ブックタイトルメカトロニクス10月号2016年

ページ
41/52

このページは メカトロニクス10月号2016年 の電子ブックに掲載されている41ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

メカトロニクス10月号2016年

MECHATRONICS 2016.10 411. はじめに 今回から、和歌山アイコム(株)の紀の川工場についてご紹介する。 同社の工場は当初は和歌山県有田郡の有田工場だけであった。しかし、その後の生産量の拡大などに伴い、2009年3 月に、有田工場から車で約60 分ほどの地である紀の川市に紀の川工場が設立された(写真1)。 同工場では、自動化ラインが採用されている他、作業や運搬などにおける動線に配慮したレイアウトとするために事務所の機能以外を平屋建てとするなどといった配慮がなされている。加えて、同工場では、製品の箱詰め作業までを同一ラインで行うことができるなど、システマティックなものとなっているのも大きな特徴となっている。 有田と紀の川の「2 工場体制」としている理由の一つには、たとえば災害が発生したとしてもどちらの工場が稼働できるような体制を確立しておく、という狙いもあることから、紀の川工場についても独立した機能を有することができる方向でプランニングされている。2. 資材の管理 紀の川工場の資材課では、毎日納品される各部品や有田工場で実装された基板、箱詰めに使用する化粧箱などを、それぞれの現場で使いやすいように仕分けした上で供給しており、その後の工程である 組み立て→調整・検査→梱包(※随時、抜き取り検査を実施)の、スムーズな流れをサポートしている。 納品された部品や基板は一度、倉庫に納められる(写真2)。場所については番地設定され、すべてはバーコードによって管理されている(写真3、写真4)。「どの機種のどの部品が、どこにあるか」ということはすべて登録されているので、番地の指示に従って部品をもってくれば仕分けできるようになっている。 仕分け作業(ピッキング)は、PCを積んだキャスタ付きの机(写真5)を押しながら行われる。集める部品についての指示は、数や番地の指定とともにPC のディスプレイに示される。部品によっては細かいものが大量に入ってくるものがあるが、その場合は必要な分を、秤を使って計量する。 ピッキングを行ったら、「どの機種でいくつ使うか」、という情報を明記したラベルを発行し、ピックアップした部品とともに、有田工場でも活躍していた自動搬送車(写真6)によって、仕向け先に送られる。3. 製造フロア1. IPS方式の採用 同工場の製造ラインは、通常ラインと、自動化されたラインで構成されている。自動化ラインに充てられた人員は通常ラインよりも少ないが、通常ラインと同じくらいの生産台数をこなしている。 通常ラインについては、有田工場と同様に、コンベアを用いたストップ生産方式、IPS(アイコム・プロダクト・システム)が採用されている。ここでIPSについて、今一度説明しておく。 工程は、1 本のコンベアでつながっている。各工程にはそれぞれの生産時間を管理するためのストップスイッチが備えられている。コンベア上を生産品が流れていくが、作業にあたって無理が生じた場合はストップボタンを押し、コンベアを停止させる。そして、ストップをかけることとなったその原因、及び問題点を改善する。そしてコンベアの停止がまったく起こらなくなったら生産タクトを早くする。すると、新たに問題点が出てくるのでそこを改善していく。つまり、「コンベアを使った改善システム」である。2. ライン 各工程には、写真7 のように「カンバン」が表示をされている。一番上の数字が「生産の予定台数」、中段の数字が「現在の時間での、適正生産台数」、一番下の数字が「実績台数」で、クリアしていれば青字での表記に、未達の場合は赤い字で表記される。また、ディスプレイに表示された時計は「ストップ時間」を示している。作業がストップするとラインが止まると共に時計が動き出す。有田工場では実際の時計を使っていたが、こちらではデジタル表示となっている。 通常ラインの構成は、まず上流に組み立てラインがあり、その真ん中に電波シールドルームがある。生産品目によっては、電波の干渉に配慮する必要があるからである。そしてこの後ろに梱包ラインが設けられている。 写真8は自動化ラインの入り口、そして写真9は同ラインに設置された自動はんだ付けロボットである。このロボットが担うはんだ付けの個所は、生産品の中でも特に配慮が必要な、ボタン部分などの「使用時に応力がかかるところ」であるという。他の工程では手はんだによる作業が行われているが、このように一部、自動化しているのである。 もちろん、自動化にあたっては、汎用性という面にも配慮しなければならない。そこで、基板を挟み込むための治具を生産品の機種ごとに用意しており(写真10)、機種の変更の際には治具とプログラムを入れ替える。これによって、若干、形の違うものにも対応できるようになっている。 写真11は、有田工場でも使用されているねじ締めロボットである。こちらについても、受け台だけ変えれば、いろいろな機種に対応することができる。独自の生産ラインを構築し、高い生産性と高品質な製品づくりを実現する、和歌山アイコムの取り組み(その⑦)写真3 各部材はバーコードで管理される写真6 紀の川工場でも大活躍の自動搬送車写真8 自動化ラインの入り口の机 写真11 ねじ締めロボット写真7 工程の「カンバン」 写真10 治具写真9 自動はんだ付けロボット写真2 各部品などが置かれる倉庫写真5 仕分けの際に用いられる、PC を搭載したキャスタ付き写真1 紀の川工場写真4 置く場所は番地が指定されている工場レポート