ブックタイトルメカトロニクス8月号2014年

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概要

メカトロニクス8月号2014年

MECHATRONICS 2014.8 43(2)欧州連合(EU) EUはリスボン戦略以来、CSR推進に積極的に取り組んでいる。欧州委員会は、CSR推進のための政策及び行動計画を策定することにより、中長期における持続可能な成長、責任ある企業行動、永続性のある雇用創出にとって有利な条件を整えることを目指している。主な動きを以下に示す。・2000 年:リスボン戦略EU 経済における2000-2010年行動計画および開発計画・2002年:欧州委員会がCSR戦略を発表・2006年:欧州委員会が改訂CSR戦略を発表・2010 年:欧州2020 戦略- EU 加盟国に対してCSR戦略の更新を要請 なお、2011年以降、欧州委員会はCSRの定義を「企業が社会において及ぼす影響に対する責任」とし、それまでの「CSRは自発的取組(voluntary)」という定義を大きく変更している。社会的責任を満たすにあたって、企業は「社会的、環境、人権や消費者の懸念などを、ステークホルダーと共に、事業運営や戦略へ取り込むべき」という概念を示している。 2011年から2014年までの間の行動計画として、欧州委員会は、以下の8分野を示している。①CSRの見える化の強化とグッドプラクティスの普及(例:European CSR Award を新設。「企業の社会責任」表彰を2013年6月に実施。)②ビジネスにおける信頼性レベルの改善(例:EU主催の市民アンケートにより、企業の社会への影響について市民がどのような印象をもっているかを調査。また、調査地域における差別状況について調査し、2012年と2013年に結果を公表。)③自主規制および共同規制のプロセス改善(例:自己および協調規制原則が2013年2月に公表されている。)④CSRに対する市場からの報酬拡大(a)消費:「グリーン製品に関する単一マーケットの構築-製品や組織の環境パフォーマンスに関するより優れた情報の醸成」に関するコミュニケーション(COM(2013)196)を2013年4月に公表。(b)投資:2012年3月7日、投資商品に関する情報開示を改善するための法案を採択。(c)公共調達:社会および環境基準に関する新規定を含む公共調達の指針の改定案を2014年1月に採択、2014年3月施行。⑤社会および環境に関する企業情報開示の改善一定規模の企業には非財務情報の開示を求める法案を採択。⑥CSRの教育、訓練、研究⑦国家および地域CSR政策欧州委員会はEU 加盟諸国に対し「CSR推進計画」の提示および更新を促している。また、欧州2020戦略を推進するためにEU加盟諸国における「国内優先行動リスト」を策定するよう求めている。⑧CSR に対する欧州と国際的アプローチの調整(a)OECDガイドライン(b)国連グローバル・コンパクト(c)指導原則(d)ILO三者宣言(e)ISO 26000上記のイニシアチブに加え、欧州委員会は、中小企業向けに人権に関する入門ガイドを策定。また、指導原則の使用を促進するため特定の3つの業界(人材派遣業、情報通信業、および石油・ガス関連業)に向けたガイダンスを策定している。((3)英国、(4)ドイツ、(5)オランダは省略)(2014.6.15記)<参考資料>1)経済産業省:「国際的な企業活動におけるCSR(企業の社会的責任)の課題とそのマネジメントに関する調査報告書」(2014年5月)2)国際連合人権理事会のHP:http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/Pages/HRCIndex.aspx進体制の整備状況、人権、公正な事業慣行などにおける具体的な活動方針、取組内容など)この際、特に企業の持続的な価値創造にどのような形で資するものとなっているかという点や国・企業ごとの特徴等を考慮して分析を行った。(3)8社の企業(国内4社、海外4社)に対するヒアリング調査 8社の企業に対しヒアリングを実施。ヒアリング先の選定に当たっては上記52社の分析を踏まえ、対象候補先の選定を行った。3.CSRに関する国際的フレームワーク 主なCSRに関する国際的フレームワークを概観する参考として、例えば、欧州委員会は以下の“CSRguidelines and principles”1(CSRガイドラインおよび原則)を参照するよう企業に求めている。(1)OECD 多国籍企業行動指針(以下「OECDガイドライン」) 1976 年、OECDが参加国の多国籍企業に対して、責任ある行動を自主的に取るために策定した行動指針(ガイドライン)。以降5回改訂。最新版は2011年に改訂され、人権デューデリジェンスに関する内容が盛り込まれた。OECD加盟国に加え、ブラジルなど44カ国が参加している。(2)国連グローバル・コンパクト(以下「UNGC」) 2000年7月26日にニューヨークの国連本部で正式に発足。参加組織は、自らの戦略および事業を人権、労働、環境および腐敗防止に関する10の原則に整合させるよう専念し、国連の広範な目標を支援する行動をとる(10の原則のうち、腐敗防止については2004年に追加)。現在、世界約145ヵ国で1万を超える団体(そのうち企業が約7,000)が署名している。日本は176企業・団体が署名(2013年8月現在)。(3)ISO26000 2010年11月、ISO(国際標準化機構)が発行した組織の社会的責任に関する国際規格。社会的責任に関する国際的に開発された包括的なガイダンス文書であり、持続可能な発展への貢献を最大化することを目的とする。(4)国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」) 人権の保護・尊重・救済の枠組みを実施するために、国家と企業を対象として作成され、2011年7月に、国連で承認された原則。2008 年にまとめられた同原則は、ISO26000やOECDガイドライン改訂にも反映されている。(5)多国籍企業および社会政策に関する原則ILO三者宣言(ILO Tripartite Declaration of Principlesconcerning Multinational Enterprises on SocialPolicy、以下「ILO 三者宣言」) 1977年、ILOで採択された文書。2000年、2006年に改訂。ILOの多国籍企業宣言とも呼ばれ、労働慣行や雇用条件などに関して政府、多国籍企業、使用者団体および労働者団体に指針を提供する。(6)国際的フレームワークの企業における活用状況 企業報告においては、GRIが最も言及頻度の高いフレームワークであった。ISO26000およびOECDガイドラインへの言及は比較的少数であった(表2)。 また、国によって大きな差が見られた。欧州および米国ではGRI が明らかに最もよく使われるフレームワークであり、次にUNGC という結果となっている。ISO26000はアジアでよく参照されており、特に日本と韓国が突出して高い。なお、日本の企業の多くは、GRIを参照しているが、GRI G3のアプリケーションレベルを記載していないため相対的に低い水準となっている(図1)。4.各国の制度、フレームワークの動向(1)米国 米国では連邦政府とともに州政府がCSRを推進しており、例えばカリフォルニア州政府などは連邦政府の基準を上回る独自の制度を発足させている。また、非営利民間団体である「Sustainability AccountingStandards Board (以下SASBという)」が、業種ごとのサステナビリティ開示基準を作成している。主な動きを紹介すると、・2009 年:オバマ大統領が行政命令(ExecutiveOrder)13514 を発表。環境、エネルギー、経済パフォーマンスに関する目標設定を行い、政府機関がサステナビリティを推進するよう奨励。・2010年:SECが気候変動情報開示に関する解釈指針を公表・2012 年:2012 年1 月1日に、2010 年に制定されたカルフォルニア州サプライチェーン透明法(California Transparency in Supply Chains Act)発効。企業はある一定の規模を超えた場合、サプライチェーンから奴隷労働や人身売買を撲滅させるための取組の開示が求められる。・2013年:SASBが業種別開示基準であるヘルスケア業界の基準を公開。2014年に金融業界の基準を公開。・2013年:ドッドフランク法1502条に基づく紛争鉱物に関する最初の報告年度。海外企業も含めた米国上場企業は、2014年5月末までに紛争鉱物の使用に関する報告を行うことが求められている。 米国における一つの特徴として、企業の自主的な取組に焦点が当たっていることがある。そのため、CSR活動のレベルは企業によって大きく異なる。一方、政府レベルでは、オバマ大統領の行政命令13514により、政府機関の調達契約の95%(年間支出約5,000億ドル)に関してサステナビリティ基準7を満たすことが求められている。 もう一つの特徴として、州政府の役割が大きいことが挙げられる。州の基準が連邦政府の基準を上回ることがあり、例えばカリフォルニア州は「カリフォルニア州サプライチェーン透明法」を制定、また、気候変動に関してはカリフォルニアその他9つの州で排出権取引制度8が検討・実施されている。 さらに、米国においては、集団訴訟による多額の罰金9などを背景に企業のコンプライアンス体制整備が進められている10。株主からの要請も強く、企業による環境や社会への取組を促している面も指摘されている。<図1>サステナビリティレポートにおいてOECDガイドラインを参照している企業の割合1)G R I S u s t a i n a b i l i t yD i s c l o s u r e D a t a b a s e .Grand Total based on 2774reports globally. Numberof reports for the selectedc o u n t r i e s ( 8 2 8 r e p o r t s ) :Republic of Korea?109,Japan?15, Netherlands?92,G e r m a n y ? 9 9 , U n i t e dKingdom?94, United Statesof America?311, China?108.