ブックタイトルメカトロニクス11月号2014年

ページ
61/68

このページは メカトロニクス11月号2014年 の電子ブックに掲載されている61ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

メカトロニクス11月号2014年

MECHATRONICS 2014.11 61等の実践者がそれぞれの現場で、ESDの取組として何を行えば良いのかが理解されることであり、そのためには、単にESD をどう定義するのかだけの整理だけではなく、「ESDの目標」や「持続可能な開発」の概念の内容のほか、ESDによりどのような「能力・態度」を育んでいくかという視点も含め、全体として「ESDとは何か」が正しく理解されていくことであると考える。 このため、こうしたESDの定義の整理に加え、ESDの目標を始め、ESDとは何かを理解するための主要な要素について、以下に整理する。”(3-2)ESDの目標 日本では、上述の関係省庁連絡会議において、ESDの目標を以下の通り掲げている。①すべての人が質の高い教育の恩恵を享受すること、②持続可能な開発のために求められる原則、価値観及 び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれる こと、③環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現 出来るような行動の変革をもたらすことにより、そ の結果として持続可能な社会への変革を実現する。 ①のように、ESDが取り込まれた教育等によって、②の行動の変革につなげていくには、具体的に、世代間、世代内、及び地域間それぞれの公平・公正、男女間の平等、社会的寛容、貧困削減、環境の保全と回復、天然資源の保全、公正で平和な社会など、ESDにおいて取り組むべき課題について、単にこれらの知識を網羅的に得ることだけではなく、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み、持続可能な社会づくりの担い手となるよう個々人を育成し、意識と行動を変革することを目指すことが望まれる。 こうした学びの目的や目標が明確である点や、「持続可能な社会」という国のかたち・グランドデザインからスタートして、その姿から現在を振り返って、現在の教育の在り方を考える点は、ESDの大きな特徴の一つと言える。(3-3)「持続可能な開発」を構成する前提概念と、その実現に必要な観点 上述の通り、ESDでは、「持続可能な開発」を実現することを目指している。「持続可能な開発」は、ブルントラント委員会報告書において、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことがないような形で、現在の世代のニーズも満足させるような開発」と定義されている。  具体的には、多様性、相互性、有限性、公平性、連携性、責任性などが、持続可能性を構成する主要な前提概念の例と考えられる(表2)。(2014.9.7記)<参考資料>1)小田切 力:で“ものづくりと地球環境(第146回)「ESDに関するユネスコ世界会議~国連持続可能な開発のための教育の10年」の最終年を迎えて~」”「メカトロニクス・デザイン・ニュース」Vol.39, No.5,p50-51(2014年5月号)2)環境省報道発表:『「国連ESDの10年」後の環境教育推進方策懇談会報告書』の公表について(2014年8月27日) 2a)同報告書・概要ポンチ絵版 2b)同報告書・概要版 2c)同報告書・全文(A4,23p)3)関連ホームページ 3a)日本ユネスコ国内委員会(文部科学省)   http://www.mext.go.jp/unesco/ 3b)ESDユネスコ世界会議あいち・なごや支援実行委員会   http://www.esd-aichi-nagoya.jp/     3c)岡山市   http://www.city.okayama.jp/esd/esd_00115. 3d)ユネスコ   http://www.unesco.org/new/jp/unesco-world-   conference-on-esd-2014/・阿部 治:立教大学ESD 研究所所長、日本環境教育学会長・小川 雅由:こども環境活動支援協会理事・事務局長・川嶋 直:公益社団法人日本環境教育フォーラム理事長、キープ協会シニアアドバイザー・小澤紀美子:東京学芸大学名誉教授・さかなクン:東京海洋大学客員准教授・実平喜好:株式会社東芝 環境推進室長・関正雄:株式会社損害保険ジャパン CSR部上席顧問・棚橋乾:全国小中学校環境教育研究会会長(多摩市立多摩第一小学校校長)<省内メンバー>・総合環境政策局長・大臣官房審議官(総合環境政策局担当)・総合環境政策局総務課長・総合環境政策局環境教育推進室長(含民間活動支援室)・自然環境局総務課自然ふれあい推進室長<オブザーバー>・文部科学省・国際連合大学サスティナビリティー高等研究所(3)会合と報告書 同懇談会の会合は、2014年1月30日(第1回)から7月10日まで開催され、同報告書は8月27日に公表された。■同報告書の概要 同報告書の目次は<表1>のように構成され、その概要を図示して<図1>のように紹介されている。以下では、主要テーマについての要点を本文から抜粋して紹介する2c)。(1)「持続可能な開発」の考え方を巡る経緯と環境教育の動き “第二次世界大戦以後、先進国は飛躍的な経済成長を遂げ、途上国でも開発が進む一方、これらに伴う環境破壊が深刻化していた。こうした世界的な環境の悪化を背景に、1972年に国連人間環境会議(ストックホルム会議)が開催され、環境保全と成長・開発について、初めて国際的な議論が行われた。同会議では、開発と環境保全は対立するものとして議論され、開発が環境汚染を模索するべく、1984年に日本の提案で「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」が設置された。同委員会では、環境保全と開発を相互補強的に考える「持続可能な開発」の概念が取り上げられ、同概念は、1987年に公表された同委員会の報告書“Our Common Future”(われら共有の未来)を通じて、世界に広く認知された。上記のように環境保全に向けた国際的議論が活発化する中、環境教育の必要性がストックホルム会議で提唱・勧告されたことを受けて、1975年に環境教育の専門家会議であるベオグラード会議が開催され注2)、1977年には環境教育に関する初めての政府間会議であるトビリシ会議が開催された注3)。注2)ベオグラード会議:(Belgrade Workshop、環境教育国際ワークショップ) UNESCOにより世界各地の環境教育専門家が招かれ、開催された会合。1975年10月、60ヶ国96名の環境教育専門家が集まり、旧ユーゴスラビアの首都ベオグラードで開催された。この会議は、後の環境教育政府間会議(トビリシ会議)の準備会合という性格をもっていた。同会議でベオグラード憲章を採択(The Belgrade Charter= A Global Framework for Environmental Education).注3)トビリシ会議:Intergovernmental Conference on EnvironmentalEducation (organized by UNESCO in co-operation with UNEP atTbilis(i USSR),74 - 26 October 1977) トビリシ会議では、トビリシ宣言と41の勧告が合意された。トビリシ宣言は、トビリシ会議に出席した各国政府の共通認識を示すものとして、環境教育の目標領域、対象など、その後の世界の環境教育の方向性を決める枠組みを創出しており、勧告はその宣言を具体化している。”(2)「持続可能な開発のための教育の10年」の開始までの経緯等 冷戦終結後、東西対立の消滅に伴い、「貧困問題・地球環境問題の解決」に向けた国際的機運が高まる中、1992年にブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開催された。同会議では、地球再生の行動計画「アジェンダ21」が採択され、この中で、持続可能な開発の促進には、教育が不可欠であることが明記された。 持続可能な開発をあらゆるレベルで具体化していくためには、人づくり、特に教育が重要との観点に立ち、日本は政府とNGOが共同で、2002年のヨハネスブルグ・サミット(リオ+10)において、「持続可能な開発のための教育(Education for SustainableDevelopment。以下「ESD」という。)の10年」を提案した。 その後、同年の第57回国連総会において、「国連ESDの10年」が全会一致で採択され、2005年よりUNESCOを主導機関とした「国連ESDの10 年」が開始された。 2014年は、「国連ESDの10年」の最終年にあたり、11月に日本国内(愛知県、岡山県)において、「ESDに関するユネスコ世界会議(以下「ESD世界会議」という。)」が開催される。本会議では、「国連ESDの10年」の後継プログラムであるグローバル・アクション・プログラム(Global Action Programme。以下「GAP」という。)の開始が正式に発表され、2015 年以降のESDの推進方策について議論される予定である。 2014年9月から12月に開催予定の国連総会において、GAPが承認される見込みであり、2015年以降もESDを推進していくこととなる。さらに、2012年に開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」において、持続可能な開発目標(SustainableDevelopment Goals、以下「SDGs」という。)をつくり、ポスト2015年開発アジェンダ(ポスト・ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)等)に統合していくことが決定された。現在、専門家によってSDGsの具体的内容が議論されており、このSDGsの中にESDが盛り込まれ、環境分野だけでなく、開発分野においてもESDの重要性が広く認識されることが期待される。(3)ESDとはなにか(3-1)ESDの定義とESDとは何かの正しい理解 “ESDの定義について、それぞれの主体によって様々な説明がなされているのが現状である。 例えば、「国連ESDの10年」の主導機関であるユネスコでは、ESDを「全ての人々が持続可能な未来の実現に必要な知識、技能、生活態度、価値観を身につけることが出来る教育・学習」と定義し、日本では、「国連ESDの10年」関係省庁連絡会議において、「一人ひとりが世界の人々や将来世代、また、環境との関係性の中で生きていることを認識し、持続可能な社会の実現に向けて行動を変革するための教育」と定義している注4)。注4)我が国における「国連ESDの10年」に関する実施計画(平成18年) このような違いは、説明する主体によって、その目的や着眼点の違いのほか、少しでも分かりやすく市民に伝えようという工夫の違いなどによって生じているものと考えられる。しかし、重要なのは、教育・学習<表2>持続可能性を構成する前提概念(例)の整理多様性多種多様な事物から成り立ち、多種多様な現象が起きていること相互性環境の各事象はもとより、環境と経済・社会の各事象が相互に作用していること有限性資源採取量や有害物質排出量など環境の容量は有限であること公平性地域や世代に亘って公平・公正・平等でなければならないこと連携性課題の解決には多様な主体の連携・協力が不可欠であること責任性望ましい将来像に対する責任あるビジョンをもつこと