ブックタイトルメカトロニクス7月号2014年

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概要

メカトロニクス7月号2014年

MECHATRONICS 2014.7 11所 在 地:U R L:事業内容:岐阜県関市http://www.imao.co.jp/標準機械部品、標準治具、アルミ構造材、製造情報システム、ライフスタイル商品の開発/製造/販売など。株式会社 イマオコーポレーション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・品や切削用治具部品などは、長年当社が治具/機械要素メーカーとして培ったノウハウや営業からの日々の情報、物件照会などをベースに製品開発を進めています。また、海外提携先企業の製品については、改良、品質検査、ドキュメント整備などにより、日本市場への最適化を行っています。 これらは、今までの経験や感覚で行っており、比較的小規模な市場調査であっても当たりはずれが少なく、概ね当初に予定した売り上げが見込めています。 2つ目は、当社だけでなく他社もまだ開発していないようなまったく新しい革新的な製品の開発です。こちらの製品開発も、10 年以上前から注力していますが、ここ3 年ほどは、このような当社での実績や経験が少なく市場にない製品の開発について、従来とは違った新しい製品開発プロセスを構築して対応しています。それは、営業、企画、開発、製造などの多部門でプロジェクトチームを結成し、製品開発を進める開発検討会的な取り組みで、営業が把握しているお客様のニーズや困り事などから具体的な製品コンセプト(対象顧客の明確化、ニーズの定義(機能/価格)、販売見込み数の明確化)を固め、設計→試作→市場調査を行っていきます。 市場調査は、当社が保有するお客様リストを対象に行い、市場調査後に再度開発検討会を行います。そこで、製品コンセプトや機能がお客様のニーズと一致しているかを再検討し、一致していない場合は改良点を折込んで、再度、設計→試作→市場調査を行います。ニーズと製品が一致するまでこのサイクルを繰り返し行うため、最初は慣れていないこともあり1 年ほど掛かった案件もありますが、最近では早いもので1~2ヶ月ほどで製品化の目処がつく案件も出てきています。 また、開発検討会での重要な点は、参加するメンバー全員が妥協ではなく納得して進めることが重要になってきますので、自由に意見を交わせる環境づくりを心がけています。よくあるような営業部門と開発部門の衝突などがあまり起きないようにするのが、議事進行役を務める私の仕事になります。自由な雰囲気で進められる分、責任は重くのしかかってきますが、この開発検討会を始めたことで案件が次から次へと繋がりをみせるようになり、常時3~4つの案件が並行して行われ、非常に良い流れで製品開発を進められています。 開発検討会を通じて製品化された事例 についてお聞かせ下さい服部:まずは、営業部門の起案により開発をスタートさせた、ボルトに替わる締結部品『ワンタッチ着脱』(写真1)を紹介します。モノづくりにおいて、段取り8割といわれるほど段取り替えや準備が生産性を大きく左右しますが、この製品は、機械装置の段取り替えで大きく手間になっていた締結作業をワンタッチで行うことができます。最初は、1 種類しかありませんでしたが、ユーザーニーズによりラインアップの充実を図り、現状では大きく分けて5 種類をラインアップしています。  また、小物部品の組み立てや検査などの用途に最適な『精密ストレートクランプ』(写真2)という製品も開発しました。従来クランプは、対象物を強い力でクランプするといった考えの製品が多かったのですが、「クランプ力は低くてもいいが、クランプする位置や力を一定にしたい」というニーズを頂き、実際に市場調査を行ったところ、ニッチではありますが確実にニーズがあることがわかり製品化となりました。 さらに、工具レスでトルク管理が可能な『トルクコントロールレバー』(写真3)という製品も開発しました。従来から同様の製品はありましたが、この製品はクランプレバーと同じようにレバー位置を自由に調整できるように改良し、使い勝手をより良くしました。締め付けトルクの設定もでき、設定したトルクに達すると“カチッ”というクリック感があり、締め付け完了を感知できます。 そして、最近まで開発検討会の案件で進められ、今年の8 月に発売を予定している固定部品『ワンタッチスライドロック』を紹介します。先程紹介したワンタッチ着脱は、段取り替え作業において装置の付け外しに使用しますが、段取り替え作業では装置の位置をスライド調整するというケースが多くあり、「スライド個所のロック/アンロックをワンタッチで行いたい」といったニーズから開発がスタートしました。従来そういったケースでは、ボルトやクランプレバーを用いて対応していましたが、作業者による力のばらつきや、締め忘れによる思わぬ事故が発生する問題がありました。本製品は、これらの問題を解決し、装置の段取り替えに伴うガイドやスライド調整作業を飛躍的に向上することができます。 今回は、長穴やU溝を対象とした『長穴スライドロック』(写真4)と、市販の角鋼を対象とした『角鋼スライドロック』(写真5)の2タイプをラインアップします。主な特徴としては、①ノブ操作によりロック/アンロックを行い、本体のON/OFF表示によりロック状態が一目で分かる(高い視認性)、②操作完了時のクリック感で、作業者による締付け力のばらつきがなくなる(作業の平準化)、③クサビ構造を採用しているので、軽い力で強い保持力が得られる(確実なロック)、などが挙げられます。 本製品の開発には、1 年ほどの期間が掛かっており、最初は技術的な問題で思うように進みませんでしたが、クサビ構造を採用するといった発想の転換がきっかけとなり問題が解消し、今回の開発に結び付けることができました。 今後の展開についてお聞かせ下さい小原:現状は、開発検討会の進行に少し時間を掛け過ぎている傾向があるので、もう少しスピーディーに行えるよう改善を進めて行きたいと考えています。それには、参加する各部署のメンバーの意識改革がもう少し必要ですし、環境の整備なども進める必要があります。例えば、営業部は製品を売ることが仕事であるというイメージが強く、お客様から製品の情報を聞いてくるといったことは最近まであまり重要と考えられていなかったため、まだギャップを抱えている営業マンは多く見受けられます。この意識の切り替えが、重要なポイントになっています。 それに対して技術部は、「どのようにコストを下げてものをつくれるか」、「お客様からいわれていることに対してすぐに応えられない」など、まだまだ勉強することがあり、自社製品だけでなくお客様の装置自体についても色々と理解していかなくてはいけません。それには、営業マンだけでなくエンジニアもお客様と接する機会を増やしていく必要があります。そして、交流を深めることで色々と情報を得ることができますし、それが次の製品開発に繋がるアイデアとなってきます。この取り組みは、国内だけなく海外についても同じように進めていきたいと考えています。 また最近では、製品を購入する前に無料で貸し出すサービスも開始しています。製品の動きや操作感など、カタログではわからない部分もしっかり理解してもらうために始めた取り組みで、対象製品は207品番ほどあり、貸し出し期間は基本1週間ですが延長も可能です。実際に使って頂いて良ければ改めて購入して頂きますが、「ここが使えなかった」、「ここをこうしてほしい」など、実際に使用したお客様の声を聞くのもこのサービスを始めた目的の一つで、この声を開発検討会に反映することもできます。 このように、会社全体が一つのチームとなり開発検討会を確立させることで、お客様に喜ばれ、また驚かせるような製品をどんどん世に出していくことが実現できますし、それがこのプロジェクトの最大の目標でもあり、会社への貢献にも繋がってくると考えています。本日はお忙しい中ありがとうございました。写真4 長穴スライドロック写真2 精密ストレートクランプ写真5 角鋼スライドロック写真3 トルクコントロールレバー