ブックタイトルメカトロニクス1月号2017年

ページ
10/52

このページは メカトロニクス1月号2017年 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

メカトロニクス1月号2017年

10 MECHATRONICS 2017.1 金属3D プリンタ造形サービスを始め られた経緯についてお聞かせ下さい石塚 : 当社は、来年の2月に創業85 年を迎える企業で、主に非鉄金属の卸売業を営んでおり、アルミニウムや伸銅品、ステンレスなどの板や棒といった、一般的なJIS の工業用材料をお客様に提供しています。金属3Dプリンタについては、世界的に見れば20 年近い長い歴史があると思うのですが、当社が着目したのは2013年頃でした。 この金属3Dプリンタが台頭してきた場合、従来の金属ブロックを切削して部品をつくるというアプローチから、薄い金属層を焼結しながら積み上げて部品をつくるというまったく異なるアプローチに変わるため、当社がこれまで提供してきた切削用材料の市場がどうなっていくのかという危機感がありました。一方では、かなり可能性のある製造工法だと思うので、これを国内の大手企業が研究を重ねていき、最終的に3Dプリンタでなくては形にできないような部品を当社の取引先となる金属加工業者に依頼するようなことになると、そこでは3Dプリンタを導入せざるを得ないような状況になってきます。 当社の経営理念にもあるのですが、“ものづくりに貢献する”といった面からいいますと、現状は切削用材料を提供することで日本のものづくりを支えていますが、ゆくゆくは造形品として提供していくことで、結果的に双方向から日本のものづくりのお役に立てるのではと思ったのが、今回の金属3Dプリンタ造形サービスを始めたきっかけになっています。そして2015 年1月より、神奈川県厚木市にある当社の神奈川工場に金属 本業とする非鉄金属の卸売業以外に、金属3Dプリンタの造形サービスという新たな事業をスタートさせた白銅株式会社。今回は、金属3Dプリンタの市場動向や同社の造形サービスの特徴などについて、特注品営業部 3Dプリンター課 課長 石塚 伸一 氏にお話を伺った。白銅株式会社特注品営業部3D プリンター課 課長石塚 伸一 氏試作品だけでなく量産化への可能性を秘めた金属3Dプリンタ造形サービス~様々な設計のアイデアを独自のノウハウを活かした造形で提案~3Dプリンタ1 台を設置して、受託製造という形でサービスをスタートさせています。 金属3Dプリンタの市場動向などにつ いてお聞かせ下さい石塚 : 3Dプリンタは、樹脂の方が先行してブームになり、金属に関してはあまり知られていませんでしたが、当社が市場調査を開始した2013年頃と比べて、ここ1、2 年で認知度が確実に上がってきています。ただ、認知度が上がることで、今までの製造方法ではできなかった形状のものや、2ピース3ピースをアセンブリーしていた部品などを1ピースでできるというポジティブな認識だけでなく、従来の機械加工や鋳造/鍛造などの型を起こす製造方法に比べると、精度面や量産性において劣ってしまうというネガティブな認識をすでにお客様がもっていることがいえます。そのため、用途としては試作品や自社で使う治工具などが中心で、まだ国内では製品を量産する目的ではほとんど使われていないのが現状です。 しかし、海外に目を向けて見ると、欧州ではすでに金属3Dプリンタを使った製品の製造が進んでいるようです。私自身、海外の市場動向を調査するため、今年の5月にイギリス/ベルギー/ドイツの3ヵ国へ出張し、当社と同じ受託製造として事業を展開している5 社を視察してきました。そこでは、当社のような試作品の請け負いではなく、80~90 %が世に出ていく製品の請け負いを行っており、残りの10~20%で次の量産品案件の試作品をお客様と繰り返し造形していました。これは、私が視察した5 社ともすべて同じような状況でした。この業界にいると、欧米などと比べて日本の金属3Dプリンタ事業は何年も遅れているということを良く耳にしますが、これが現実だということを実感しました。ただ遅れてはいても、実際に成功例があるのですから、まったく先行きが分からない状況ではないので、目指していく方向性は参考にさせて頂けたと思っています。 日本国内で、当社と同じように金属3Dプリンタの受託製造を行っている所は、私の知る限りで数社ありますが、その中でも当社は比較的早い段階から参入していたと認識しています。その中で培われた金属3Dプリンタの知識を活かし、当社の主催するセミナーや関連する展示会に出展して活用事例などを指し示していくことにより、お客様が徐々に金属3Dプリンタを活用して部品の性能を最大限に引き出せる形状を設計していこうといった頭の切り替えができれば、受託製造は伸びていくと思います。さらに、金属3Dプリンタの販売台写真1 3D Systems社製金属3Dプリンタ『ProX300』写真3 SUS630を使用した造形事例写真2 マルエージング鋼を使用した造形事例