ブックタイトルメカトロニクス6月号2015年

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概要

メカトロニクス6月号2015年

42 MECHATRONICS 2015.6日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック~平成24年度集計結果から~(その1)【第159回】■第Ⅰ部 暮らしの中の化学物質1.暮らしの中の化学物質 本節では、暮らしの中で利用されている化学物質を紹介し、それらの化学物質と上手につきあっていくためには、その環境リスク注3)を正しく理解することの大切さを強調している。注3)化学物質の環境リスクとは、化学物質が環境を経由して人の健康や動植物の生息又は生育に悪い影響を及ぼすおそれのある可能性をいう。その大きさは化学物質の有害性の程度と、呼吸、飲食、皮膚接触などの経路でどれだけ化学物質に接したか(曝露量)で決まり、概念的に式で表すと次のようになる。 化学物質の環境リスク=有害性の程度×曝露量2.暮らしの中でできること 「暮らしのなかでできること」として以下の3項目を挙げている。①化学物質に関心を持つ・PRTRデータを見る②疑問に思ったことやわからないことを調べる③毎日の暮らしを見直す ・必要なものを必要な分だけ ・使用上の注意を守り、捨てる時にはルールに従う ・環境への負荷が少ない製品を選ぶ■第Ⅱ部 PRTR 制度とは1.PRTR制度の仕組み(1)化学物質の排出・移動に関する情報を国が1年ごとに集計し、公表する制度 人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質がどこから、どれだけ排出されているかを知るとともに、化学物質の排出量や化学物質による環境リスクを減らすための制度の一つとして、本制度が設けられている。本制度は、これまで市民がほとんど目にすることのなかった化学物質の排出・移動に関する情報を国が1年ごとに集計し、公表する制度である。(2)本制度は、化学物質の情報を共有し、協力して取組を進める PRTR制度によって、化学物質の排出に関するより詳しい情報を入手することが可能となった。これにより、市民にはこれまで行政や事業者に任せるしかなかった化学物質問題への取組に積極的に参加する機会が広がった。 PRTRデータを利用して、市民、事業者、行政が、化学物質の排出の現状や対策の内容、進み具合について話し合いながら、協力して化学物質対策を進めていくことが期待される。2. 対象となる化学物質 化管法の対象となる化学物質は、人の健康を損なうおそれ(発がん性、変異原性、感作性など)又は動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれ(生態毒性)があるもので、環境中に存在すると考えられる量の違いによって第一種指定化学物質と第二種指定化学物質の2つに、また発がん性を考慮して以下のように区分されている。(1)第一種指定化学物質 PRTR 制度の届出の対象となる462 物質。次のいずれかの有害性の条件に当てはまり、かつ、環境中に広く継続的に存在するもの①人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがあるもの(例:ベンゼン)②その物質自体は人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがなくても、環境中に排出された後で化学変化を起こし、容易に上記の有害な化学物質を生成するもの(例:ノニルフェノール)③オゾン層を破壊するおそれがあるもの(例:CFC-12)(2)特定第一種指定化学物質 上記「第一種指定化学物質」の中で人に対する発がん性等があると評価されているもの(15 物質“ニッケル化合物、ベンゼン、砒素及びその無機化合物、ダイオキシン類など”)(3)第二種指定化学物質 第一種指定化学物質と同じ有害性の条件に当てはまり、製造量の増加等があった場合には、環境中に広く存在することとなると見込まれるもの(SDS の提供が義務づけられる100物質)3.対象となる事業者 PRTR制度の対象化学物質を製造したり、使用したり、環境中へ排出している事業者のうち、以下の3つの条件すべてに合致する事業者に届出の義務が課されている。①対象業種:(日本標準産業分類(1993年改定)による業種区分に基づく)②従業員数:常用雇用者21人以上の事業者③第一種指定化学物質のいずれかを1年間に1トン PRTR制度注1() 化学物質排出移動量届出制度)は1999年7月に公布された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づいて導入された注2)。注1) PRTR:Pollutant Release and Transfer Register注2) 同法律は、“化学物質排出把握管理促進法”、“化管法”あるいは“PRTR法”と呼ばれている(以下、“化管法”と略称)。 この制度により、人の健康や動植物に有害な影響を及ぼすおそれのある化学物質について、対象となる企業には、対象化学物質の環境に排出される量(排出量)及び廃棄物等に含まれて事業所の外に移動する量(移動量)を年度毎に届け出ることが義務付けられており、国は届出の集計結果及び推計を行った届出対象外の排出量の集計結果を併せて公表することとされている。 この年度ごとの集計は、2001年度分が第1回として2003年3月に発表された。今年の発表(2015年3月)は2013年度分であり、第11回目として去る3月6日に、経済産業省および環境省から発表された1)。 化学物質による大気、土壌、地下水の汚染については、環境上の「負の遺産」として現在世代の責務として問題にされてきている。PRTR制度は、化学物質のリスクコミュニケーションを推進する有力な手段として活用されてきた。化学物質による環境リスクは私たちの日常生活に深くかかわっている。 環境省は、PRTRの諸データを一般市民にも活用が容易になるように、2000年度のPRTRデータの発表から、市民のためのガイドブックを毎年編集して、印刷物及びデータで公表している。今回は、そのガイドブックの最新版(以下では「本ガイドブック」と略称)について、その構成と内容について紹介する2)。 以下では、「本ガイドブック」について、目次の表題を順に記し、その内容の概要および原文の抜粋を紙面の許す範囲に圧縮して紹介する。<図表1>排出量と移動量の分類2) <図表2>国による排出量の推計方法2)<写真1>「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」の表紙2)