ブックタイトルメカトロニクス12月号2016年

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概要

メカトロニクス12月号2016年

MECHATRONICS 2016.12 411. 自動化されたライン 前回は紀の川工場のラインの途中までご紹介した。今回はその続きである。 紀の川工場の3ラインは、同社を特徴づけるコンベアストップ生産方式を、いわば「いいとこ取り」をしたハイブリッドなラインとなっている。セル生産は、「工程内でどれだけの時間がかかっているか」が見にくい部分があるため、センサ類を用いることによって「この作業にどれだけの時間を要しているか」が見えるようになっている。そしてそのデータを使い、問題点を抽出していくことができるシステムを取り入れているのである。 製造ラインの最後には、複数台を並行した自動調整検査システムが採用されており、作業者が本体をセットすると自動的に調整し、検査が行われる(写真1)。いうまでもなく、ラインが自動化されているため、調整値や検査値のデータもすべてサーバに上げられ、これらがPCで管理できるような形になっている。そして、そのデータを用いて品質のさらなる向上が図られる他、「数値が長期間安定している」ということになれば、その項目の検査を抜き取り方式にして効率を上げる、というような取り組みも行われる。 もちろん品質に関するデータも日々、蓄積されており、生産管理部における厳密な予兆管理も実現されている。2. ミスを防ぐために 自動化と合わせて、作業上のミス=「ポカよけ」のための取り組みとして、作業工程の各所にもセンサが採用されている。 写真2にある機械は、作業と連動したセンサが組み込まれており、ひとつの作業が抜けていると次の作業に移ることができない。たとえば、ねじ止めと部品のピックアップや、ディスペンサでボンドを塗るなどの作業忘れを防止するため、一連の作業の流れを機械で管理し、作業が連動していなければエラーの警告音が鳴る、というような形で作業のもれを防いでいる。 先にご紹介した有田工場は、梱包と生産ラインが分かれていたが、紀の川工場は、組み立てから調整、検査、梱包までを一貫で流しているのが大きな特徴である。 同工場では製品の梱包においても、それに先んじて、まずは検査時に残されたログと本体のシリアルのバーコードが照合される。また、製品には様々な付属品があるため、入れ忘れがないよう、必ずセンサを使った員数管理の他、最終的に秤で全体の重さを計測している。入れ忘れや入れすぎなどがあると重さが違うため、その過不足が分かるのである(写真3)。 付属品類、並びに製品がすべて詰められた箱が梱包のためのライン(写真4)に載せられると、自動的に流れ、テーピングする機械によって上下にテープが貼られる。また、振られたバーコードを読み取り、箱に製品に応じた印刷が行われ(写真5)、印刷後に振り分け器で振り分けられる。その後、品質管理課によって抜き取り検査が行われ、OKになったものだけが出荷される(写真6)。3. 改善課 このように、ラインは自動化されてはいるが、しかし、ラインに作業者が合わせるのではなく、作業者のやりやすさが優先される体制になっているのは、本項でくりかえしお伝えしてきた通りである。同社のものづくり現場を支える取り組みとして、以前ご紹介した改善課は同工場にもあり、日々の作業環境の改善に努められている。 現場から「やりにくい」という声が上がれば、やりやすい形に改善し、「ここをこうしたらどうか」という提案があれば、大きなことだけでなく小さなことでも積極的に採用して、日々の生産性の向上を実現しているのである。 ちなみに、改善に向けたミーティングは月に二度ほど行われているという。そして、作業者から出てきた意見をラインの管理者が持ち寄り、改善に向けた案を出し合って、部署単位で改善できることは部署内で対応しつつ、対応しきれない部分については改善課に協力してもらっているという。 いずれにしても、このような意見を吸い上げてくれることは従業員にとってもやりがいに繋がることだろう。 このように現場を見せていただいていると、「これだけ成熟した現場なのだから、改善ポイントはもうないのではないか」と思うであるが、「これがやりにくい」「やりやすくしてほしい」という要望があるものなのだという(写真7)。 そしてなにより特筆すべきは、それに応えようとする社の姿勢である。会社側と作業者側のそれぞれが、共にそれぞれの要請に応えることで、同社の優れたものづくりが実現しているのである。独自の生産ラインを構築し、高い生産性と高品質な製品づくりを実現する、和歌山アイコムの取り組み(その⑧)写真2 作業の抜けがないよう、センサが組み込まれている写真4 梱包のためのライン写真7 構内に掲示された改善事例写真6 梱包が終わった製品については随時、抜き取り検査が実施される写真1 複数台が稼働する検査工程写真3 箱詰め作業も厳密に管理される写真5 箱への印刷工場レポート