ブックタイトルメカトロニクス8月号2015年

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概要

メカトロニクス8月号2015年

MECHATRONICS 2015.8 43 事業者による化学物質の適正管理と環境・リスクコミュニケーションの促進を目指して、市民、事業者を対象とした化学物質対策セミナーが毎年開催されている。 2013年11月に開催されたセミナーでは、市の化学物質対策に関する情報提供のほか、国の化学物質対策の取組・動向についての説明や、化学物質アドバイザーによる環境・リスクコミュニケーションの解説、市内 事業者からの環境・リスクコミュニケーション取組事例の紹介があった。また、化学物質の環境リスク評価の解説やコンピューターを用いたリスク評価の解析演習も行われた。②福島県が高校生を対象に実施した化学物質リスクコミュニケーションの事例発表・交流会の取組(略)(3)企業の取組 環境リスクを減らすために事業所、市民、行政が共に話し合い、行動していくことが求められている。以下の事例は、2013年10月に埼玉県にある事業所で行われたものである。(a)実施のきっかけ この事業者は空調・冷凍機器やその中で使用されるフロン類(冷媒)等の製造・販売を行っており、地球温暖化に関連したテーマで小学生に対して環境教育を毎年実施している。今回はフロン類を実際に取り扱う事業所が、納涼祭や地域防災訓練で普段から関わりが深い地域住民に対して、フロン類に係る取組について理解を深めてもらうことを目的として実施したものである。(b)取組の概要 このリスクコミュニケーションは「フロンを知って地球を守ろう」という副題で、住民29名、行政(国、県、市)12名、事業所10名、NPO3名、ファシリテーター(独立行政法人国立環境研究所の研究員)1名の合計55名が参加し、県内の文化センターで開催された。会社全体と事業所の取組に関する説明、NPOによる気象と地球環境に関する講義の後に、「市民がフロン類の回収に協力する意義」について参加者全員で話し合った。(c)住民との意見交換の内容、参加者の感想 住民からは、・フロン類の代替物質は?・海外でのフロン類の回収状況は?・市民として一番大切なことは?などの質問があった。 リスクコミュニケーション実施後には、「事業所から排出されるフロン類の量を2001年度比1%まで削減したことに驚いた。」、「日本のフロン類に関する取組は世界に誇れるものである。」、「事業活動と環境保全の両立は非常に重要である。」などの参加者の感想があった。 また、開催した事業者からは、「事業所の取組を知ってもらう貴重な機会と考えた。」、「フロン類の排出量削減に使命感を持って取り組んできたことを発表できて良かった。」などの感想があった。■第Ⅴ部 もっと知りたい時には参考資料の紹介(略)(2015.4.12記)<参考資料>1)経済産業省・環境省:「(報道発表)平成25年度PRTRデータの概要等について-化学物質の排出量・移動量の集計結果等-(お知らせ)」(2015.3.6)2)環境省編集:「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック 化学物質による環境リスクを減らすために~平成24年度集計結果から~」環境省環境保健部環境安全課(2015年1月)3)環境省環境保健部環境安全課:「化学物質ファクトシート 2012年版」環境省環境保健部環境安全課(2014年12月)http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet.html3.リスクコミュニケーションを支援する仕組み(1)化学物質に関する冊子①「化学物質ファクトシート 2012年版」 環境省では、第一種指定化学物質について、個々の情報をわかりやすく整理し、簡素にまとめた「化学物質ファクトシート」を作成して、以下のような項目について専門家以外の人々にもわかりやすく説明している。・物質名、別名、PRTR政令番号、CAS番号、構造式・用途(その化学物質がどのように使用されているか)・排出・移動(環境中への排出量・移動量、主な排出源、主な排出先など)・環境中での動き(環境中に排出された後の化学物質の動き、当該物質が主に存在する媒体など)・健康影響(人の健康への有害性についての記載、またはPRTR対象化学物質に選ばれる理由となった毒性等について)・基本的な情報の一覧表(性状、生産量、排出・移動量、PRTR対象選定理由、環境データ、適用法令等)・引用/参考文献及び用途に関する参考文献のリスト 化学物質ファクトシートの最新版は2014年12月に発行された2012年版3)で、その詳細および印刷物の入手方法は、環境省のホームページ上で見ることができる注11)。注11)http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet.html②「かんたん化学物質ガイド」 環境省では、家庭や自動車等の身近なところから排出される化学物質について、市民が自らの生活と関連付けて考え、化学物質の正しい利用や廃棄など、市民一人一人ができる環境リスクの低減のための取組について考えるきっかけとなるよう、子どもにも親しみやすい小冊子「かんたん化学物質ガイド」を作成し、環境省のホームページ上でも見ることができる注12)。注12)http://www.env.go.jp/chemi/communication/guide/index.html(2)化学物質アドバイザー 化学物質やその環境リスクに関する話は、とかく専門的になりがちで、一般の市民には理解できないことも多々ある。また、事業者の中にも「化学物質は使っているが、詳しい知識が必ずしもあるわけではなく、うまく説明できない」場合もある。そのような状態でコミュニケーションをしても、相手の説明が理解できなかったり、場合によっては「難しい言葉ばかりを並べ立てられて言いくるめられてしまった」というようなマイナスイメージを持ってしまったりする。 そこで、環境省では化学に関する知識が少ない市民や化学物質の専門家でない事業者を知識の面から支援する仕組みとして「化学物質アドバイザー」制度を設けている。 化学物質アドバイザーの活躍場面はリスクコミュニケーションの場だけではない。この他に「身の周りの化学物質について」、「界面活性剤(洗剤)について」など人々の生活に密接に関わっている化学物質をより理解できるようお手伝いをしている。もちろん、行政や事業者の内部研修会や行政が主催する各種説明会にも講師として参加し、幅広く活躍している。 コラム化学物質アドバイザーに関する問い合わせ先は下記URLで確認できる注13)。注13)http://www.env.go.jp/chemi/communication/taiwa/index.html(3)GHS GHS注14)とは、化学品の危険有害性(ハザード)ごとの各国の分類基準及びラベルや安全データシートの内容を調和させ、世界的に統一したルールとして提供するというものである。注14)GHS: Globally Harmonized System of Classifi cationand Labelling of Chemicals、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム、GHSで分類・表示される危険有害性としては、爆発性や引火性、急性毒性、発がん性、水生環境有害性などがあり、それぞれに危険有害性の程度に応じたシンボルマーク(絵表示)と、「危険」または「警告」という注意喚起のための表示(注意喚起語)などが決められている。 さらに、ラベルには、「飲み込むと生命に危険」といった危険有害性情報、応急処置や廃棄方法といった注意書きが付けられる。 GHSは、世界的に統一された分類・表示により、化学品の危険有害性をわかりやすくすることを目的とした仕組みであり、この制度の導入により、化学品による事故などを減らすことが期待されている。また、化学品を購入する時に、人の健康や環境に配慮した製品を選択することができるようになる。 具体的には、化学品の製造業者や輸入業者などが、GHSで決められた基準に従って化学品を分類し、表示を行っていくこととなる。販売業者や消費者などは、この分類表示により、身の周りにある化学品の危険有害性をより正しく知ることができるようになる。 また、それらの表示に従って化学品を正しく取り扱うことで、誤った取り扱いによって引き起こされる事故などを防ぎ、人の健康及び環境の保護がより進むことが期待される注15)。注15)http://www.env.go.jp/chemi/ghs/4. PRTRデータの活用例(1)NGO・NPOの取組①特定非営利活動法人有害化学物質削減ネットワーク(略称:Tウォッチ) PRTRデータを市民が有効活用できるように、わかりやすく情報提供する市民のネットワーク(2002年任意団体として発足、2004 年10 月NPO 法人として認可)。 PRTR 情報を活用して、有害化学物質削減に取り組んでおり、ホームページ上のPRTR検索データベースでは、さまざまな検索方法でPRTR届出情報の閲覧や比較をすることができる注16)。注16)http://toxwatch.net/②エコケミストリー研究会 1990年に「化学物質と環境との調和」という目標を掲げて設立され、幅広い立場の人が化学物質に関する最新情報を共有し、意見交換できる場を提供している。ホームページ上のPRTR 情報には、リスクの高い地域や物質がわかる「市区町村別の毒性重み付け排出量」とその順位や原因物質、自主管理の目標となる「環境管理参考濃度」、対象化学物質の「用途や毒性・物性」などがわかりやすく掲載されている注17)。注17)http://www.ecochemi.jp/(2)地方自治体の取組 都道府県や政令指定都市等において、PRTR データを活用した化学物質に関する取組やリスクコミュニケーションを推進するための取組が行われている。以下にそうした取組の事例を紹介する。①川崎市における化学物質対策の取組 市では、化学物質に関する環境汚染対策について、未然防止の観点から、「川崎市環境基本計画」の中で重点分野として位置づけて取組を行うとともに、化学物質対策に関する各種法律や「川崎市公害防止等生活環境の保全に関する条例」に基づいた取組を実施している。(a)化学物質の環境リスク評価の実施 市民の化学物質による環境リスクの低減を目的として、川崎市を臨海部、内陸部、丘陵部の3区分に分けた上で、市内における環境リスクが高いと懸念される物質について環境リスク評価を実施し、「化学物質の環境リスク評価結果報告書」に取りまとめている。 2012年度までに、19物質(エチレンオキシド、クロロメタン等)の環境リスク評価が行われた。 報告書は、事業者による化学物質の適正管理に活用されるよう、ホームページ上で公表されている。(b)化学物質対策セミナーの開催