ブックタイトルメカトロニクス8月号2014年

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概要

メカトロニクス8月号2014年

42 MECHATRONICS 2014.8日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力CSR(企業の社会的責任)の課題~国際的な企業活動を踏まえた調査報告~【第149回】■ CSR に関連する調査の背景と概要1. 調査の背景 企業のグローバル展開が進む中、人権や環境問題等のCSR(企業の社会的責任)に関連する様々な問題が、これまで我が国企業が想定してこなかったようなビジネスインパクトをもたらすようになっている。企業の海外拠点やサプライチェーンにおける雇用や労働条件に関する人権問題、事業を行うための土地契約に関する先住民問題、水資源や生活権に関する問題、紛争地域における資源開発や鉱物資源利用の問題等、様々な問題がリスクとして顕在化している。2.CSR に関する国際的認識 一方で、これらの問題への対応を強化することで、競争相手と比べた優位性を確保しようとする企業も出てきている。今後、日本企業が国際的な活動を通じて、持続的な価値創造を続けるためにも、CSR の課題・リスクに的確に対応することは、事業存続の条(License to Operate)であるとともに、競争力の源泉となり得るものと言える。3.CSR を取り巻く国際的な動き こうした状況を受けて、国際的にも、国連の「ビジネスと人権に関する枠組み」(2008 年)注2)や「ビジネスと人権の指導原則」(2011年)注3)、ISO26000(2010 年)注4)、OECD多国籍企業行動指針の改定(2011年)等、各種の枠組みづくりが行われている。注2)ビジネスと人権に関する枠組み:(Framework for Businessand Human Rights)。注3)ビジネスと人権に関する指導原則:(Guiding Principles onBusiness and Human Rights)。国際連合人権理事会(UnitedNations Human Rights Council )が2011年に発表した。本指導原則は、持続可能なグローバル化に貢献するためにビジネスと人権に関する基準と慣行を強化することを目標としており、すべての国家とすべての企業に適用される。すべての企業とは、その規模、業種、拠点、所有形態および組織構成に関わらず、多国籍企業、およびその他の企業を含むとされている。 本指導原則は、「保護、尊重、救済:『企業活動と人権』についての基本的考え方(Framework for Business and Human Rights)」(2008年)に続いてまとめられたもので、「保護、尊重、救済」の枠組みが、31の「原則(Principles)」に整理されて提示されている。「保護、尊重、救済(protect/respect/remedy)」の枠組みは、ハーバード大学のジョン・ラギー教授によって定式化された。ジョン・ラギー教授は、2005年に「企業と人権」に関する国連事務総長特別代表に就任し、この枠組みづくりに尽力した。「保護、尊重、救済」の枠組みは、2010年に発行されたISO26000や、2011年に改訂された経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業行動指針にも取り入れられている。なお、ジョン・ラギー教授が定式化したこの枠組みは「ラギー・フレームワーク」、本指導原則は「ラギー・レポート」と呼ばれることもある。注4)国際標準化機構(ISO)では、社会的責任(social responsibility、略称:SR)の呼称で国際規格ISO 26000を策定した(2010年11月発行)。ISO 26000は日本語に翻訳され、JIS Z 26000「社会的責任に関する手引」として制定された(2012年3月制定)。また、米国のドッドフランク法(紛争鉱物規制)、EU のセクター別人権ガイダンスや非財務情報の開示規制等、各国においてもCSR に関連した制度改正が行われている。 企業やそれに関わるステークホルダーが、これらの課題や各種フレームワーク・制度の背景を理解するとともに、CSRの各種課題にどのように対応すべきかを検討するための一助とするため、我が国及び諸外国の企業が関係した事案と取組状況等をまとめて提示することを目的としている。4.本調査報告書の概要 本調査報告書では、我が国企業において必ずしも十分に認識や対応が取られていない一方、グローバルに活動する中で直面せざるを得ないCSR上の重要論点を抽出し、その現状と課題を実例とともにまとめている。具体的には、①新興国における労働問題②先住民の生活及び地域社会③水ストレスの高い地域における水リスク④腐敗防止 ⑤食品サプライチェーンにおけるトレーサビリティ 及び持続可能性⑥紛争鉱物⑦租税回避の7分野を抽出し、文献調査及び特徴的な企業へのヒアリング等を実施した。さらに、国連やOECD、ISO等の国際的なフレームワークの目的、内容、各国における活用状況を整理するとともに、各国のCSR戦略をとりまとめている。 本報告書が、グローバル展開を行っている、または行なおうとしている企業において、各分野で直面しうるリスクや取り組みうるグッドプラクティスを把握し、実践する上での参考となることを期待して作成されている。 ちなみに、本調査報告書は、全113ページで、主要目次は表1に示す通りである。■調査報告書のトピックス 以下に、本調査報告書に紹介された事項についてトピックス的に取り上げ紹介する。1.調査概要(1)各種フレームワークや各国制度を踏まえた、我が国および諸外国の企業のCSRに対する取組の内容、情報開示全般についての状況把握を実施。(2)我が国企業などにおける取組の実態、効果的な取組などについて、持続的な企業活動を行うに当たってよりよいマネジメントのあり方はどのようなものかという観点から、個別企業へのヒアリングや補足文献調査により、より詳細な状況把握を実施。2.調査方法(1)日本および諸外国における各国別のCSRに関する情報収集 雑誌、新聞、主要企業、経済団体の公表資料などを元に、日本、諸外国(米国、欧州主要国(英国、ドイツ、オランダ)、中国、韓国)の企業のCSRの取組の実態や課題(その背景を含む)に関する情報収集を行った。また、同様の手法で各種フレームワークや各国制度の制定、改正などの状況について情報収集を行った。(新聞、雑誌などの文献については過去10 年間を対象とした。)(2)CSRに対する取組に関する国内外52社(国内29社、海外23社)の文献調査および分析整理 国内外52社の企業について、情報を整理・分析し、分類分けなどを行って分析を行い、効果的な取組、課題がある取組などの整理を行った。(CSR全体の推経済産業省では、企業活動に大きな影響を与えるCSR(企業の社会的責任)注1)の今日的な課題を理解するため、企業の個別事案や諸外国のCSR戦略、国際フレームワークの現状を包括的に把握するための調査を行った。 その調査結果はこのほど、「国際的な企業活動におけるCSR(企業の社会的責任)の課題とそのマネジメントに関する調査報告書」1)と題して、2014年5月23日付けで発表された(担当窓口:経済産業政策局企業会計室)。 今回はその調査報告書の概要を紹介する。注1)企業の社会的責任:(Corporate Social Responsibility、CSR)企業は社会的な存在であり、自社の利益、経済合理性を追求するだけでなく、ステークホルダー(利害関係者)全体の利益を考えて行動するべきであるとの考え方であり、行動法令の遵守、環境保護、人権擁護、消費者保護などの社会的側面にも責任を有するという考え方。(環境省「環境白書」より)<表2>国際的フレームワークの企業における開示状況(最も参照が多いフレームワーク)1)<表1>本調査報告書の目次<写真1> 国際連合人権理事会のHPに掲載された「ビジネスと人権に関する指導原則」2)国際的な企業活動におけるCSR(企業の社会的責任)の課題とそのマネジメントに関する調査報告書2014 年5 月 経済産業省1. 本調査の目的と概要 1.1 調査の目的 1.2 調査概要 1.3 調査方法2. 企業のCSR に関する国際的な動向 2.1 国際的なフレームワークと各国企業の      取組動向 2.2 各国の制度、フレームワークの動向 2.3. CSR 全般に関する各国企業の取組3. 重要なCSR 課題に対する企業の取組 3.1 重要課題の特定 3.2 新興国における労働問題 3.3 先住民の生活および地域社会 3.4 水ストレスの高い地域における   水リスク(サプライチェーンを含む) 3.5 腐敗防止 3.6 食品サプライチェーンにおける   トレーサビリティおよび持続可能性 3.7 紛争鉱物 3.8 租税回避(Tax Avoidance)4. 調査結果の全体的な考察( 以上全113ページ)