ブックタイトルメカトロニクス8月号2015年

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概要

メカトロニクス8月号2015年

44 MECHATRONICS 2015.8表3-2 双方向照射方式における放出率の算出手順《第76回》3 製造をみてみよう(その2)1.導光板の放出素子の敷設(2)双側方照射方式の放出率を設定 小型画面の液晶画像表示装置であれば片方向照明方式の導光板が装備されているが、中型の液晶画像表示装置であれば光源を上下または左右に配置した双方向照明方式の導光板が適用されている。さらに大型の画面に対しては、輝度不足や輝度むらを解消するために直下照明方式が採用されている。 双側方照明方式は左右または上下両側に複数の光源を配置した導光板がバックライトに実装される。バックライトの導光板に放出素子を敷設する密度分布を設計計算するのは、やや手間がかかる。双方向照射方式だから、敷設される放出素子には左右両側からの照射光線束が交わり重なり合って作用する。 放出素子の敷設された状況から液晶画面を照明すべき放出光線束が発現するまでの過程を表3-2に示す。計算手順は既に本稿の第23回「双方向照明方式導光板の設計」で詳細に説明している。照射光線束の挙動を解析するためには、基準点を画面中央に設定する。誘導光束Φ(0)を基準として、下流方向の距離xにおいて順行照射光束は ΦL(x)=Φ0-[φ0+φ1+・・・+φx-1]であり、逆行照射光束は ΦR(x)=Φ0+[φ0+φ1+・・・+φx-1]となるので、その距離での放出光束は φ(x)=[ΦL(x)+ΦR(x)]γ(x) である。もしこの照射光束の誘導経過を敷設されている放出素子の放出率γ(ガンマの小文字)で表現するならば、 ΦL(x)=Φ0[(1-γ0)(1-γ1)・・・(1-γx-1)]および ΦR(x)=Φ0[(1+γ0)(1+γ1)・・・(1+γx-1)]である。この数式を観察すると、放出率の分布は中央基準点から左右には同値であるから、この放出率の相乗をΓ(ガンマの大文字)とすれば、 ΦL(x)=Φ0・Γ および Φ0=ΦR(x)・Γ であることに気が付く。そして ΦL(x)+ΦR(x)=2Φ0 や ΦL(x)・ΦR(x)=Φ0 の関係までもが得られる。均等照度分布を得るために φ(-x)≡一定 とすれば、距離xに応じた放出率γ(x)が算出できる。 以上の解析は正当な手順である。だが少々の思考力が要る。それならばいっそのこと、片側照射方式の導光板2枚を突き合わせた構造を想定してみよう。双方向照射方式が即座に理解できるようになるだろう(図3-5)。突合せこの個所では放出率を100%にとどめ置いて、他の導光板への光線漏れないようにしておく。放出逆率を表す線図は直線であり、2本を突き合わせるとV字状を呈している。 この2枚の導光板を1枚に見立てて双方向照射方式の構成とみなすには、左右の導光板からの光線誘導を相互に許すべきだと思慮しているうちに、突合せ構成が演出しているV字特性線が、一点から二直線に変わり、1本の双曲線へ移り、放物線そして楕円から円へと推移する円錐曲線の幾何学関係が思い浮かんでくる。前回の片方照射方式の場合に、誘導距離xを独立変数に設定し放出逆率1/γを従属変数として対応させて試算したところ、放出率分布がきれいに表現できた手法を思い出して見よう。その経験を今回の双方向照射方式に応用するために、放出逆率1/γに双曲線関数 [1/γx/X]2-[x/X]2=1 を当てはめてみると、放出率分布曲線は富士山型になるが、左右からの照射による放出光束φは互いに歩み寄りながら合計された放出光線束φは見事な直線を描かれているではないか(図3-6(a))。均等照度が得られるのだ。数式適用の新しい手法を発見して勇気付けられ、次々と性能曲線群を描くことができた。まさに驚きの予期してなかった裏技である。そして第23回で説明した正面攻勢的な計算手順に対しても、理論を裏付けられるのであった。 さらに照射画面に中央部から周辺部へと照度の変化を与えたければ、第31回の既出図2-150「双方向照射方式における放出率の推移を算出する手順」を実行すればよい。 円錐曲線群を分け入って高揚した気分になったところで、次にはこの手法を放物線の領域にまで踏み込んでみた(図3-7)。しかし放出光線束φが示す照度分布は波打つ状態で現れ、満足できない。試算試行は行き過ぎたようだ。 光源が1個所にしかない片方向照明方式と異なり、双方向照明方式では離れた2個所に光源が敷設され、両側からの誘導光線束が画面の中央付近では交じり合うので、導光板に敷設されている放出素子の放出率γが過少であっても、程よい輝度を発揮する。放出率100%を理想すれば、両側からの誘導光線束を中央付近で放出作用する放出素子の放出率γは5%くらいに性能が落ちていても明るさ効率ηを90%に保持できると、計算された(図3-6(c))。双方向照明方式の導光板を製造するとき、放出素子の放出率γの多寡を心配するより、導光距離に対応して放出率γを図3-6(a)を参考にしながら合理的に敷設するほうが賢い。3 製造を見てみよう(その3)