP12)等が行われていたが、11月4日にパリ協定が発効したことを受けて、同月15日から18日までパリ協定第1回締約国会合(CMA1)が行われた注2)。注2)関連国際会議の名称・気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22):The twentysecondsession of the Conference of the Parties・京都議定書第12回締約国会議(CMP12):The twelfth session ofthe Conference of the Parties serving as the meeting of theParties to the Kyoto Protocol・パリ協定第1回締約国会議(CMA1):The fi rst session of theConference of the Parties serving as the meeting of theParties to the Paris Agreement 京都議定書は、1997年に京都市で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された。先進国に対して、法的な拘束力を持った温室効果ガス(GHG)削減の数値目標を国ごとに設定し、2008年~2012年「の第一約束期間に先進国全体で1990年の排出実績に対して少なくとも5%削減を達成することを定めた。京都議定書では、削減目標を達成するために、国内の森林から得られるCO2の吸収排出量はその国の削減量・排出量に参入できるとされていた。 パリ協定に実効性をもたせるための詳細ルールについては、2018年までに作成することとされて、その工程表が採択された。パリ協定は、地球の気温上昇をおさえるため、21世紀末までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという画期的な国際協定であり、国連条約の中では異例の速さで、採択から1年をまたずに発効した。 前回に取り上げた“持続可能な開発”の問題にはさまざまな課題が内包されている。その議論の中で成文化された「2030アジェンダ」の中核をなすSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のゴール)には地球環境も含まれて、“17のゴールと169のターゲット”が掲げられている。蟹江憲史(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授)はSDGsについて以下のように述べている。 “2030年に世界が健全な状態を保つためには、もはや地球環境を前提条件として考えた成長は必然である。20世紀半ばに始まった資源の急激な使用量増大は、大きな経済成長をもたらした。しかし一方で気候や生物多様性の損失など、地球の姿そのものを変える取り返しのつかない変動をもたらしている。・・・世界の成長戦略には、環境配慮を当然の前提とした経済成長が必須なのである。・・・21世紀の世界を生き抜く成長戦略では、経済・社会・環境の問題をパッケージで考えなければならない。1)” その中には、地球環境問題に直接関わるものとして、“気候変動”、“海洋”、“生態系・森林”が取り上げられている。その森林問題は、生態系並びに生物多様性の問題と結びつけて議論され、個々の国の固有な問題としてではなく、地球の誕生からこれまでに地球を変貌させた生命体の誕生、発達、保持に必須のかけがえのない環境問題として永年にわたり繰り返し取り上げられている。 今回は、過去に取り上げられた森林問題に関する経緯を、地球環境問題を巾広く議論する参考として紹介する。<図表1>COP22およびCMP12のロゴマーク