ブックタイトルメカトロニクス5月号2015年

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概要

メカトロニクス5月号2015年

42 MECHATRONICS 2015.5日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力電磁波過敏症は次の環境汚染問題となるか?~(2)その症状と対応策の関連情報~【第158回】■電磁波過敏症への対応の経緯(その2)・1996 年5 月:WHO の国際電磁界プロジェクト WHO は「国際電磁界プロジェクト」を立ち上げ、電磁界ばく露の健康影響についての評価を開始した。このプロジェクトにおいて、2001年にWHOの付属組織である国際がん研究機関(IARC)が、低周波および静電磁界のばく露による発がん性について評価し、低周波磁界の発がん性分類をグループ2B(発がん性があるかもしれない)、静電磁界と低周波電界をグループ3(発がん性を分類できない)に分類した。この評価結果に、その他の健康影響評価を加えて、WHO は2007 年に100kHz までの低周波電磁界の健康リスク評価をまとめた環境保健クライテリア(EHC)No.238を公表した。また、ここで得られた知見を基に、WHOの公式見解をファクトシートNo.322として公表した。この中で、人体への電磁界ばく露を制限するための目安として、科学的根拠に基づく国際的なガイドラインの採用が推奨された。 国際的なガイドラインとしては、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)注1)によって、1998 年に“時間的に変化する電磁界のガイドライン”が刊行されていたが、WHO による健康リスク評価の結果を踏まえて、新しく改訂した“静磁界のガイドライン”が2009 年に発表された。注1)国際非電離放射線防護委員会:(International Commissionon Non-Ionizing Radiation Protection、ICNIRP) 非政府系組織の学術専門家グループ。非電離放射線と呼ばれる電磁界のパートにおける人体影響に関して国際的な提案を行っている。 さらに、2010 年には、1998 年のガイドラインの100kHzまでの周波数のみを改訂した“低周波電磁界に対するガイドライン”が発表された。・1997 年:「生体電磁環境研究推進委員会」の発足 郵政省(現総務省)は、生体電磁環境研究推進委員会を発足させた。設立の趣旨は、「電波による人体への影響に関しての国民の不安を解消し安全で安心な電波利用社会の構築に資するため、電波の生体安全性評価に関する研究・検討を行うこと」とされている。 同委員会は10 年間にわたり、動物実験、疫学調査等による生体の安全性評価等に関する研究を推進し、2006 年度に報告書を発表した。・1998 年:「電離界曝露に関するガイドライン」 ICNIRPが電離界曝露に関するガイドラインを提唱した。・2000 年:「電波法施行規則」改定 郵政省(現総務省)は、電波法施行規則を改定して電波防護指針に法的強制力を持たせ、一般公衆を対象とした管理指針が準用され、2000 年10 月より施行された。・2001 年:IARCの発がん性評価結果 国際ガン研究機構(IARC)注2)は静電磁界と低周波電磁界の発がん性評価の結果、発がん性の可能性があるというカテゴリ2B の判定を発表した。注2)国際ガン研究機構:International Agency for Research inCanceer(IARC)・2001 年2 月:電気学会が一般向け小冊子を作成 電気学会の特別委員会は、電磁界とはどんなものか、その作用、身の回りの電磁界、健康とのかかわりについて基礎的内容から最新の情報まで解説した小冊子“電気の暮らしと健康不安?電界・磁界の影響はどこまで分かったか”を刊行した。・2003 年3 月:電気学会「電磁界生体影響問題調査特別委員会」が報告書を発表 電気学会同委員会は、電磁界と人の健康影響に関する研究成果、情報をレビューし、総合評価を行った。その結果を「電磁界の生体影響に関する現状評価と今後の課題 第Ⅱ期報告書」として2003 年に発表し、電磁界の実態と実験研究の現状で得られた成果をもとに評価すれば、「通常の居住環境における電磁界が人の健康に影響を与えるとは言えない」と結論づけた。・2005年12月:WHOの「ファクトシートNo.296)」 世界保健機関(WHO)は、「電磁界と公衆の健康:電磁波過敏症(ファクトシートNo.296)」を発表注3)。注3)「(WHO Fact sheet No.296)Electromagnetic fi eldsand public health = Electromagnetic Hypersensitivity」WHO(2005.12)・2007 年4 月:経済産業省に「電力設備電磁界対策ワーキンググループ」を新設 経済産業省は、原子力安全・保安部会電力安全小委員会の下位組織として「電力設備電磁界対策ワーキンググループ”」を設置、商用周波の電力設備からの磁界規制の在り方について検討を開始し、2008 年6月に報告書がまとめられた。 この報告書の提言を受け、2008 年7月に電磁界リスクコミュニケーションの増進を目的とした“電磁界情報センター”が財団法人電気安全環境研究所(現一般財団法人電気安全環境研究所)に設立された。 また、2011 年3 月には、改訂されたICNIRP ガイドラインを基にした規制値を定めた電力設備からの磁界規制が公布された。・2007 年4 月:「生体電磁環境研究推進委員会報告書」の発表 電波の人体への安全性について、総務省において1997 年10 月より「生体電磁環境研究推進委員会」を設置し、2007 年4 月に、それまでの10年間の検討結果として、「生体電磁環境研究推進委員会報告書」が取りまとめられた。・2008 年4 月:ICNIRPのガイドライン ICNIRPは、電波防護に関する国際的なガイドラインである「時間変化する電界、磁界及び電磁界によるばく露を制限するためのガイドライン」を発表。・2008 年6 月:総務省、「生体電磁環境に関する検討会」を設置 総務省は、同省総合通信基盤局長の検討会として「生体電磁環境に関する検討会」を設置、第1回会合を6月24 日に開催。・2008 年7 月:「電磁界情報センター」の設立 電磁界リスクコミュニケーションの増進を目的とした「電磁界情報センター」が財団法人電気安全環境研究所(現一般財団法人電気安全環境研究所)に設立された。・2010 年11月:ICNIRP のガイドライン改訂 ICNIRPは、電波防護に関する国際的なガイドラインである「時間変化する電界、磁界及び電磁界によるばく露を制限するためのガイドライン」を低周波電磁界領域について改訂。・2011 年1 月:電気学会の小冊子改訂版 電気学会特別委員会は、健康リスク評価と人体防護ガイドラインの最新情報を反映した、小冊子の改訂版“新・電気の暮らしと健康不安?電界・磁界の影響をどう考えるか”を発刊。・2011 年3 月:「磁界規制」の公布 改訂されたICNIRPガイドラインを基にした規制値を定めた電力設備からの磁界規制が公布された。・2011 年5 月31日:IARCの新聞発表(No.208) 国際がん研究機関(IARC)は以下をプレスリリースした。・無線周波電磁界の発がん性に関するこれまでの研究諸文献の評価の結果、携帯電話の使用については、発がん性の評価は「限定的」または「不十分」で、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」と分類したが、作業グループはそのリスクの定量化はしていない。・携帯電話の長期間にわたり長時間使用することについては、更なる研究を行うことが重要。・2011 年9 月:「第4次環境基本計画策定に向けた考え方」への意見募集 日本政府が「第4次環境基本計画策定に向けた考え方(計画策定に向けた中間とりまとめ)に対して意見募集をおこなった。その中に電磁波過敏症に関する以下の意見が含まれていた。 “化学物質過敏症・電磁波過敏症についての発症メカニズム、治療方法等についての調査研究を推進すべきである。発症メカニズムが未解明であっても、化学物質や電磁波にきわめて敏感で、微量曝露により体調不良をきたす人々が存在することは事実であるから、これらの人々の人権保障として、フリーゾーンの設置、ばく露削減などの生活上の支障の低減策を検討すべきである。”・2013 年10 月:「携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会」 総務省は、「携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会」を2013 年10 月に設置、2014 年3 月に報告書を公表した。事前の報告書案に対する意見公募では、電磁波過敏症に関する意見が多く提出され 前回のテーマ“電磁波過敏症は次の環境汚染問題となるか?”では、その症状に関して実際に苦しんでいる知人の事例を紹介した。またこの問題が、過去にどのように取り上げられ、関係者・関係組織がどのように対応してきたかを併せて年代順に整理し、1970年代から始まり1995年頃までを紹介した。今回はその続編として、1995年以降の関係者・関係組織の対応経緯を紹介する。<表1>前回の目次■知人N氏からの情報(1)症状について(2)治療について(3)日常生活上で工夫していること(4)職場で工夫していること(5)外部の会議に出席の場合の応急措置■電磁波過敏症は新しい情報として どのように紹介されてきたか・年鑑における取り上げ方の経緯■電磁波過敏症の症状■EHSを起こす要因■電磁波過敏症への対応の経緯(その1)