ブックタイトルメカトロニクス1月号2016年

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概要

メカトロニクス1月号2016年

44 MECHATRONICS 2016.1図3-19 成形機内における樹脂材料の温度推移 3-10)《第81回》3 製造をみてみよう(その7)1.導光板の放出素子の敷設(6)成形加工(その2) 射出成形方法とは、固体の樹脂材料を加熱して粘性液体に変え、金型に注入し、冷却して固化した後に金型を開放して、成形された樹脂製品を取出す製造手段である。樹脂が射出成形される過程において、どの様な温度変化をしてゆくのであろうか。複数の資料から射出成形機の管理温度を図示化してみた(図3-19)。ホッパに投入された熱可塑性樹脂ペレットは、スクリューで送られ、シリンダ内で加熱される(可塑化工程)。スクリューが逆回転してシリンダ内部を前進する樹脂は、徐々に温度が上昇してゆき、シリンダ先端の計量部でガラス転移温度Tgより高温の粘液になる。スクリューの先端に背圧が生じ、スクリューは後退する。射出機構で押圧されたシリンダが直進すると、与圧に押されて樹脂粘液は金型へ注入される(射出工程)。金型にはシリンダのヒータとは別系統の加熱経路が張り巡らされて、注入されてきた樹脂粘液をガラス転移温度付近にまで調温し、押圧力を保持しながらやがて冷却してゆく(保圧冷却工程)。樹脂の温度推移は、ガラス転移温度を基準にして図示化すると理解しやすい。図中で温度変化が乱れたように打点されているのは、樹脂の軟化特性や射出成形機の装置固有の機能・特性に合わせ、作業の効率を考慮して成形作業者が温度管理をしているからであろう(既出図3-17)。 横型射出成形機による導光板の製造は、導光板が薄板であるにかかわらず広い面積のために、強い押圧力が必要である。またシリンダから金型内部までの流路には、スプールやランナ、ゲートを連結して、樹脂粘液を円滑に流動させる。樹脂製品を取出した後に、これらの連結部材は分離される。分離された部材は再活用される。とは言えバックライト直下照明用レンズの場合、指先ほどの小さな製品を連結部材と一緒に成形することは材料の無駄とも感じる。このような小物製品を量産する場合に、回転テーブルを設置して竪型射出成形機を稼動させる手段は、適切かもしれない(図3-20)。 樹脂製品を成形する場合、製品の肉厚には適当な厚さが求められる。大略0.5mmから10mmであり、その寸法公差は数%である(図3-21)。このドイツ工業規格DINは、数値が若干異なるが、日本工業規格JIS B 0404の公差等級14級にほぼ相当している。 しかし精密な光学部品を製造するには1μm相当の加工・測定精度が必要とされ、規定限度の公差等級12級でも未だ不十分だ。 2000年に入ると成形技術はガラス材料にも適用されてきたが、本来の樹脂材料は軽量で、微小形状や結像光学系で要求される非球面など複雑な形状の成形が可能。原料費も若干有利である。約φ6mmレンズをガラス成形で製作するには30分が必要だが、樹脂成形時間では30秒以内で可能だ。ただしガラスの数十種類に対して、光学樹脂は十種類ほどで選択肢が限定され、温度により屈折率と形状とが変化する欠点もある(図3-22)。 CD/DVD用ピックアップレンズは結像光学系に属し、屈折面を非球面化するためにはプラスチック材料が有利である。高分散(低アッベ数)のポリカーボネイトPCレンズと低分散(高アッベ数)のアクリル樹脂PMMAレンズとを組み合わせれば、色収差を低減した合わせレンズが得られる。また、光ディスクには転写性(流動性)と低複屈折が求められるので、光学用ポリカーボネイトPCが用いられている。 さて、照明光学系である導光板には、高透過率や転写性、低吸水性に優れたアクリル樹脂PMMが汎用されているが、さらなる薄肉化や低衝撃性、耐熱性、難燃性などの対応には、ポリカーボネイトPCへの切換えも進んでいる。バックライトに実装する直下照明レンズは照明光学系に属するので、結像光学系とは異なる数理設計を適用しよう。【参考文献】3‐10) 本間精一「ポリカーボネイト樹脂ハンドブック」日刊工業新聞1992  廣恵・本吉「成形加工技術者のプラスチック物性入門」日刊工業新聞社1996  「プラスチック材料の特性の理解」(電子版)  安田武夫「プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果」プラスチック51-12,52-8  金井俊孝(出光興産機能材料研究所)「光学材料・光学部材の最近10年の進歩」成形加工2008-8  3‐11)(株)山城精機製作所「ターンテーブル式竪型射出成形機」3‐12) DIN1690:Kunststoffe-Formteil,Toleranzen undAbnahmebedingungen fur Langenmase.  3‐13) 吉岡博「透明ポリマーの屈折率制御」化学総説9・1998  川村隆之「レンズ特性とその選択について」視覚の科学2004-6  大林・他「熱可塑性ナノコンポジット光学材料の開発」富士フイルム有機合成化学研究所58-20133 製造を見てみよう(その8)