ブックタイトルメカトロニクス2月号2016年

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概要

メカトロニクス2月号2016年

44 MECHATRONICS 2016.2図3-24 熱転写押圧装置および加工に関する特許文献 3-15)(その1)図3-23 熱転写押圧装置 3-14)《第82回》3 製造をみてみよう(その8)1.導光板の放出素子の敷設(6)成形加工(その3) 樹脂成形技術を駆使してさまざまな製品を製造し、特にCD版などの情報部材を射出成形する工程管理を研究し、金型構造などに特異の知恵を注入していた知人が横浜に居られた。「射出成形製法ではなく、次は熱転写を活用して液晶画像表示装置のバックライトを生産するのだ!」といって勇んで来訪され、所望していた導光板の設計図をもって、一家共々に台湾へ移住して行った。今から数年前のことだった。彼の事業は順調に進展したのだろうか。 平面状の導光板を射出成形加工するには、樹脂粒子を溶融する熱エネルギーの他に、その溶融樹脂を金型に押し込める圧力は導光板の面積に応じて相当な機械エネルギーが必要になる。溶融樹脂を金型に注入しその樹脂の冷却状況をもってシリンダが往復運動する工程時間の間隔は、速いとは感じられない。単純な平面状の導光板を成形する手段として、射出成形方法は必ずしも適切な手段ではないのだ。液晶画像表示装置が販路に上った初期の1990年代には、射出成形装置を稼動させて多くの作業者が精励していたが、市場提供価格の下落も要因となって、作業場に反響していたシリンダの稼動音響はやがて薄れていった。このような折に、横浜の知人は射出成形手段から熱転写手段へと対策を転換したのだろう。 導光板は平板形状であるから溶融樹脂を折角に平面状に形成することなく、平板そのものの表面に放出素子を直接に押圧形成する製法のほうが素直である。このような機運の2000年代に救世主のごとく現れたのが、熱転写成形法である(図3-23)。放出素子の凹凸に相当する模様が刻まれたスタンパが上方と下方に配置された空間へ、平面状の樹脂板を挿入設置する(装着工程)。次に格納した空間を閉じ、内部全体の空気を排出して真空にし、上下のストローク160mmほどのスタンパで樹脂板をはさむ(挿入/真空工程)。スタンパの背後には、流路管を内蔵した温調板が配置されているので、流路管に蒸気を流通させてスタンパを常温60℃から高温150℃へ15秒ほどで加熱しながら押圧すると、スタンパの凹凸模様が樹脂平板に転写される(加熱/加圧工程)。次に流路管に冷水を10秒間ほど貫流させてスタンパを常温60℃に戻し(冷却工程)、真空を解除して収納室を開放し、製品を取り出す(離型工程)。収納室を真空に設定する理由は、転写機能を邪魔する気泡が樹脂平板とスタンパとの間隙に挟まれないようにするためである。スタンパの加圧力は最高1,000kN(102ton)で、画面サイズ20″×t10mmも可能とのこと。 総体的に、射出成形法よりも生産効率は良好となる。熱転写機能を発揮させるために、成形装置の機構にはいろいろの工夫が施されている(図3-24 ①~⑫)。スタンパに敷設する放出素子の模様は鋭利な凹凸面が望まれるようで、先端が円球形状のドリル工具を用いて相互に外接する4つの円形凹状に切削すると、削除で残った部分に角錐状凸部が形成されるとの試案が提示されている(図3-24 ⑬~⑭)。こうしてスタンパに施された高さ30~100μmのドッ